映画【ヘンゼル&グレーテル】は、お菓子の家でお馴染みのグリム童話の後日談を描いた作品です。
「あの兄妹がこんな大人になりました」という斬新な作品ですが、そもそもあの兄妹の元となった童話「ヘンゼルとグレーテル」を説明できるほど覚えていません。
ということで、「REONさんの兄妹から学ぶ あゝ無情」をお届けします。
残酷でエグいグリム童話「ヘンゼルとグレーテル」のお話
童話って、子供のときに読んでも部分的にしか覚えてないよね。
大人になったらなったで、改めて読むこともないしな。
グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』は、よくよく読むと本当に怖いお話です。
兄妹が手に手を取り合って困難を乗り越え、あぁ良かった…なんて単純なハッピーエンドのおとぎ話ではありません。
まず物語誕生の裏には、こんな背景があったりします。
- 作者であるグリム兄弟は、ドイツのヘッセン州カッセンに住んでいたことが
- 1811年頃、ご近所の薬局ヴィルトさん家の姉妹からこの土地にまつわる民話を聞くことに
- 民話の内容は、1315年〜1317年に起きたヨーロッパ大飢饉で子捨てが行われていたという話
- その話に、同じく14世紀頃に行われていた魔女狩り・火あぶりの要素をちょっとプラス
我が子を捨てることも残酷ならば、魔女狩りと称した火あぶりも残酷。
残酷×残酷の実話に教訓を込め、さらに残酷物語に仕上げてあるのがグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』です。
童話「ヘンゼルとグレーテル」物語の始まり はじまり
むかしむかしあるところに、大きな森のそばに住む木こりの一家がおりました。
父ちゃん・母ちゃん・ヘンゼル・グレーテルというこの4人家族は、貧乏と世の中の大飢饉のダブルアタックで、ひもじい食事にしかありつけない毎日。
そんな日々が続いたある晩のこと。
父ちゃんは、寝返りをうちながら母ちゃんにこんな愚痴をこぼします。
もういよいよ食べ物が底を尽きそうになり、このままでは一家4人が飢え死にしてしまうピンチです。
すると父ちゃんの愚痴を聞いた母ちゃんは、名案とばかりにこんなことを言い出します。
なんと子供たちの実母ではなく継母である母ちゃんは、子供たちを森に捨ててこようと言い出すのです。
これって口減らしってやつ?
…あぁ。この一家に限らず、国中がひもじくてな。
大飢饉で食べ物がどんどん手に入らなくなり、最善策は食べる者を減らすこと。
こんな風潮が広まるご時世に、口減らしの対象になったのは弱い者=多くの子供たち でした。
しかし我が子が可愛い父ちゃんは「だよねー」だなんて簡単に賛成するはずもなく。
父ちゃん『なっ!!そんなこと出来ねぇよ。置き去りになんかしたら、森の獣にあの子たちが喰われちまう』
母ちゃん『なんだよ、おまえさん。だったらせいぜい4人分の棺桶用の板でも毎日カンナで削ってりゃ良いさ』
…鬼嫁。
…このひと言に押されて、子供たちを捨てに行くことになっちまった。
鬼嫁母ちゃんの勢いに押され、渋々OKした父ちゃん。
継母で鬼嫁には血も涙もないんかい!というと、母ちゃんの子捨て完全犯罪計画には、ちょっぴりだけ親らしい慈悲深さもあったりします。
- もうパンも残り少ないけど、子供たちには1個ずつ持たせる
- 森の奥で寒くないよう焚き木を組んで火を起こし、そこで2人を休ませる
- 木を切る斧の音がする細工も施せば、2人は寒くもなく不安もなくゆっくり休める
- …と安心して寝付いたら、トンズラするよ
こうして夜遅くにコソコソ密談した父ちゃんと母ちゃん。
決行はさっそく明日、朝イチに決定です。
しかしこの話を、実は子どもたちも小耳に挟んでしまいます。
男前な兄ヘンゼルと泣き虫の妹グレーテル
え?子供たち、この密談聞いちゃったんだ。
…お腹空きすぎて、遅くまで眠れなくてな。
森に置き去りにされて捨てられる…
絶望的な明日が来ることを知り、グレーテルは泣き出してしまいます。
こう言って泣きじゃくる妹を励ましたヘンゼル。なんとも凛々しく男前な発言です。
なんとかするって…どうやって?
