【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】異色のパルムドッグ受賞作

ヒューマン

あなたは犬が好きですか?

もし飼っているなら、命を育む責任をきちんと背負っていますか?

そんな強いメッセージ性を秘め、カンヌ国際映画祭で大注目された映画があります。

飼い主に捨てられ、野犬になった250匹。

犬たちが暴動を起こす問題作【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】の世界へとご案内いたします。

 

この記事でわかること

  • あらすじ概要・出演キャスト
  • 予告動画・動画配信サービス・DVD情報

 

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【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】パルムドッグに輝いた250匹の犬たち

たける
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パルムドッグって何。

REON
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名俳優ならぬ名ワン優に与えられる、カンヌの最高賞だ。

レッドカーペットで有名なカンヌ国際映画祭。

その最高峰を飾る「パルム・ドール」にちなんで、2001年に作られた賞が「パルムドッグ」です。

映画祭で上映された映画を対象に、演技派のワンちゃん(実写もしくはアニメーション)に授与されます。

今作は、2014年第67回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門グランプリ・「パルムドッグ賞」の2冠に輝いた作品です。

しかもパルムドッグを受賞したのは、なんと250匹のワンちゃんたち。

ただ可愛らしく映画に花を添えたわけではなく、かなり心が痛む物語のキーマンになっています。

 

  • 今作は、飼い主に捨てられた犬たちが大暴走するパニックスリラー
  • …というよりむしろ、カンヌのド肝を抜いた社会派ヒューマンドラマ
  • 実際に捨てられ保護されていたワンちゃん250匹が出演
  • 映画の枠に収まらないドキュメンタリーな一面も見どころ

 

むげに扱われ、ひどい仕打ちを受け、牙を剥き出しにした沢山の犬たち。

人が人に飽きたらず、犬をも差別した世界に生きる少女と元飼い犬の交流を描いた映画【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】です。

 

映画【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】基本情報

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲2015年 ハンガリー・ドイツ・スウェーデン合作
ジャンル動物パニック・社会派ヒューマン
監督コーネル・ムンドルッツォ
脚本コーネル・ムンドルッツォ、ヴィクトリア・ペトラニー、カタ・ヴェーベル
上映時間121分
出演ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ショーテール、ラースロー・ガールフィ他
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【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】弱きものの行方

ホワイト・ゴッド

物語の舞台はハンガリー・ブタペスト。

両親が離婚し、母親に引き取られていた13歳の少女が主人公です。

 

  • 少女の名はリリ。音楽学校のオーケストラでトランペットを担当
  • 母親が彼氏とシドニーに行く間、別れた父親と暮らすことに
  • 愛犬ハーゲンと共に父親の元へ行くも、父親は犬を毛嫌い

 

たける
たける

パパさん、犬嫌いなの?

REON
REON

動物全般、可愛いと思えないんじゃないかな。

リリの父親は、食肉解体工場で病理検査を担当する元教授。

毎日ドナドナしてくる牛の屠殺を見ているからか、動物全般を下等な生き物と思っているフシがあります。

 

  • リリが父親と暮らすのは3ヶ月限定
  • ただし父親の家は動物飼育厳禁のアパート
  • 短期間だし…と父親はリリもハーゲンも仕方なく連れ帰ることに
  • ところがアパート住人のオバサンからちょっとツッコミが

 

たける
たける

ハーゲンって何の種類のワンちゃん?

REON
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レトリバー系の雑種だな。

オバサンによると、「雑種犬の飼い主にだけ重税を課す」という法律が出来たとのこと。

そんな新法律を知らない父親は、しばらく預かるだけですから…とオバサンを邪険に扱い話を切り上げます。

 

  • そもそもリリは、今日まで父親とは疎遠
  • 父親の世話になるのもこのアパート自体も居心地が悪い
  • それでも大好きなハーゲンがいるから…と思ってたら大きな誤算が
  • ハーゲンと一緒に寝ようとしたら頭ごなしに怒られた
  • しかもハーゲンだけバスルームに強制収容

 

たける
たける

威圧的に言われたら、リリも従うしかないじゃん!

REON
REON

パパさん、けっこう鬼畜だな。

いつも一緒にベットで寝ていたほど仲良しだったリリとハーゲン。

この晩は離れ離れで寝ることになり、ハーゲンは寂しさのあまりアオンアオン鳴きまくってしまいます。

これがまた…本当に切なそうな顔してハーゲンが鳴くので、観ているこっちまで胸が痛くなる思いです。

 

  • 父親は「眠れん!うるさい!」と超ゴキゲン斜め
  • リリはベッドを抜け出しバスルームへ
  • ハーゲンにトランペットの音色を聴かせて落ち着かせた
  • 安心して伏せたハーゲンの傍の浴槽でリリも眠ることに

こうして肩身の狭い思いをしながら、リリとハーゲンは父親の家でひと晩を過ごします。

ところが翌朝から大きな暗雲が立ち込め、リリとハーゲンの生活は大きく歪むことになってしまうのです。

愚かな人間が招いた惨事

ホワイト・ゴッド

翌朝。

リリとハーゲンは、朝っぱらからピンポンしてきた誰かと言い合いをする父親の声で目が覚めます。

 

  • ピンポンしてきたのは市の職員
  • 雑種犬を飼ってるなら税金納めろと言いに来た
  • 実は昨日のアパート住人オバサンが市にチクった
  • 父親は「元妻の飼い犬預かってるだけだ」と納税を断固拒否
  • 納税しないなら保健所か保護団体に預けるよう指導された

 

たける
たける

アパートのオバサン、えげつなっ!

