映画【ザ・ロック】の舞台となったアルカトラズは、囚人たちが集う場所。刑期を終えるか模倣囚になるか、あとは何か特別な理由がないとシャバに出ることは出来ません。
が、こっそりシャバに出ちゃった脱獄囚もいることはいます。
ということで「REONさんの世界の監獄から」をお届けします。
アルカトラズにも脱獄囚がいた?
映画【ザ・ロック】の舞台となったアルカトラズ刑務所は脱獄不可能で有名ですが、全く脱獄がなかったわけではありません。連邦刑務所時代には14回脱獄チャレンジャーが現れました。
未然に阻止された者、見つかって拘束された者、抵抗して銃殺された者、海に出たはいいが溺死した者。行方不明で溺死扱いになった者もいます。
さすが脱獄不可能な監獄として有名なだけあるねー。
でも行方不明になった囚人の中には、みごと生き延びたんじゃないかって言われてる3人組がいるんだ。
脱獄成功者は3人
フランク・モリス、ジョン&クラレンスのアングレン兄弟。この3人は無事に脱獄、生き延びた人物だと言われています。
でも監視も厳しく頑丈なアルカトラズからどうやって?
スプーンを尖らせ壁をホジホジ。地道に穴を開け、看守の見回りの目を誤魔化すために頭部のみのハリボテまでこさえました。
なに、このマスク。どうやって刑務所内で作ったの。
紙と石鹸を混ぜて粘土みたいにこねて、髪は散髪室からちょっとずつ集めたものをくっつけたんだって。
刑務所内には一応床屋さんがあるんです。もちろん囚人にハサミなんかは奪われないよう管理。…してますが、切った髪までは管理しません。
それに石鹸は消耗品だし、時折本を読んだり手紙を書く機会は与えられていたので紙はある。材料が揃っちゃうんです。
チマチマ作ったハリボテ頭を布団からチラ見せすれば、あたかもちゃんと就寝してるかのように見せることが出来、まんまと三人で脱獄したんだとか。
え、でもアルカトラズは島じゃない。しかも海流も早くて海水も冷たいんだよね?
刑務所内の作業場から色々くすねて、いかだも用意してたらしい。
ハリボテ頭のおかげで看守が脱獄に気付いたのは翌朝になってから。FBIも繰り出して一斉捜索を開始したんですが消息は不明。
溺死体も上がらず生死もわからないまま「三人の脱獄囚は溺死」と断定 されました。
生き延びたとみられるワケ
FBIが捜査もしたし、連邦政府も脱獄3人衆を溺死と判断したのに、実はしっかりちゃっかり生き延びたとウワサされてます。
それはなぜなら…2018年にFBIが脱獄囚のひとり、ジョン・アングレンと名乗る男からの手紙を公開したから。
- 手紙は2013年にサンフランシスコ警察宛に送られてきた
- 自分はアルカトラズ脱獄囚のジョン・アングレン。現在83歳でガンを患っている
- フランク・モリスは2005年に亡くなった。弟のクラレンスも2011年に亡くなった
- ガンの治療をさせてくれるなら、1年だけ刑務所に戻ってもいい
うぉー。まさかのご本人?
…かどうかは、FBIによるDNAと筆跡鑑定では結論が出なかったそうだ。
脱獄時の様子やその後の生活について詳しく書いてあったようなんですが、ホンモノとは断定されませんでした。
なので未だにアルカトラズは「脱獄不可能な監獄」という肩書きのまま語り継がれています。
世界の刑務所ではこんな脱獄劇も
脱出不可能と言われた刑務所はアルカトラズだけではありません。オーストラリア・タスマニア州にも脱獄不可能と言われた監獄がありました。
- 「オーストラリアの囚人遺跡群」と称される刑場のひとつ、ポートアーサー
- タスマニア本島とは1本の回廊で繋がってるだけの小さな小島
- 19世紀頃、1,100人ほどの凶悪犯を収監していた
ここはなんで脱獄不可能って言われたの?
海にはサメがウヨウヨしてるし、看守の他に看犬とでも言うべき餓鬼状態のハウンド犬が放たれてたんだ。
そう簡単には逃げ延びれない環境下。でも精神を病むほど過酷な刑務所だったために、こんなおかしな脱獄劇を繰り広げた囚人がいたんです。
当の本人はおそらく真剣
???…カンガルー?