…家の近くに月夜でも光る小石があってね。それを集めに行ったんだ。
密談が終わって眠りについた両親の目を盗み、上着を羽織ってコッソリ夜中にお出かけしたヘンゼル。
翌日森の中に置き去りにされても帰り道を見失わないように、ポッケいっぱいに光る小石を集めるという知恵を絞り出します。
一夜明けたらやっぱり父ちゃんと母ちゃんが思い留まるってことは…。
…ない。無情にも何食わぬ顔で森へGO!だ。
子捨てにノリノリで足取り軽い母ちゃんを先頭に、断腸の想いの父ちゃん、そして子供たちが後に続いて森の中へ。
親の心子知らずどころかバッチリ知って対策を練ってあるヘンゼルは、道すがら小石を落としては振り返り、入念に確認しながら歩きます。
父ちゃん『なんだ、ヘンゼル。振り返ってばかりで何かあるのか?』
ヘンゼル『…え?あ、ううん。お家の屋根にいる僕の猫が、こっちを見てバイバイしてるから』
母ちゃん『ありゃお前の猫なもんか。屋根に陽が当たってるだけじゃないか』
素知らぬ顔してとっさに嘘をつく図太いヘンゼル。どうやら母ちゃんに似てしまったようです。
家族間でお互いの胸の内を隠して騙し合うという会話も弾み、子捨てにベストな場所へと到着。
さっそく母ちゃんは焚き木を準備し計画を実行に移します。
母ちゃんがしたたかすぎて怖い…。
子供たちはさらなる罠で騙されるしな。
置き去りにされるって分かっているのに、子供たちはその場で大人しく休んでしまいます。
それもこれも、母ちゃんが仕込んだ「父ちゃんが木を切る斧の音」にコロッと騙され、近くにいると思って安心してしまったから。
おかげで母ちゃんの作戦勝ち。
ヘンゼルとグレーテルはついウトウト寝込んでしまい、気が付いた頃にはあたりはすっかり夜になっておりました。
グレーテル『本当に置いていかれた…暗いし寒いし怖い…。びぇ〜〜ん(泣)』
ヘンゼル『大丈夫。さぁ泣くのはよして、歩けるかい?一緒にお家に帰ろう』
泣き虫グレーテルにそっと手を差し伸べ、またしても男前な発言で勇気づけるヘンゼル。
来るときに落としてきた光る小石を頼りにお家に辿り着き、今度はヘンゼルの作戦勝ちという結果に。
ちょっと後悔していた父ちゃんは泣いて喜び、母ちゃんは心配してた風を装って2人を出迎える羽目になりました。
腹をも満たすお菓子御殿
子供たちが帰ってきたことで、一家のひもじさはさらに日に日に増してしまいます。
もう明日のパンすら無くなりそう…と、母ちゃんはまたもや子捨てに再チャレンジ。
父ちゃんは、1度はOKした過去があること・母ちゃんの尻に敷かれているということもあり、断りきれません。
そしてこの話をまたしても小耳に挟んだ子供たち。
グレーテルはやっぱりシクシク泣き始め、ヘンゼルは今度もコッソリ小石を集めに行けばなんとかなるさと励まします。
…でも出かけられないよう、鍵かけられちゃったね。
おかげで光る小石を拾いに行けなかったな。
道しるべになるアイテム・光る小石がないんじゃ打つ手なしか…
というとそうでもなく、ヘンゼルは鬼畜な母ちゃんが持たせてくれたパンをばら撒くという新たな作戦を考えます。
ポッケの中でパンを小さく砕き、少しずつ道に落としては確認。
そうして連れていかれた森の奥で、まるでデジャヴかのように全く同じ状況で、2人は再び捨て置かれました。
グレーテル『今度もまた捨てられた…。びぇ〜〜ん(泣)』
ヘンゼル『大丈夫。少し明るくなったら、僕の撒いたパンくずが見えるから。それを頼りにまたお家に帰ろう』
ところがここで、大誤算。
道しるべにばら撒いたパンくずは、鳥についばまれて跡形もありません。
それでもそのうち見慣れた森の景色のところまで行けるさと、泣いてるグレーテルと手を繋いで歩き始めたヘンゼル。
しかしここで、大誤算Part2。
前回よりももっと深い森の奥に置き去りにされたため、行けども行けどもただただ迷子になるばかりでした。
父ちゃんと母ちゃんに捨て置かれ、歩き続けて早3日。森は深くなる一方で、一向に出られません。
食べ物だって、森で見つけたほんの2〜3粒の野イチゴを2人で分けて食べただけ。
いよいよ倒れてお迎えを待つだけか…というところで、ヘンゼルはあるものを見つけます。
食べもの発見!焼き鳥だーーー!!
…確かに腹は減ってるが、狩って羽むしって焼いて食ったりはしないから。
疲れ果てて一歩も歩きたくなくなっていたヘンゼルとグレーテル。
束の間の小鳥の歌声に癒され、もっと聴きたいと飛び去る姿を追うことにいたしました。
そうしてチョコンと小鳥が止まったその先は、なんとも可愛らしいカラフルな1軒の小屋。
そこはパンやビスケット、砂糖菓子で出来たお菓子の家 だったのです。
ヘンゼル『見て!グレーテル。あそこでたんとお菓子を食おう!