REON
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しかも「雑種犬に噛まれた」って、話盛っての通報だぜ。

父親はリリに対してだけでなく、市の職員に対しても威圧的な態度で追い返すことに。

これを聞いてますます居場所を失ったリリは、ハーゲンを学校へ連れて行くことにしたのです。

 

  • リリは音楽学校の大きなクローゼットにハーゲンを隠した
  • …が、オケ演奏練習中にハーゲンが吠えて脱走
  • 元々問題児のリリは、先生にこっぴどく怒られ退室させられた
  • そこへ父親が車で迎えに来て、車内で口論に
  • リリが反抗的な態度をとったせいで、ハーゲンは捨てられることに

 

たける
たける

…え。えぇーー!車道に置き去り!?

REON
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…そう。おかげでハーゲンはとんでもない犬生を歩むことになった。

昨日今日来たばかりの父親の家になんて、ハーゲンはひとりでは帰れません。

おかげで往来の激しい道路で車に轢かれそうになりながら、街を彷徨う羽目に。

 

  • そんな中、ハーゲンは1匹の小型犬と知り合いに
  • 野良犬が集まる空き地に連れてってもらった
  • …が、そこに保健所職員が乱入
  • 沢山の野良犬が取っ捕まり、ハーゲンは小型犬と逃亡

 

たける
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ハーゲン、このまま野良犬になっちゃうの?

REON
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…いや。もっと酷い目に遭うんだ。

野良犬の捕獲作戦は、広範囲に渡ってかなりしつこく展開。

うまく捕獲をかわしていたハーゲンも、ジワジワと保健所職員に追いつめられてしまいます。

…が、ある浮浪者が匿ってくれたおかげで、どうにか難を逃れることに。

ところがこの浮浪者、とんでもない喰わせ者だったのです。

 

  • 雑種犬に対する納税義務のせいで捨て犬が増加
  • そこに目をつけた闇ブローカーが
  • 捨て犬を買いたたき、賭け闘犬で死ぬまで戦わせていた
  • 浮浪者がハーゲンを匿ったのは、闇ブローカーに売るため
  • 売られたハーゲンは、さらに闘犬使いのチンピラに飼われることに
  • 薬物投与・鞭打ちの躾ですっかり性格が凶暴に

 

たける
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ハーゲンがピンチなのに、リリは一体何してんの!

REON
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一応探し回ったり、張り紙もしてハーゲンを探してるよ。

ハーゲンが捨てられて以来、幾度となくあちこちを探しても、それでも一向にハーゲンは見つからず。

リリは次第に自暴自棄になり、クラブに出入りして薬物所持で補導されるなど、荒んだ日々を送っておりました。

父親はそんなリリときちんと向き合いはじめ、険悪な親子関係はあっさり和解。

親に認められ、自分の居場所を見つけたリリは、いつしかハーゲンを探すことをやめてしまいます。

ところがある日、街で犬による人間殺傷事件が発生。

闘犬にされたハーゲンが沢山の野良犬を引き連れて、人間への復讐を開始していたのです。

まるで統制のとれた軍隊のように、人を襲い始めた野良犬たち。

街は外出禁止の厳戒体制が敷かれ、機動隊が野良犬たちを撃ち殺す戦場と化してしまいます。

野良犬軍隊のリーダーがハーゲンだと知ったリリは、この事態を何とかすべく立ち向かうことに… というのが大まかなあらすじになります。

 

映画【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】

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【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】痛みを抱えた登場人物たち

犬は単なる愛玩ではなく、そこには小さな命が確かに宿っています。

飼うも人間、捨てるも人間。

虐げられる者の痛みと苦しみを物語る主人公と、キャスティング秘話をご紹介いたしましょう。

 

リリ (ジョーフィア・プショッタ)

リリは、雑種犬ハーゲンの飼い主。

トランペットの才能があるけれど、言動に何かと問題があるクセモノです。

まだ子供だからと、リリは大人からは見下される弱い立場。

そして雑種犬だからと邪険にされるハーゲンも、同じように弱い立場にいる存在。

互いに似た境遇だったリリとハーゲンの姿を通し、弱者に対する世間の醜さが露わになっていきます。

【ちょっと裏話・主人公編】

今作において、リリは純粋さを象徴するキャラクター。

純粋さとは、規則によって簡単に失われる感情のひとつです。

ルールだから・法律だからという理由があれば、人は弱者を平気で差別します。

自分より劣るものを冷遇するのは当たり前。

そんな不純な大人とは一線を画す、重要な人物像がリリです。

今作の監督コーネル・ムンドルッツォ氏は、リリの純粋さが滲み出る素朴な演技ができる女の子を探すことに。

大掛かりなオーディションを仕掛け、2000人の女の子に会い、友人の付き添いで来ただけのジョーフィア・プショッタさんに一目惚れ。

ところがジョーフィアさんには、映画に出る気も女優になる気もさらさらなく。

監督は彼女と彼女の母親に猛アピールして、何とかリリ役を…と口説き落としたそうで。

純粋で素朴。

けれどいつしか周囲の大人のように、弱い存在に関心を寄せなくなる主人公リリ。

難しい役どころを演じきったジョーフィアさんの演技に、ぜひご注目を。

 

