世界中に熱狂的な”キヨシスト”がいる日本の映画監督・黒沢清氏。
セリフは少なめ・カメラワークは独特。日常にある非日常を描く映像展開「黒沢節」がとても魅力的です。
ということで、黒沢清監督の世界観にどっぷり浸かれるおすすめ映画15選をお届けします。
この記事で分かること
- 黒沢清監督・最新作情報
- 黒沢清監督作品を15本ピックアップ
- あらすじ概要・見どころ
- 予告動画・DVDブルーレイ情報
スパイの妻 (2020)
引用:イオンシネマ
映画【スパイの妻】は、2020年第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた作品。
銀獅子賞とは、最優秀監督賞・審査員大賞(金獅子賞に次ぐ2席目の栄誉)に選ばれた作品に与えられる、すんごい賞です。
過去に銀獅子賞を受賞した日本映画は、この作品と監督さん↓
1953年 | 雨月物語 | 溝口健二 |
1954年 | 山椒大夫 | 溝口健二 |
七人の侍 | 黒澤明 | |
1989年 | 千利休 本覚坊遺文 | 熊井啓 |
2003年 | 座頭市 | 北野武 |
いずれも名作、名匠と言われる監督さんばかりです。
そしてこのたび、黒沢清監督が日本人監督としては17年ぶり・5人目となる銀獅子賞を受賞。
ちなみに世界のクロサワ・黒澤明監督と黒沢清監督は、なんのゆかりもありません。
ご子息でもなければ遠縁でもないそうで。
今回は、黒沢節とも言われるカメラワークの良さ・物語の展開・感情たっぷりに40年代の世界観をモダンに表現した演出が高く評価され、受賞に繋がりました。
映画【スパイの妻】あらすじ
- 太平洋戦争を目前に控えた神戸が舞台
- とある実業家が、たまたま満洲で日本政府の国家機密をキャッチ
- 帰国後、満洲で日本軍が行った犯罪行為を告発することを決意
- 隠密かつ大胆な行動を開始し、反逆者と疑われることに
- 実業家の妻も「スパイ」だなんだと罵られ、それでも夫を信じ愛し抜く妻の物語
社会の中で個人がどう生きていくのか。
どう世界と共存するのか。もしくは対立するのか。
そこにある良心・正義・夫婦愛のあり方とは。
黒沢清監督初の歴史ミステリ、独特のリズムと映像美が見どころの作品。
映画【スパイの妻】
出演 : 蒼井優、高橋一生、東出昌大、笹野高史ほか
上映時間 : 115分
スウィートホーム (1989)
映画【スウィートホーム】は、伊丹十三氏が製作総指揮・黒沢清氏がメガホンを撮った幻の名作ホラー。
版権うんぬんでドップリ揉め、未だ円盤化されていないお宝作品です。
- TVクルー御一行が、今は亡き間宮画伯の邸宅でドキュメンタリーを撮影することに
- ただし間宮邸は、地元では祟りがあるとして立ち入り禁止
- なんとか撮影許可を取ったところ、間宮画伯の幻の壁画を発見
- ところがこの後、1人…2人…とクルーが犠牲に
- 実は屋敷には悲しい怨霊が棲みついており、てんやわんやするお話
古い映像の質感が不気味さを引き立て、さらに映像表現も抜群です。
SFXを駆使した残酷描写は、《エクソシスト》《スキャナーズ》《ポルターガイスト》の特殊メイクを手掛けたディック・スミス氏という本格仕様。
下半身がグロめのテケテケ状態、デッカい斧で顔面真っ二つ、人体が内側から燃えて溶解、怨霊の造形に至っては美しさすら感じます。
さらに驚きの豪華キャスティングも見どころ。
昭和の色男・チョメチョメな山城新伍氏、メガネかけてない若い古舘伊知郎氏、なんとレベッカのボーカルNOKKOも出演。
今どきVHSでしか手に入らないなんて。
黒沢清監督ファンからもホラーファンからも、大いに愛され大いに惜しまれている傑作。
映画【スウィートホーム】
出演 : 山城新伍、宮本信子、NOKKO、黒田福美、古舘伊知郎ほか
上映時間 : 102分
※現在、動画配信サービスでの取り扱いがありません
CURE (1997)
映画【CURE キュア】は、1997年日本インターネット映画大賞・日本映画作品賞受賞作。
世界の映画ファンから「黒沢清監督」が注目されるキッカケにもなった作品です。
- 鈍器で殴打し、胸部をX状に切り裂く連続殺人が続発
- ただし手口は同じでも、犯人はそれぞれ単独犯
- 不可思議な事件だが、ひとりの男が関与している共通点が
- 男は記憶喪失ながらも、人を惑わす話術の持ち主
- ある刑事が男と接触するうちに、異様な開放感すら感じることに
人は誰しも「本当はこうしたい」という本音を押し殺し、「世間的にこうでなければならない」という脅迫めいた焦燥感を抱いています。