僕は屋根をかじるから、グレーテルは窓の砂糖菓子を食べてごらんよ』
お家ではほんのちょっとのパンしか食べられず、森に捨てられてからもずっとお腹が空きまくっていた2人。
手当たり次第に家のあちこちをちぎっては食べ、家の中から声がしても構わずボリボリむしゃむしゃ食べ続けます。
???『ボリボリがりがり音がする。私の小屋をかじるのは誰ぞね?』
ヘンゼル『風です、風。天の風の音ですよー』
…なんちゅう見え透いたウソを(笑)
もう返事してる段階ですでにアウトだしな。
お菓子の家をあっちもこっちもむしり取り、両手いっぱいに抱えこんでいたヘンゼルとグレーテル。
…とそこで小屋の扉が開き、中から出てきたのはそうとうお歳を召したオババ様。
2人はそりゃもうビックリして、抱えたお菓子をドッサリ落としてしまいました。
人生甘くありません
杖をつき、化けそうなくらいのたいそうなオババ様と遭遇してしまったヘンゼルとグレーテル。
いかにもなオーラが漂う老害か…というとそうでもなく、ワシャワシャと2人の頭を撫でてこう言いました。
オババ様『おやおや。かわいい子供たち。誰に連れられてこんな森の奥まで来たんだい?
まぁなんもしてやれんが、うちでゆっくり休んでおいき』
2人はオババ様に連れ込まれ、かわいいお菓子の家の中へ。
テーブルには牛乳や砂糖のかかったパンケーキ、りんごやくるみといった沢山のご馳走が並んでいます。
さっき散々お菓子の家を食い散らかしたのに、ヘンゼルとグレーテルは喜んでご馳走をいただくことに。
そうして満腹になったところで、オババ様からはさらなるおもてなしもご用意されておりました。
わぁ♪真っ白なシーツが敷かれた可愛いいベッドが並んでるー。
…オババの1人暮らしには不似合いな子供用ベッドがな。
3日3晩歩き続けて疲れきっていたヘンゼルとグレーテルは、お言葉に甘えてベッドで夢心地。
まるで天国かのような寝心地にすっかり熟睡してしまいます。
しかしそんな夢心地も一夜限り 。翌日には朝っぱらから叩き起こされ、一気に地獄の日々の始まりです。
オババ様『お前らいつまで寝ておるん!
ほれ、男児!お前は太ったら喰うから家畜小屋行きじゃ!
そこの女児!お前はさっさと水汲みしてコイツを肥らす料理を作るんだよ!』
このオババ様、人間の子供を取っ捕まえては煮るなり焼くなりして喰うのが何よりも楽しみな魔女。
近くで子供のニオイを嗅ぎつけてはお菓子の家をご用意し、小鳥を使って誘導していたんです。
この際手段は選びません
こうして親に2度も捨てられ、甘い匂いのお菓子の家と甘い言葉のオババ様にすっかり騙されたヘンゼルとグレーテル。
もう大人なんて信用できません。
かといって、子供だけで生きていけるほど世の中も甘くありません。
グレーテルは散々泣いて許しを乞いますが、オババ様は子供の泣き言なんざ知ったこっちゃありません。
逃げ出したくても、外は迷子になりまくった森だし…。
それに、グレーテルは身動き取れるが、ヘンゼルは閉じ込められちゃったしな。
ピンチのときには知恵を働かせ、妹を守ってきたヘンゼル。
しかし今や家の外の格子付きの家畜小屋に閉じ込められ、毎日ご馳走を与えられては肥えたかを確認される日々を強いられます。
肥ったことがバレたら即喰われる…
この状況からそう先読みしたヘンゼルは、食事で残った鳥の骨を差し出してオババ様を騙すことに。
それもこれも、数日ここで監禁されているうちに、実はオババ様が目が悪いことを見抜いたから。
ヘンゼルって賢くて冷静で判断力も行動力もあるよね。
いつ喰われるか恐怖しかないのに、状況を把握する推察力も高いよな。
しかしどんなに騙くらかしても、運命が変わるわけではありません。
嘘偽りでその場をやり過ごしても、喰われる日が先延ばしになったに過ぎません でした。
子供たちを取っ捕まえてから4週間。オババ様は案外ガマン強い魔女だった模様。
しかしそんなガマンも臨界突破、翌日には雑用を押し付けているグレーテルに命じて焼き窯の準備をさせることにいたしました。
「お兄ちゃんが喰われちゃう…びぇ〜ん(泣)」
…うん、まぁ泣きじゃくるが、グレーテルもたくましく賢くなったよ。
オババ様『泣いたってなんも変わりゃせん!さっさと窯の温度を確かめるんじゃ。先にパンを焼くからね。中に入って加減を見とき』
