1952年から1968年まで少年漫画雑誌で連載され、さらに幾度となくTVアニメ化もされた《鉄腕アトム》
戦後マンガ界・アニメ界、ひいてはロボット産業界にまで新たな光を差し込むきっかけにもなった手塚治虫大先生の作品です。
そんな鉄腕アトムが装い新たにCGアニメ映画になりました。
2009年に公開されたハリウッド・香港合作映画【ATOM】の世界へとご案内いたします。
この記事でわかること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・動画配信サービス・DVD情報
映画【ATOM】ロボット技術が進化した未来
そ〜らを越えてぇ〜〜♪…はい!
…え。あ…ラララーほ〜しぃの彼方ぁ〜〜(ドヤ)
……無駄にソプラノで歌わないでよ。
私は手塚治虫マンガがドンピシャなお年頃ではないんですが、いくつか好きな作品があります。
例えば《リボンの騎士》とか《ふしぎなメルモ》とか、あとは《ブラック・ジャック》が特に好き。他にも《火の鳥》や《アドルフに告ぐ》など、TVの再放送やレンタルで鑑賞してました。
とにかく沢山の名作ばかりを生み出した漫画家・手塚治虫氏は、マンガ界の神様とも言われるお方です。
- 中でも鉄腕アトムは、時代の最先端をいくストーリー
- ツノのようなヘアスタイルに赤いブーツ、子供ヒーローというキャラも魅力的
- ジェット噴射やお尻のロケットなど、鉄腕アトムはロボキャラの先駆者
今でこそ当たり前のように、映画などでも取り上げられている最先端技術に『AI(人工知能)』がありますね。
手塚治虫氏は、そんな感情を持ったロボットの世界を『電子頭脳』と称し、早くも1950年代に描いていたんです。
子供の頃アトム観て、憧れて科学者になった方もいるんだよねー。
そう。本当に科学の世界やロボット業界にも影響を与えた作品なんだよね。
そんなスーパー子供ヒーロー・鉄腕アトムを、手塚治虫生誕80周年を記念してハリウッドがリメイク。
原点をなるべく損なわないよう、ロボットとして生まれ変わった少年の姿を描いたフルCGアニメ映画が【ATOM】 です。
映画【ATOM】基本情報
ATOM | 2009年 アメリカ・香港合作映画 |
ジャンル | SF・アクション・3Dアニメ |
監督 | デヴィッド・バワーズ |
脚本 | ティモシー・ハリス |
上映時間 | 94分 |
声の出演 | フレディ・ハイモア、ニコラス・ケイジ、ドナルド・サザーランド他 |
動画配信サービス | Amazonプライムビデオ(prime対象) |
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映画【ATOM】あらすじ
物語の舞台は地球上のどこか。
日本のようで日本じゃない、富士山まるパクリのソフィア山という山がそびえる天空都市の様子から始まります。
- 世界の変化とともに人間は地上を捨て、大地の一部だけを空に持ち上げたメトロシティに移住
- 空の楽園・メトロシティは、様々な便利ロボットが往来
- ロボットの都市…ではなく、人間様のサポート役
わぉ♪超ハイテク都市でカッコいいーー!
しかもあらゆることをロボットが代行してくれて、至れり尽くせりの楽園なんだ。
このメトロシティでは、家事に育児に仕事に建築、医療だってナノレベルでロボットが大活躍。
果たして人間様は毎日何して暮らしてるんでしょう。
何でもかんでもロボット任せ…毎日寝て暮らしてもいいのなら、ここは羨ましいどころかガチで移住したいパラダイスです。
- それもこれも科学省長官・現代ロボット学の父テンマ博士のおかげ
- そんなテンマ博士の愛息子トビーが今作の主人公
- この親にしてこの子あり。トビーは成績優秀、科学や物理はお茶の子さいさい
- 学校で抜き打ちテストがあったとしても、そんなもんは数秒あれば全問正解
なんだこの分からんちんな数式は!
…世の中だけじゃなく、子供たちの脳内までハイテクなのかよ。
人間様は寝てすごしてるだけかと思いきや、ちゃんと学校はある模様。
しかもまだお子さまなのに、こんな物理学みたいな科学みたいな小難しい授業を行なってるだなんて。
物理が壊滅的で理系を諦めた私にとって、こんな抜き打ちテストは何年かかっても解けそうにありません。
- 「えー。難しい…」そんな同級生を尻目に、トビーはさっさと回答ロムを提出
- 教室に残っても仕方ないので、先生も帰宅を許可
- 車でお迎えに来ていたテンマ家の使用人ロボット・オリンと家路へ
- …とそこにテンマ博士パパから通話が
これまた随分とハイテクな通話!すげー。
…TV電話じゃなくて、ホログラムなのか。
まるで幽体離脱してきたかのように、車内にスーッと現れたテンマ博士パパと通話するトビー。
どうやら本当はこのあと一緒にお出かけの予定だったのに、テンマ博士パパには急用が入ってしまったようです。
- テンマ博士パパの同僚・お茶の水博士が”ブルーコア”なる新エネルギーを発見
- 実用段階まで研究開発が進み、今日そのプレゼンがある模様
- “ブルーコア”に興味津々な現大統領ストーンを、テンマ博士パパが案内することに
何ブルーコアって。見てみーたーいーー!!
