これは現実か、それとも幻想か。
上質な推理小説にも似た難解さと、微睡みの中に溶け込んだゴシック感。
ストーリーよりも雰囲気で押し切った、コッポラ監督のミステリー映画【ヴァージニア】の世界へとご案内いたします。
この記事でわかること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・動画配信サービス・DVD情報
映画【ヴァージニア】独特なファンタジックミステリー
ミステリーって、謎が解明されてくとこが面白いよね。
…あぁ、でも謎が謎のまま終わる場合もあるよね。
世の中にあるミステリー作品は、よくよくみると2つの展開パターンがあります。
名探偵などがスカッと事件解決するパターン
曖昧なまま結末を迎えるパターン
今作は、この2パターンがどちらもぶっ込まれたストーリーです。
- 現代で起きた事件が過去の事件と繋がり、真相が解明
- ただし現代の事件にはオカルト的な謎が残されたまま結末へ
- …というお話を、フランシス・F・コッポラ監督が脚本も書いて映像化
- 出演はヴァル・キルマー、エル・ファニングというあたりが見どころ
コッポラ監督といえば、映画《地獄の黙示録》《ゴッドファーザー》で有名な監督さん。
映画界に多大な功績を残した巨匠です。
ならば、きっと面白いに違いない!…と思うと、肩透かしを喰らうかもしれません。
実は24作品あるコッポラ監督映画の中では、ぶっちゃけ低評価な作品です。
ゴシックな映像美と、微睡みの中で解明されていく謎は良く出来ています。
…が、完全に観る人を選ぶ作品かと。
小さな町で発見された、奇妙な遺体と過去の大量殺人事件。
そしてその繋がりを紐解こうとする売れない作家。
現実と幻想が現代と過去を結びつけ、事件の真相や作家のトラウマをも邂逅していくミステリー映画 が【ヴァージニア】です。
映画【ヴァージニア】基本情報
ヴァージニア | 2011年 アメリカ映画 |
ジャンル | ゴシック・ホラー・ミステリー |
監督 | フランシス・フォード・コッポラ |
脚本 | フランシス・フォード・コッポラ |
上映時間 | 89分 |
出演 | ヴァル・キルマー、エル・ファニング、ベン・チャップリン他 |
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映画【ヴァージニア】あらすじ
物語の舞台は、都会から少し離れた小さな町スワン・バレー。
この町にやって来た、ひとりの男性の様子から始まります。
- 彼の名はホール・ボルティモア。いくつか出版本もあるプロの小説家
- といっても売れっ子ではない。むしろほぼ無名に近い三流作家
- 何しにスワン・バレーへ?というと、著作本サイン会を開くため
売れてないのにサイン会?
…まぁ、要はセルフ営業だな。
そもそもスワン・バレーは、世間から取り残されたような人々が住まう町。
家出したとか悪さしたとか、はみ出し者の拠り所のような土地です。
特産品があるわけでも、観光名所があるわけでもなく。
というか、そもそも本屋すらありません。
- ただ、7つの盤面を持つ奇妙な時計塔が不気味なオーラを放ってる
- 陰気ではないが、地味さと時計塔のおかげで「呪われた町」という異名も
- …というのも、かつて大量殺人事件が起こったことが
- さらに数日前、身元不明の少女の遺体が発見されたばかり
- しかも胸に木の杭がぶっ刺された状態
不謹慎かもだけど…これは新作ネタにぴったりなんじゃ。