グレーテル『ぐす…。でもオババ様。窯の温度や加減の見方が分からない…』
実はグレーテル、泣いてはいてもオババ様の目論見を丸っとお見通し。
きっと窯の確認と称して私のことをそのまま焼いてしまう気なんだわ、ということに気付きます。
そしてとっさに分からないフリをすることに。
オババ様『なんだい。使えない子だね。オババの身体が入るほど、こんなに窯の口が開いてるじゃないか。
…て、え?わっ!ギィヤアアアーーーー!!』
なんだかんだと4週間も共に過ごしたオババ様。
いくら泣いてばかりのグレーテルでも、オババ様が目が悪くて足腰弱ってることくらいは知っています。
だから不意をつけばなんとかなるかも…ということで、今まさに不意をついてオババ様を窯の中へと突き飛ばし、閂をかけて焼いてしまったんです。
お、おぅ…。たしかにグレーテルたくましくなったね(汗)
これで魔女もいなくなったし、あとはここから出るだけだ。
そう言って、急いで外の家畜小屋からヘンゼルを助け出したグレーテル。
さらに勝手知ったるオババ様の家にある宝石も、2人でごっそり頂戴することに。
こうしてヘンゼルとグレーテルは、なぜか散々迷いまくった森を抜け、無事に家にたどり着きます。
子捨てに執着していた母ちゃんは亡く、あれからずっと後悔していた父ちゃんと親子3人で幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし
童話「ヘンゼルとグレーテル」の怖さと教訓
さて、こんなお話だった童話「ヘンゼルとグレーテル」
どこら辺が怖いのさ、というとここら辺。
- まず親が子供を捨てるという非人道的なお話なところ
- しかも一度ならず二度までも
- さらに完全犯罪を目論んで、親は近くにいると匂わせる小細工も
- 甘い言葉で信用させ、ガツンと裏切る魔女の存在
- 子供も子供で、ちょいちょい嘘偽りでその場を誤魔化す
- 自己防衛とはいえ、焼いて抹殺という残忍さ
- しまいには宝石ガッポリ盗んでオサラバ
- 出てくる女性陣がもれなくクセモノ(子捨ての母ちゃん・騙しの魔女・惨殺のグレーテル)
いろいろあるねー(笑)
…深読みすると悪意しか感じないんだが、ちゃんと教訓もあるから不思議だな。
童話は民話や伝承から何かを学ぶためのもの、という概念があります。
たとえあちこちイチャモンつける部分があろうが、語られる内容や設定にはきちんと教えがこめられています。
- 主人公が一人ではなく兄妹=一人では困難でも、力を合わせれば乗り越えられる
- 飢饉の時代・2度も捨てられる・魔女にも遭遇=何度も生きる希望を失うも、最後まで諦めない
- お菓子の家というメルヘンな設定=甘いものには罠があるから気をつけよ
…と、子供にも分かりやすい教えとしては、ザックリとこの3つが挙げられるかと。
大人になった今だからこその教訓
でも今読むと、けっこうハッと気付くことも込められてるよね。
…あぁ、いくつかは今だからこそ刻み込みたい教訓な気がする。
- ヘンゼルが小耳に挟んだ子捨て計画=周囲の話によく耳を傾けることで、降りかかる災いに気付ける
- ヘンゼルが光る小石を集めたり、パンくずで対策=この先のピンチ回避の方法を臨機応変に考える
- ヘンゼルの男前な発言と行動力=誰かが凹んでいたら、声を掛けて率先して動く
- ヘンゼルが鳥の骨を差し出して己の命の危機を先延ばし=このあと起こりうる状況を、パニくらないで冷静に予測し対応
…こうして見ると、ヘンゼルから学ぶことが多いですね。
ただ、泣いてばかりだったグレーテルから学べることもあったりします。
- 泣いてばかり=何も解決しない
- 疲れたお腹空いたでダダをこねる=行動しなきゃ、立ち止まるしかない
- 不意打ちで魔女を退治=チャンスは逃さず実行すべし
こんな感じで無情というより非情、壮絶な幼少期を送った兄妹の童話『ヘンゼルとグレーテル』
ね?よくよく読むと、怖いでしょ(笑)
幼くしてこんな人生送ってれば、そりゃ強くたくましく育つはずだよな…という構想も納得の、兄妹のその後を描いた映画【ヘンゼル&グレーテル】のあらすじ・キャストについてはこちらをどうぞ↓
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