独特のタッチで描かれるアメリカン・コミックには、人々の危機を救うスーパーヒーローが登場する作品が数多くあります。そんなアメリカン・コミックのひとつがスパイダーマンです。
ふとしたことからひとりの青年は蜘蛛由来の特別な能力を授かり、スパイダーマンなるヒーローが誕生します。
漫画の中で大活躍するヒーローを忠実に実写化した【スパイダーマン】の世界へとご案内いたします。
【スパイダーマン】原作は有名なアメコミ
「Help Me!」で颯爽と現れるのってスーパーマンだよねー。
ビルとビルを這い回って登場するスパイダーマンだっているよ。
ひと昔前なら、電話ボックスでコッソリ着替えてビューン!と空を飛び回るスーパーマンがアメリカンコミック代表ヒーローでしたね。
日本の漫画とだいぶ絵が異なるアメコミ。主に人助けするヒーローが登場し、スーパーマンの他にもバットマンやアイアンマン、ウルヴァリンに超人ハルクなんかもいます。
それぞれヒーローは独特な能力を持っていて、スパイダーマンもアメコミヒーローの一員です。
恐怖!蜘蛛男!!
…直訳するな。そして「恐怖」をつけるな。
直訳して「恐怖」とか付けちゃうと、まるで楳図かずおか伊藤潤二の劇画タッチの怖い漫画に出てきそうな雰囲気ですね。まぁアメコミも絵面が一風変わってますから、劇画タッチに近しい気もします。
でも【スパイダーマン】は、ちょっとしたキッカケで蜘蛛の能力が身についた青年のお話なので、劇画漫画よりどちらかといえば仮面ライダー系ですかね。
とにかく蜘蛛の巣柄の全身タイツ着て「Help Me!!」な人々をお助け します。
スパイダーマンコミックの誕生は1962年
まずスパイダーマンのコミック自体は随分昔から沢山の種類が刊行されてます。原作者はスタン・リー氏、イラストはアーティストのスティーブ・ディッコ氏によって描かれ、1962年に誕生しました。
今でも新作あったりするんでしょ?
もうありすぎて読破するのも大変なくらいのコミック作品が出てるね。
コミック版はアメリカで人気もあっただろうに、これまできちんと映像化されなかったのにはこんな理由がありました。
- 映像化の企画は昔からあった
- スパイダーマンの独特の動き、壁を登ったり縦横無尽にスパイダーネットで飛び回るシーンを作るのが技術的に難しかった
これがようやくCGやVFX技術が進歩したから、今なら満足のいく映像が作れるってことでサム・ライミ監督が手掛けて完成したのが、2002年に公開された映画【スパイダーマン】です。
アメコミではほんっとやりたい放題の設定になってますからね。実写化も苦労したんだと思います。
あぁ、でもハリウッドに先駆けて日本でも実は実写ドラマあったんですよね。そんな雑学トリビアはこちらをどうぞ。
【スパイダーマン】CGを駆使した本格アクション
映画【スパイダーマン】の面白さは、独特のアクションシーンにあります。スーパーマンのようにマントで空を飛ぶわけじゃなく、超人ハルクのようにごっつい身体でパワフルボディになってるわけじゃありません。
家の隅っこにひっそり巣を張るのが蜘蛛ですよね。そんな蜘蛛からどんな能力を授かって大活躍するのかが興味深い見どころです。
スパイダーマンの能力はこんな感じ
スパイダーマンの能力を手に入れるのは、ごくごく普通の、どっちかというと大人しめで目立たないタイプの科学好きな高校生。両親を幼い頃に亡くし、伯父夫婦に育てられた、という幸も薄い青年です。
随分若いヒーロー誕生だね。
学校の社会見学で行った先の大学の研究所で蜘蛛に噛まれて…ってことになってるんだ。
日本ではこういった社会見学の機会はあまりないのでピンときませんが、アメリカでは授業の一環にどっかに見学に行ったり、ボランティアに参加するのが一般的。
主人公である青年は、蜘蛛を使った遺伝子研究を行ってる研究所でいつのまにか脱走したスーパースパイダーなる新種の蜘蛛に噛まれておかしな能力に目覚めます。
蜘蛛の能力って言っても、糸出すか毒持ってるかってくらいじゃない?