そんな感情を弄ぶかのような、謎の男のサイコな性質が刑事の固定観念をも打ち崩し、人を豹変させてしまう展開が見どころです。
荒んだ廃屋・切れかけた電球・洗濯物の入っていない洗濯機を回す妻。
そこかしこに映し出される不穏な日常が、残虐で救いのない物語を後押ししています。
セリフよりも映像で語る黒沢節が大いに光る、黒沢清監督の代表作。
映画【CURE】
出演 : 役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川安奈ほか
上映時間 : 111分
ニンゲン合格 (1999)
映画【ニンゲン合格】は、人間の生と死を見つめるヒューマンドラマ。
誰もが経験することではないけれど、誰かが経験しているかもしれない日常が描かれています。
- 14歳で交通事故に遭い、長らく昏睡状態だった青年が主人公
- 24歳で突然意識が戻るも、家族はバラバラ
- 事故の加害者からはちょっと逆恨みも
- そんな現状を嘆くでもなく、青年は父親の友人と同居
- なんとなく好きに行動するうち、家族が再び繋がり始めた
青年にとって、生きているとも死んでいるとも言えない10年間に意味はなく。
大事なのは、今の自分はたしかに「生きている」と言えるのかどうか。
それを確かめるかのように過ごす青年の日常が、まるで走馬灯のように映し出される映像展開が見どころです。
ニンゲンとして生きるとは何か、生きた証とは何かを問いかける深みのあるドラマ作品。
カリスマ (2000)
映画【カリスマ】は、人の感情の曖昧さ・おぞましさを映し出したヒューマンホラー。
1本の木をめぐる人々と、そこに迷い込んだ刑事の姿が描かれています。
- ある事件で人質も犯人も死なせてしまった刑事が主人公
- 事件の失態を理由に、上司から休暇を命じられた
- 心に傷を負った刑事は癒しを求め、とある森へ
- その森では「カリスマ」と呼ばれる1本の木をめぐる騒動が
- 刑事は中立の立場で「カリスマ」と関わることに
1本の木を特別視する人々は、生命に対する尊厳も善悪に対する判断能力も欠けています。
そんな彼らの相反する強い思想と、それに基づく狂信的な心の闇が見どころです。
閉鎖的な思想を持つ人々の不安を、ぼんやりと映像に閉じ込めた作品。
映画【カリスマ】
出演 : 役所広司、池内博之、大杉漣、洞口依子ほか
上映時間 : 104分
回路 (2001)
映画【回路】は、黒沢清監督が脚本も手掛けた「死」がテーマのホラー作品。
パソコンの向こう側が死者の国と繋がっているという、現代的な設定で展開するリアルな恐怖が描かれています。
- OLの同僚が突然自殺
- それ以降、彼女の周りでは知人が次々と失踪
- 同じ頃、大学生の青年のパソコンに異変が
- 「幽霊と会いたいですか」という謎のメッセージと画像が届いた
- 大学生は奇妙なサイトを探り始め、OLの周囲で起こった事件とシンクロ
- 2つの怪異は2人を引き合わせ、OLにも大学生にも死の恐怖が襲いかかるお話
黒い影を残して消えていく人々。
怪異から感じる恐怖が、バケモノや霊といったありきたりのものではない世界観が見どころです。
どんな死に方をするかではなく、死んだらどうなるかという怯え。
死の先にある「永劫の孤独」に、人は本当の恐怖を感じるという精神論に焦点をあてた作品。
降霊 KOUREI (2001)
映画【降霊 KOUREI】は、もともと2時間ドラマ枠で制作されたオカルトホラー。
のちに再編纂し、映画として公開されたカルト的人気のある作品です。
1964年のイギリス映画《雨の午後の降霊祭》のリメイクで、マーク・マクシェーンの「雨の午後の降霊術」という小説が原作。
得体の知れない不自然な超常現象の怖さが描かれています。
- 一見ごく普通、ただし妻が強力な霊媒体質の夫婦が主人公
- 妻は降霊術を行うこともあり、大学生から降霊実験の依頼が
- 同じ頃、少女誘拐事件が発生
- 犯人は事故って意識不明・少女の行方も不明に
- 実は少女が夫婦宅に逃げ込んでおり、夫が誤って殺してしまった
- そんな状況の中、妻は警察からの依頼で少女の行方を降霊で探ることに
夫の過失を隠蔽するため、妻が行ったのはニセの降霊術。
ところが茶番だとバレた上、とんでもない恐怖の闇に堕ちてしまいます。
背後に感じる気配や物音。
日常に潜む目には見えない恐怖。
霊体のおぞましさを底上げする粗めのCGや、生きた人間の傲慢で醜い心理が見どころです。
後味の悪さが良い意味で強烈、ジワジワくる恐怖の余韻に恐れ慄く作品。
映画【降霊 KOUREI】
出演 : 役所広司、風吹ジュン、草彅剛、きたろう他
上映時間 : 97分