ハーゲン (レトリバーっぽい雑種犬)

ハーゲンは、リリの飼い犬である大人しいワンちゃん。

捨てられて、拾われて、酷い目に遭って。

闘犬場で相手の犬を噛み殺し、そんな自分が許せず、そんな存在にした人間を恨むように。

可愛かったハーゲンが少しずつ牙を剥き出し、野獣と化していく姿には心が痛みまくります。

犬が好き・犬を飼っているという方には、かなり辛い展開かもしれません。

【ちょっと裏話・ワンコ編】

犬を演出するにあたり、監督が心に決めていたことが2つ。

  • CGを使わず、本物の犬に参加してもらうこと
  • 犬に犬自身を演じてもらうこと

今作では、「捨てられた犬」がわんさか登場します。

捨てられた動物というのは、人に怯え、人を嫌う行動をします。

そのリアルな姿を映し出し、命の重さを訴えることが今作の要です。

いわゆるタレント犬では、「捨てられた犬」の辛さまで伝わらないかもしれない…。

そう考えた監督は方々に相談し、出演ワンちゃんのキャスティングが1番の難関だったそう。

そんな折、ハンガリーでドッグスクールをやっている人からこんなアドバイスが。

『200頭、同時に社交性を持たせることはトレーニングで可能だよ』

この言葉に希望を見出した監督は、野犬収容所にいるようなワンちゃんを集めてトレーニングすることに。

今作に登場する子たちは本当に捨てられ、悲しい生き方をしてきたワンちゃんばかりです。

リアルな捨て犬の姿と、ペットを捨てる人間が多い現実も今作には込められています。

撮影を通して人と触れ合ったワンちゃんたちが、その後どうなったかというと……。

映画関係者が引き取ったり、里親を探してもらったり。

新しい家族に迎えられ、全員ハッピーワンワンになったという話です。

こんな裏話を聞くと、余計この作品の素晴らしさに感動するかと思います。

 

…ということで、今作メインは少女とワンちゃん。

この他に、父親だの保健所職員だのが登場しますが、脇役すぎるので端折ります(笑)

カンヌが湧くのも充分納得・パルムドッグ受賞ももちろん納得の作品 となっております。

 

 

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【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】まとめ

ホワイト・ゴッド

あんなに可愛がっていたのに捨てるのか。

捨てるなら最初から飼わなければいい。

250匹のワンちゃんたちから、そんな強い怒りすら伝わってきます。

  • ハーゲンという名の雑種犬を飼っていた少女が主人公
  • 疎遠だった父親と暮らすことになり、成り行きで犬を捨てられた
  • ハーゲンは、野犬狩りに遭ったり闘犬にされたりと散々な目に
  • それもこれも自分を捨てた人間のせい…と逆襲することに

今作に登場する人間どもは、どいつもこいつも胸クソ悪くなる輩ばかりです。

そもそも「雑種犬の飼い主には重税」ってなに。

お役所、バカなの?

…と、まずツッコミたくなります。

だって税金払いたくない飼い主なら、飼い犬をホイホイ捨てるに決まってる。

そんな法律もさることながら、人ん家の犬を密告するご近所さんも大概です。

さらに動物保護団体に行って、捨て犬の里親を名乗り出る人々も浅はかな行動をしでかします。

それに引き換え、犬は本当に頭の良い動物です。

飼い主の愛情も裏切りも、自分を虐げる人間の悪意も悟ります。

そんな賢さのある犬が人間に抱く想いと現実をテーマにした今作は、タイトルにもたっぷりの皮肉が。

まず「GOD」

これは反対から読むと「DOG」です。

ここには、犬にとって飼い主は神のような存在だという暗喩的な意味が込められています。

さらに単語としての「WHITE GOD」=白い神とは、かつて世界を植民地化し、支配してきた白人を表現した差別造語。

今作はハンガリー映画なのでハンガリー語の原題もあり、「FEHÉR ISTEN=白い神」と意味は同じです。

人間は犬を支配する存在であることも、暗に揶揄したタイトルになっています。

今作で印象に残ったのは、250匹の犬たちが大暴走する圧巻のシーン。

…ですが、小さな命を軽んじた人間が、現に大勢いることの裏返しだと感じました。

映画【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】は、弱者を差別する人間の醜さに警鐘を鳴らす作品 でした。

 

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