まぁそうだな。手首からシュッと糸が出るようになったね。あと、なぜか身体の威力もパワーアップした。
- 蜘蛛に噛まれて以来、運動神経抜群に
- ケタ外れの力強さも追加
- 手首からは蜘蛛の糸がシュッ(1時間で自動消滅機能付き)
- 出る糸は伸縮性があり、どっかに張り付いたらぶら下がったり移動することも可能
- その他、掌に細かい毛みたいなのが生えて吸盤がわりに
- 吸い付く掌でビルの壁にも天井にも張り付ける
こんな能力が身に付いたんですね。案外スパイダー能力は芸達者です。
ちなみに噛まれた蜘蛛がどんな種類だったのかというと、ゴケグモとかいう種類に似てるんだとか。似ているだけで、色や生態は異なります。
劇中では遺伝子操作したスーパーな特異体の蜘蛛という設定なので、実在はしません。
ゲットした能力の使い道
たいした取り柄もなかった青年は、まるで生まれ変わって別人になったかのような身体能力で新たな人生を歩みます。
最初からヒーロー目指したの?
いや、いまだかつて経験したことない運動神経を使って小遣い稼ぎした。
ちょっと街の裏側を覗けば、そこには一般ピーポー参加型の格闘イベントがあったんです。地下アイドルならぬ地下格闘技ですね。勝てば賞金が出る大会に出場し、負け知らずの強者になって調子に乗ってました。
格闘大会で勝つと小汚い雑居ビルの一室で賞金が受け取れるんですが、ある日そこで強盗に出くわします。
お♪早速ヒーローデビューだね。
いや、そのまま見逃したんだ。
強盗が入ったのは地下格闘大会の賞金支払所。ちょうど直前に青年は大会で勝った獲得賞金を受け取りに訪れてたんですが、受け取った賞金のショボさにクレームをつけ、ちょっとここでひと悶着。
あーだこーだとクレームはスルーされて追い返され、ふてくされて帰る途中に強盗に出遭ったんです。
後悔から始まったヒーロー稼業
強盗を見逃したなら、いつからヒーローに?
この強盗が引き金にはなってるね。
ザマアミロと言わんばかりに青年は強盗を見逃して、地下格闘大会の賞金所は被害に遭います。しかし被害はそれだけでは終わりませんでした。
実は青年は育ての親である伯父たちには図書館に行くとウソをついて、図書館近くで開催される地下格闘大会に参加。図書館まで伯父さんが車で送り迎えしてくれてたんです。
強盗を見逃したこの日も伯父さんが迎えに来てくれる予定でした。
なんかイヤな予感がするんだけど。
うん。伯父さんがこの強盗に襲われた。
青年が見逃したせいで警備員や警官に追われて切羽詰まった強盗は、あろうことか迎えに来ていた伯父さんの車を奪取して逃走を図ろうとしたんです。
伯父さんは、車を盗もうとした強盗の手に掛かり命を落とす結果に。
強盗なんかひとひねり出来るだけの能力を持ち合わせていたのに、自分のことしか考えずに力を使ったせいで大きな代償を払うことになりました。
ここから青年は大きな力には大いなる責任が付きまとうことを知り、自分のためではなく人のためにスパイダーマンとして生きていくことを決意する…というのが序盤のあらすじになります。
壁を登り天井からぶら下がり、特殊な能力で人々を救う【スパイダーマン】
遺伝子操作された蜘蛛に噛まれた青年は、蜘蛛の能力を授かり人命救助のスーパーヒーローに。
スパイダーマンが誕生した経緯が描かれ、手強い悪役を打ちのめす実写版スパイダーマンの第1作目にあたるワクワクの予告動画はこちら↓
【スパイダーマン】世界観を確立する登場人物たち
美麗なCGによるアクションシーンが迫力満点な【スパイダーマン】
アクションシーンがすごくても、出てくる人物像に魅力がないと面白さも半減です。ストーリーに深みを持たせ、面白さを存分に盛り上げる登場人物をピックアップしてご紹介します。
ピーターはミッドタウン高校に通う冴えない高校生。スーパースパイダーに噛まれて特別な能力を身につけて、スパイダーマンになる主人公です。
特殊能力は身についたけど、特に変身するわけでもないのでコスチュームは自作。蜘蛛の巣柄のぴったりフィットな特製スーツは、デザインの考案から縫製までピーターが頑張りました。