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ドッペルゲンガー (2003)
映画【ドッペルゲンガー】は、ホラーの緊張感を保ちつつ、アクションもユーモラスな展開もある不思議な作品。
幻覚に思えたもう1人の自分と、わちゃわちゃしていくサスペンスコメディです。
- メディカル系の開発研究員の男性が主人公
- かつて大ヒット商品を生み出すも、現在絶賛スランプ中
- そんなある日、自分そっくりの「ドッペルゲンガー」と遭遇
- 男性はドッペルゲンガーに仕事を押し付け、陰ながらサポート
- ところが次第にドッペルゲンガーへ殺意を抱くことに
仕事に追われ、ノイローゼ気味だった主人公の前に現れたのは、幻覚ではなく実体化したもう1人の自分。
上手いこと手を組み、自由も願望も手に入れたけれど、自分より優秀なドッペルゲンガーが気に入らず。
どうあっても思い通りにいかない人生。
さて、これはどう生きるべきか。
もうひとりの自分と対峙し、究極の自分探しにてんてこまいするブラックユーモア作品。
映画【ドッペルゲンガー】
出演 : 役所広司、永作博美、ユースケサンタマリア、柄本明ほか
上映時間 : 107分
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LOFT ロフト (2006)
映画【LOFT ロフト】は、黒沢清監督が脚本も手掛けた日韓合作のホラーミステリー。
ストーリーは若干ゴッチャ、主演の中谷美紀さんと豊川悦司氏が放つ、のっぺり怖いオーラを堪能する作品です。
- 謎の体調不良と執筆スランプに陥った女性作家が主人公
- 担当編集者の勧めもあり、郊外の洋館にお引越し
- 新居の隣には廃墟があり、興味本位でちょっと探索
- …したら、千年前に沼に落ちたという女性のミイラを発見
- 実は隣の廃墟では、ある大学教授がミイラを研究中
- 2人は少しずつ交流を深めるも、不可解な現象が
ミイラと大学教授にのめり込み、執筆活動放ったらかしの作家。
ミイラとは別の女性の霊に悩まされ、自分が誰かを殺したのかも…とウジウジしてる大学教授。
2人の愛と裏切り、ミイラの秘密がじんわり明かされていく物憂げなビジョンが見どころです。
コアなファン向け・唐突で衝撃的なラストに不気味な味わいがある作品。
映画【LOFT ロフト】
出演 : 豊川悦司、中谷美紀、西島秀俊、安達祐実ほか
上映時間 : 115分
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叫 (2007)
映画【叫】は、2006年ヴェネチア国際映画祭・正式招待作品。
黒沢清監督×役所広司、鉄板コンビが贈るサイキックミステリーです。
緊張感あるワンシーン・ワンカットの映像ショットと、リアリティを感じる演出・演技が見どころ。
- 連続殺人事件を追う刑事が主人公
- 捜査の過程で、奇妙な感情に囚われ始めた
- まず被害者周辺にはいくつもの自分の痕跡がある
- さらに記憶も曖昧で、自身のアイデンティティが崩壊
- ……もしや自分が犯人なのでは
自分を信じられなくなる不安を抱えた主人公は、ある現実を突きつけられます。
まさかの展開・まさかの結末。まさかの捨て台詞。
赦しはむしろ赦しではなく、最後の一言にはゾッとします。
観ている者のアイデンティティまでも崩壊させる、究極の恐ろしホラー作品。
映画【叫】
出演 : 役所広司、小西真奈美、伊原剛志、葉月里緒奈ほか
上映時間 : 104分
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トウキョウソナタ (2008)
- 舞台はトウキョウ。沿線沿いのマイホームで暮らす4人家族が主人公
- 家では威厳を振りかざしてる父親が、ある日突然リストラ
- 家族には秘密にし、コッソリ再就職活動中
- 母親は家族を想って家事をこなすも、ただそれだけの存在
- 大学生の長男は、世界平和を目指してアメリカ軍隊に入隊
- 12歳の末っ子は、家族に内緒でピアノを習い始めた
- 家族それぞれが家族の知らない何かを抱え、次第にバラバラに
他人事とは思えない、ごくありふれた家族の日常を切り取った風景。
どこか身につまされる怖さがありつつ、フッと笑ってしまうクールなコメディ演出が見どころです。
特にチョイ役出演の役所広司氏のシーンにはツボるかと。
ラストシーンがどこまでも美しく、ドビュッシーのピアノ協奏曲「月の光」がじんわり心に染み入ります。
紆余曲折しながらも、一筋の光が家族再生の救いとなる感動作。
映画【トウキョウソナタ】
出演 : 香川照之、小泉今日子、小柳友ほか