…と思って、保安官が声をかけてきたよ。
本屋がないので仕方なく、金物屋の片隅でサイン本即売会をしていたボルティモア。
そんな彼を探して声をかけ、さらに本も買ってサインもおねだりしたのがボビー・ラグレインジ保安官です。
- ボビー保安官は、大の推理好き。昔ミステリー小説を書いたこともあるらしい
- 小説ネタになる事件と証拠があるから、見にこないか?と誘いに来た
- 遺体が見れるのか、とボルティモアはボビー保安官について行くことに
- 保安官事務所に安置されていた遺体を見たら、本当に杭がぶっ刺さってた
おぅ…。シーツ被ってるからグロくはないけど。
…幼気な少女のあられもない姿だな。
顔を確認することはしなかったものの、木の杭が刺さったままという状況に情けを感じたボルティモア。
少し興味が沸いたこともあり、なぜ杭を抜かないのかなど訪ねることに。
しかしボビー保安官の返答は、質問の答えになっていない意外なものでした。
- ボビー保安官は、この事件を元に一緒に小説を執筆しようと持ちかけてきた
- 面白そうではあるけれど、ボルティモアはあまり乗り気じゃない
- 初対面の素人と共著するなんて…というのが本音
- とりあえず適当に話半分で聞き流すことに
…とはいえボルティモアは今、絶賛スランプ中。
借金に追われている妻からも、担当編集者からも「新作はよ!」と催促され続けています。
それでもボビー保安官の提案はいったん保留にし、自分の足で題材を探してみることに。
そうして彼はこの町で、思わぬネタと奇妙な出来事に遭遇することになるのです。
現実と虚構の狭間から覗く真実
新作ネタ探しに出かけたボルティモアは、とりあえずコーヒーを買いにショップへ。
するとそこで1枚のチラシに目が留まり、意外すぎる大物とこの町に接点があることを知ります。
- この町のチカリング・ホテルに、エドガー・アラン・ポーが滞在したことがあるらしい
- エドガー・アラン・ポーといえば、ミステリー小説界の超大物
- ただしチカリング・ホテルはすでに廃業・廃墟に
- 超大物を偲ぶため、ウイスキー片手に廃墟へ
ほんとにポーが滞在したの?
…あぁ、入り口に記念プレートがあった。
すでに朽ち始め、立ち入り禁止になっているチカリング・ホテル。
適当に周囲を散策し、ホテルへ戻ったボルティモアは、またしても妻からの「新作はよ!」の催促を喰らいます。
- まだ何もアイデアは浮かんでないけど、いちおう執筆準備し始めた
- …けど、ひと文字も思いつかず、ウイスキーを呑みまくり
- そんな中、時計塔から鐘の音が鳴り響き、導かれるように夜の散歩へ
- 森を散策中、白いゴシック調のミニドレスを着た少女と遭遇
- さらに廃墟のはずのチカリング・ホテルに灯りが
…え?幽霊!?
…かどうかは不明だが、不思議体験には違いないな。
ヴァージニア。通称『V』と名乗る謎の美少女と歩きながら談笑したり、ホテルでは支配人らから話を聞いたり。
挙げ句あのエドガー・アラン・ポーまで登場し、会話を交わしたり。
ボルティモアは彼らと出逢い、この町で昔なにがあったのか、大量殺人事件のあらましを聞かされます。
- 実はチカリング・ホテルで12人の子供が殺害された
- ひとりだけ逃げ延びた少女もいたが、行方不明に
- …というリアルすぎる夢を見た
- 新作のインスピレーションが降りてきた!と、俄然ヤル気が
- ボルティモアはボビー保安官と共著することに
夢の中で、大量殺人事件の真相を伝えようとしてる?