…の皮を被ってカンガルーに見せかけて脱獄したんだよ。
いやいやいや。これは無理があるでしょ、と思いきや、ちょっと不器用に片足引きずって歩くカンガルーだと看守に思われたんです。囚人の発想も大概ですが、看守の目ん玉も大概です(笑)
予想に反して看守を騙せたのはいいんですが、ここでさらに予想外の展開が。
案外カンガルーは美味しいらしく、食べることもあるんだとか。看守はふと、こんなことを思いつきました。
中に囚人が隠れてると本気で思ってなかった看守はバンバン発砲、カンガルーハンティングを開始。一方で脱獄図った囚人は撃ち殺されるのを恐れ、おめおめカンガルーの皮を脱いで降参しました。
ちなみに看守にハントされそうになった囚人は「ジョージ・ハント」という名前だそうです。降参後はあえなく刑務所に逆戻りし、150回のむち打ちの刑に処されました。
日本には脱獄名人が
犯罪を犯し収監される囚人は、もちろん日本にもいます。脱獄不可能と言われる刑務所はありませんが「極寒の網走刑務所」「日本最大の府中刑務所」あたりが有名です。
そして日本には「昭和の脱獄王」と呼ばれた脱獄名人がおりました。
脱獄名人?
26年間の服役中に4回も脱獄したんだ。
4回すべて別の刑務所から脱獄
「昭和の脱獄王」の異名を持つのは白鳥由栄という元受刑囚。強盗殺人や傷害致死でお縄を頂戴した人物です。
異名を持つだけあって、収監先のあちこちで巧みに脱獄。逃亡期間は累計で3年にも及んだそうです。
❶【1936年・青森刑務所】
針金で合鍵をこさえて、普通に解錠して脱獄
❷【1942年・秋田刑務所】
ブリキ板に釘、という材料くすねて鋸を作り鉄格子を切断して脱獄
❸【1944年・網走刑務所】
味噌汁の塩分で手錠を錆びさせ引きちぎり、監獄の天窓を頭突きで破って、さらに関節を脱臼させて脱獄
❹【1947年・札幌刑務所】
くすねた金属片でノコギリを作り、床板を切断。食器でチマチマ穴を掘って脱獄
なんか頭突きで、とか脱臼させて、とかワイルドなんだけど。
どうやらかなりの豪傑だったようだ。
白鳥元受刑者は、身体の関節を自在に外せる特異体質。加えてスタミナも半端なく、1日で120km走って逃げれる健脚の持ち主でもありました。
さらに鎖を引きちぎるほどの怪力で、40過ぎのオッサンになっても米俵をラクラク持つことも出来た、という超人。
今現在40過ぎのオッサンの私は、スーパーから10kgの米を抱えて帰って来るのもやっとなのに(笑)まさしく超人ですね。
お務めは果たしました
さすがというかなんというか。昭和の脱獄王は各刑務所では一世を風靡した有名人で、当時の刑務官は白鳥元受刑者が収監されるとこんな愚痴で持ちきりだったんだとか。
凶悪犯で脱獄常習者、ということで刑務所での扱いはかなり厳しく、ムカついて脱獄を繰り返していました。刑務所は犯罪を犯した者が悔い改め、社会復帰させるための施設ですが、人として扱われたことがなかったんです。
しかし、最後の札幌刑務所脱獄後に捕まった際、白鳥元受刑者を逮捕した警察官からタバコを貰ったことが改心のキッカケになりました。当時タバコは相当貴重な嗜好品で、親切にされたから真っ当に服役しようと思ったそうです。
よくドラマである、「取り調べの時のカツ丼食え」みたいな流れだねー。
最後は府中刑務所で模範囚として刑に服したんだって。
人間、何がキッカケで改心するかわかりません。ただ言えることは、誰でも優しくされたら嬉しい、有り難いって感情が芽生えるってこと。
散々脱獄を繰り返した昭和の脱獄王は、刑期を終えて出所後は真面目に働き、最期は心筋梗塞でこの世を去りました。
世界各地の刑務所はそれぞれ厳重な警備体勢で脱獄を阻止していますが、それでも脱獄囚が現れるんですね。
あのアルカトラズから2回も脱獄した、という設定のキーマンも登場する映画【ザ・ロック】の大まかなあらすじやキャストについてはこちらをどうぞ。
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