上映時間 : 120分
※現在、動画配信サービスでの取り扱いがありません
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ダゲレオタイプの女 (2008)
映画【ダゲレオタイプの女】は、黒沢清監督が初めて手掛けた洋画作品。
舞台はフランス・俳優陣もフランスのお方・言語もフランス語で描かれた、ヒューマンミステリーです。
映画タイトルにある「ダゲレオタイプ」とは、170年前にヨーロッパで用いられていた写真撮影法のこと。
画家・設計士だったフランス人ダゲールが、銀板に定着する光子の性質に着目・開発した古典的な銀板写真を意味します。
- 気難しい写真家・その愛娘・撮影助手の青年の3人が主人公
- 写真家には「ダゲレオタイプこそ本来の写真」というこだわりが
- ただ、撮影モデルをやらされる愛娘は「ダゲレオタイプ」に辟易
- なぜなら露光時間が長く、モデルは微動だにしてはならないから
- 愛娘は毎回、数十分も拘束器具で固定されるのが苦痛
- そんな愛娘に惹かれた撮影助手の青年は、2人で生きたいと願うように
生きているものの息遣いさえも銀板に閉じ込めるダゲレオタイプ。
そんな写真に魅せられ囚われた3人は、次第に生と死の境界線を見失なっていきます。
そうしてある出来事をきっかけに、思いもよらない結末を迎えることに。
異国情緒溢れるパリの風景・舞台となる屋敷・趣きある調度品の数々。
そしてそれらの中で息づく人々。
映像の隅々まで格調高いアンティークのようで、フランス映画らしいドライな雰囲気をまとわせた映像美が見どころです。
まるで動く名画のように全てのシーンが美しいミステリーホラー作品。
岸辺の旅 (2015)
映画【岸辺の旅】は、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」において、日本人初となる監督賞を受賞した作品。
湯本香樹実さんの同名小説が原作です。
あるひと組の夫婦の、ちょっとファンタジックな旅路が描かれています。
- 3年前、何も言わず失踪した夫が突然帰宅
- 妻はずっと帰宅を待ちわびていた
- …が、夫から意外な言葉が「俺、死んだんだ」
- そう語る夫と共に、妻は旅に出ることに
- 夫が今日まで世話になった人々を、2人して訪ね歩いた
生者と死者が当たり前に共存する世界。
ここでは生者の思念が死者をこの世につなぎ留め、死者の想い残しが実体となって現れます。
そんな世界にいる2人は、旅を通してお互いへの深い愛を再確認。
特別なことが起きるわけではなく、穏やかで温かい夫婦の交流が見どころです。
言えなかったこと・知らなかった互いの姿を慈しむ、切なくも優しいヒューマンドラマ。
クリーピー 偽りの隣人 (2016)
映画【クリーピー 偽りの隣人】は、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞・前川裕氏の小説「クリーピー」が原作。
「クリーピー(creepy)」とは、ゾッとする・気味が悪いという意味の英語です。
タイトル通り気味が悪くてゾッとする悪意が忍び寄る、衝撃のサスペンススリラー。
- 元捜査一課の刑事・今は犯罪心理学の大学教授が主人公
- 刑事退職を期に妻と引っ越すも、新居の隣人がちょっと不気味
- それでもちょくちょく交流し、ご近所付き合いがスタート
- そんな中、元部下の刑事が事件分析を依頼してきた
- 6年前の未解決事件を探るうち、隣人との奇妙な接点を発見
- そうこうしてるうちに、妻や元部下がとんでもないことに
ちょっと挙動不審ではあるけれど、中学生の娘の良きパパでもある隣人男性。
ごく普通の一般家庭かと思いきや、家族関係にも隣人男性にも驚きの秘密が。
終始気持ち悪い隣人男性を、びっくりするほど気持ち悪く演じた香川照之氏の演技が見どころです。
…あと、主人公の妻を演じた竹内結子さんの絶叫も。
とにかく気持ち悪くて現実的、最恐のご近所トラブルにガクブルする作品。
映画【クリーピー 偽りの隣人】
出演 : 西島秀俊、香川照之、竹内結子、東出昌大ほか
上映時間 : 130分
散歩する侵略者 (2017)
映画【散歩する侵略者】は、劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの人気舞台を映画化した作品。
日本映画が不得手とする、宇宙人侵略者モノ・SFサスペンスです。
- ある日突然、行方不明だった夫が帰宅
- 浮気して家出したらしい夫に、妻はイライラ
- …だったが、明らかに以前の夫と様子が違う
- 夫曰く「宇宙人なんだ」……はぁ?