…まぁ、そんなところだ。
たかが夢。されど夢。
ボルティモアは、眠ることでポーやヴァージニアに逢えることに気付き、夢の中で道を示してもらうことに。
果たしてこれは、この町の少し不気味な雰囲気に触発されたボルティモアの妄想なのか。
それとも真実を紡いでくれる、ボルティモアのような人物を求めて現れた幽霊なのか。
こうして彼は、現実世界の自分・夢の中の自分の経験を新作小説として書き上げていき… というのが大まかなあらすじになります。
映画【ヴァージニア】主な登場人物
モノクロームというほど古臭くはなく、薄暗いけれど幻想的。
ストーリーのゴチャつきは少し頭を使うかもしれませんが、映像の美しさはストレートに受け入れられるかと思います。
人物さえも映像美の一部となっている、登場人物たちをご紹介いたしましょう。
ホール・ボルティモアは、パッとしないオカルト小説家。
昔から酒好きで、いつでもたっぷり浴びるようにウイスキーを呑んだくれる悪い癖が。
酒好きがたたって娘を事故で亡くしたと思い込み、トラウマを抱えています。
うだつの上がらない、ムサい作家をヴァル・キルマーが熱演。
見たことあるし聞いた名前だな…と思ったら、映画《トップ・ガン》にアイスマン役で出演してました。
今やすっかりプニプニのお身体ですが、シュっとスリムなイケメンの頃の作品はこちら↓
Vは、ボルティモアの夢に出てくる謎の美少女。
虚構の世界と現実世界を結ぶ、重要な登場人物です。
本名はヴァージニア、歯列矯正マウスのせいでヴァンパイラというあだ名も。
彼女の存在がストーリーの要であり、役柄・キャストともに今作の最大の見どころになっています。
とにかくエル・ファニングさんが可愛いくて、ゴシック調の衣装がよくお似合いです。
映画《マレフィセント》では、オーロラ姫役で出演しています↓
エドガー・アラン・ポーは、かの有名な超大物ミステリー作家。
ボルティモアの夢に登場し、執筆の極意や今回の事件ネタをどう展開すべきかアドバイスしてくれます。
あくまで夢の住人ですが、霊的な存在とも取れる人物です。
ボビー・ラグレインジは、この道40年のベテラン保安官。
部下を邪険に扱ったり、対岸の妖しい若者集団を目の敵にしています。
ボルティモアに対しては共著で印税の分け前を狙うなど、なにやら腹にイチモツありげな胡散臭さも。
自分の価値観に自信がある、偏屈な人物です。
アラン・フロイドは、昔この街で多くの子供たちを養っていた牧師。
1955年にこの町で起きた、大量殺人事件の犯人です。
神の御許に召されれば、穢れない幼き魂も救われる…という狂信的な思想の持ち主でもあります。
…と、この他に、主人公ボルティモアの妻や出版社のエージェント、保安官助手や悪魔崇拝らしき若者集団が登場。
生なのか霊なのか、夢なのか現なのかの境界は案外ハッキリ区別して描かれています。
ただ、ボルティモアとポーのやりとりが叙情的だったり、Vの存在が曖昧だったりという難解さに困惑する作品となっております。
映画【ヴァージニア】まとめと感想と考察と
ゴシックのようでいて、現代的。
ミステリーのようでいて、ファンタジー。
掴みどころのない世界観が、巧みな映像トリックによって広がっています。
- 少し世間から疎外された郊外の町が舞台
- 売れない三流オカルト作家の不思議体験物語
- ひとつの遺体・過去の事件・作家の邂逅が紐解かれていく
- 現実と幻想の中で、妄想とも霊体験とも言える怖くないホラー
この作品の面白いところは、3つの次元が結局ひとつの世界を構成しているところ。
「ミステリー小説の新作の内容」という枠にはまっていく過程かと思います。
現実・幻・過去を交錯させる手段は、まぁありがちなオカルティックな展開です。
そこに少しのウィットと、ゴシックっぽいビジュアルを持ち込んだおかげで、コッポラ監督らしさが。
《ドラキュラ》や《コッポラの胡蝶の夢》など、儚さのある幻想作品に似ています。
ただ、登場人物にもあるように、エドガー・アラン・ポーを意識し過ぎたミステリー感。
そこに現代ミステリー界の巨匠S・キングっぽさも出そうとしたミステリー感。
タイプの異なる2つを混ぜたせいで、難解なイメージに。
それでもヴァージニアの正体を曖昧なまま結末に持ち込んで、この作品の楽しみ方も分かる仕組みになっています。
過去の事件の謎は明かしましょう。
それをヒントに、他の謎は観客自ら好きに妄想してそれぞれお楽しみください…的な?
そしてもう一つ。
この大して上手くない構成の仕方が、もしあえて行われた演出だったら。
主人公は売れない三流作家です。
その執筆創作活動を覗き見するお話ですよ、というコッポラ監督の意図があったなら…
どうあがいてもポーのような緻密さも、キングのような奇抜な発想も作風に活かせるはずがありません。
三流作家だからこそのグッチャリした難解さ。
そう考えると、恐ろしいほどよく作り込まれているように感じました。
…まぁ、こうやってあれこれ考察するのがお好みでない方には、全く不向き。
観る者を選ぶ内容ですね。
映画【ヴァージニア】は、考察する余白が多いですが、一応ビジュアルだけでも満足できる親切設計の難解ミステリー作品でした。
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