お手製スパイダースーツで自分のために力を活用していたピーターですが、奢った心構えが原因で大切な伯父さんを亡くすことに。
それ以来、能力は人助けのために使うことを決意して一躍ヒーローになっていきます。
ノーマンは一大軍需企業オズコープの創設者であり現社長。ピーターの親友ハリーの父でもあります。
軍需産業でライバル社との争いが熾烈化し、焦ったノーマンは自社開発の未完の筋肉増強剤を自ら人体実験。自分で試すとか、Yes!高須クリニックの高須先生並みにアグレッシブです。
ただしノーマンの場合は強烈な副作用が出てしまい、別人格グリーンゴブリンが発症。次第にグリーンゴブリンの邪悪な精神に乗っ取られ、悪の化身に。
今作でスパイダーマンの最大の敵として登場し、壮絶なバトルが繰り広げられます。
メリー・ジェーンはMJの愛称で呼ばれるピーターの想い人。高校も同じで家はお隣さん。こんなに近くにいる幼馴染みなのに、ピーターはいつまでたっても告白が出来ません。
あるとき暴漢に襲われそうになったところをスパイダーマンに助けてもらい、以後ちょっぴりスパイダーマンLOVEになっていきますが、ピーター=スパイダーマンであることは知りません。
ピーターとMJ、スパイダーマンとMJの恋の行方も見どころです。
ハリーはピーターの親友でノーマン・オズボーンの跡取り息子。大企業の御曹司でありながらすこぶるいいヤツ、さらにイケメン。顔良し・性格良し・財力も良しと、天は二物も三物も与えたような爽やか青年です。
親友といえどピーター=スパイダーマンとは知りません。ついでにダディがグリーンゴブリンになっちゃったのも知りません。
今作ではそこまで重要ポジションの役柄ではありませんが、続編にも登場してキーマンになっていきます。今作【スパイダーマン】から要チェックな人物です。
ベンはピーターの叔父であり育ての父でもあります。ピーターがまっすぐ素直で正直な人間になるよう、愛情たっぷりに接しています。
強盗に襲われ命を落としてしまいますが、死の間際にピーターに言った言葉が特に心に響きました。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
ベン伯父さんのこの言葉と彼の死が、ピーターのスパイダーマンとしての生き方を決定づけることになります。
メイはピーターを育ててくれてる優しい叔母。ベン伯父さんとともに、幼い頃に両親を亡くしたピーターを沢山の愛情で包み込んでくれます。
長年連れ添ったベンが思いもよらぬ形でこの世を去っても、悲しみを堪えてピーターと接する健気な女性です。
…とこの他にピーターは高校生なので学校の同級生とか、正義に目覚めるキッカケとなった強盗のオッチャンとか、スパイダーマンの歌を歌うストリートミュージシャンのお姉ちゃんなんかも登場します。
メインキャスト以外の存在がしっかり【スパイダーマン】の世界観を作り上げていき、メインである人物像を浮き彫りにしているので、アクションもストーリーも違和感なく楽しめました。
まとめ
1960年代から、アメリカン・コミックのニューヒーローとして登場したスパイダーマン。21世紀に入ってようやくその世界観が進化した映像技術によって再現されました。
- 主人公はごく普通の科学好きな高校生
- 社会見学で訪れた大学の研究室で、遺伝子操作されたスーパースパイダーに噛まれて特殊能力をゲット
- パワー充分・蜘蛛の糸発射で人生に変化が
- 育ての親である伯父の死をきっかけに悪と戦い人助けを行うヒーローに転身
どちらかというと蜘蛛は仕掛けた巣に獲物がかかるのをじっと待つ受け身の虫です。
が【スパイダーマン】は、ただ待つのではなく蜘蛛のように壁を這い、天井からぶら下がり、時には糸を自在に操って大都会を縦横無尽に飛び回ります。
与えられた力に伴う責任の重さに苦悩しながら、人のために生きていくその姿は人間味溢れるスーパーヒーローでした。
シリーズの初作であり最高傑作でもある2002年の映画【スパイダーマン】からもう一度観て、その他のスパイダーマンの活躍も堪能したいと思います。
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