- そんな夫の異変以外にも、街では一家惨殺事件や奇行に走る住民が
- さらに夫以外にも、自称「宇宙人」があと2人
「なるほど。それ、もらうよ」
夫に憑依した宇宙人の目的は、人間の概念を集めること。
思念体の彼らは自分たちにない人間の意識を横取りし、地球も丸ごと頂こうって魂胆です。
そんな異変に戸惑いながらも、妻は夫との愛を修復するために大奔走します。
ハリウッドのようなド派手なSFとは全く違う、大胆なアイディアのストーリー構想。
のほほんとしたユルい展開と、緊迫した展開がミックスされているところが見どころです。
コメディのようでシリアス、一途な夫婦愛と世界の終焉にしんみりする作品。
映画【散歩する侵略者】
出演 : 長澤まさみ、松田龍平、長谷川博巳、
上映時間 : 129分
予兆 散歩する侵略者 (2017)
【予兆 散歩する侵略者】は、黒沢清監督の着想から生まれたアナザーストーリー。
映画《リング》シリーズを手掛けた高橋洋氏とともに、黒沢清監督が脚本も担当した5話完結ドラマです。
- 医療技師の夫と工場勤務の妻が主人公
- 最近夫の様子がおかしく、夫とつるむ新人医師もなんか胡散臭い
- 実は新人医師が宇宙人で、夫はその「ガイド」という立場
- 次々と人間から概念が奪われるも、妻だけ概念を奪えない特別な存在だった
- けっこう無慈悲な宇宙人医師と、特別な人間だった妻がやりあうお話
「概念」を奪う侵略者は他にもいた。
まるで散歩するかのように人々と接しては、概念を奪っていた宇宙人。
そのとき他の街では一体何が?
…という、世界の終焉が一ヶ所で起こっていたわけではない新設定が見どころです。
ガイドとなった医療技師を染谷将太氏が、特別な人間である妻を夏帆さんが、宇宙人医師を東出昌大氏が演じています。
どのキャストも黒沢清監督を唸らせた、憑依レベルの圧巻の演技。
ホラーサスペンス要素が強く、終焉に向かう世界のあり方にゾワゾワする作品。
贖罪 (2012)
【贖罪】は、映画ではなく5話完結のドラマ作品。
救いがなく後味も悪い、湊かなえさんの同名ミステリー小説が原作です。
- 小学校の体育館で、1人の女子児童が殺害された
- 同級生4人が一緒だったものの、誰1人犯人の顔を思い出せず
- 女子児童の母親は、同級生らにも娘の死の責任があるとして復讐を開始
- 実は女子児童と同級生の間には、ネッチョリした子供の悪意が
迷宮入りした事件の謎。
何年経とうが決して娘のお友達を許さない母親の狂気。
あの出来事に呪縛されたまま、大人になった少女らの腹黒さ。
ただの空想話…と客観視するには、あまりにも現実味を帯びている展開が見どころです。
イヤミスの女王・湊かなえ小説と、黒沢清監督の映像演出が見事に融合した作品。
5話完結ドラマ【贖罪】
出演 : 小泉今日子、蒼井優、小池栄子、安藤サクラほか
上映時間 : 300分 (1話60分×5話)
…ということで、天才とも鬼才とも名匠とも言われる黒沢清監督作品おすすめ15選をお届けしました。
セリフに頼らず、映像の雰囲気でストーリーを魅せきるのが「黒沢節」
観る者の想像力と共感力を刺激する作風なので、見応えはたっぷりあります。
…ただ、展開は地味です。
派手で分かりやすいシーンが多くないので、そこら辺は好き嫌いが分かれるかもしれません。
「あっ…。(察し)」
…と、いつしか世界観に同調してしまう黒沢清監督作品に、興味を持っていただけたら恐悦至極にございます。
29年ぶりにデジタルリマスター版となって復活した、黒沢清監督の幻の傑作。
松重豊氏の映画デビュー作でもあるスリラー映画も是非に↓

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