…ってトビーも思って、勝手にプレゼン会場に行っちゃうんだよ。
お家へ帰るようプログラミングされていた使用人ロボット・オリンの回路コードをちょいとイジり、行き先をサクっとプレゼン会場に変更したトビー。
しかしトビーのこの好奇心が、このあと彼の人生を大きく変えることに繋がってしまうのです。
ロボットの身体・人間の心
勝手に乗り込んだプレゼン会場。
トビーは早速警護ロボットにとっ捕まり、テンマ博士パパやストーン現大統領とご対面することに。
- 叱られるかと思いきや、叱られることもなく
- かといってブルーコアの見学も許されず、トビーだけ別室で待機
- …するはずもなく、またもや勝手に抜け出してプレゼン会場へ
子供だって見たいんだもーん!
その行動が命取りだがな。
実はブルーコアとは、何百万光年も彼方で消滅した星のカケラから取り出したもの。
原子力よりも強力で、原子力よりも安全。しかも環境破壊の心配もありません。
利用いかんでは天空都市メトロシティも残された地上も、まるごと豊かになる夢の新エネルギーなんです。
- …ただし星のカケラからの精製過程で、レッドコアなる危険エネルギーも精製
- ブルーコアとは反対に、どんな災害を招くか不明
- ストーン現大統領はレッドコアのほうがお気に入りに
なに。大統領って赤がお好き?
…というか、新エネルギーを軍事活用するつもりだからかな。
ストーン現大統領は、いまむちゃくちゃ支持率降下中。
まもなく迎える次期大統領選で再選を果たすべく、地上とドンパチを繰り広げて好感度アップを狙っておりました。
- テンマ博士パパは、そのための新型兵器ロボットを開発中
- その雛形・ピースメーカーというロボットの動力源にコアを埋め込みたい
- お茶の水博士としては、兵器ではなく平和に活用したい
- ブルーコアより凄そうだから、レッドコアを大統領が勝手にセッティング
だ、ダイジョビなの!?
…ダイジョばない。事故が起きて、トビーが犠牲になっちゃうんだ。
プレゼン中に人為ミス。
レッドコアを装填されたピースメーカーが暴走し、コッソリ近くに忍び込んだトビーが爆発事故に巻き込まれてしまいます。
目の前で愛息子を失ったテンマ博士パパ。
吹き飛ばされたトビーの赤い帽子を拾い上げ、トビーそっくりの子供型ロボットを作って蘇らせることにいたしました。
居場所を求めて
自身の研究室に戻ったテンマ博士パパは、まるで何かに取り憑かれたかのようにトビー型ロボットの製作に取り掛かります。
- ソッコーで設計図を考案
- 手近にあった兵器ロケットを解体し、部品に
- お茶の水博士に頼み込み、動力源はブルーコアを活用
なんかアイアンマンみたい♪
…確かに。原料ミサイルだし、ブルーコアはリアクターみたいだな。
ブルーコアをはめ込んで、無事に起動したトビー型ロボット。
テンマ博士パパは大喜びで家に連れて帰り、ブルーコアを提供したお茶の水博士も奇跡が起きたと呟きます。
しかしこれはあくまでロボット。決してトビーが生き返ったわけではありません。
- 当の本人トビーは身体の変化に気付くものの、こりゃスゲーと大はしゃぎ
- 足のジェット噴射で自在に空を飛び回り、岩をも砕いて凄さを実感
- 一方テンマ博士パパは、トビーに似て非なるものとして違和感が
- 嫌でも愛息子に死を痛感することになり、トビー型ロボットを捨てることに
えぇー!!捨てるとか、酷くない!?
…うん。まぁ、この世界ではロボットはあくまで使い捨ての便利グッズに過ぎんから。
自分が開発し、自分が作った物。
テンマ博士パパにしてみれば、ロボットはただのモノでしかありません。
飽きたら捨てる、新しいのが出たら捨てる。そんな世の中だからこそ、愛息子ではなくただのソックリロボットに愛情を抱くことが出来ませんでした。
- お前の居場所はここではないし、父でもないと冷たく追い出した
- 行くあてがないトビーは、ビルの谷間でちょっと悲嘆
- …と、そこになにやら追跡捕獲ロボットが
やっぱり思い直してパパが捜索願い出した?
…いや。ストーン現大統領命令だ。
大統領再選のため、支持率うなぎ登らせるため。
新兵器ピースメーカーに固執するストーン現大統領が、「テンマの息子をとっ捕まえて、ブルーコアを奪還せよ」という大統領令を発動したんです。
- なんで追われるのか分からないトビーは、ジェット噴射で逃避行
- 何が何でもとっ捕まえたい大統領は、容赦なくミサイル発射命令
- 強力ミサイルで吹っ飛ばされ、トビーは天空都市メトロシティから地上に落下
そういや地上ってどうなってるの?
…用済みロボットの墓場だな。
じゃんじゃん作ってはじゃんじゃん捨てる。
メトロシティで用済みになったロボットたちは「安らかにサビてね♪うふふ」と地上に廃棄され、山積みに。
そして今やトビーも生身の人間・著名なテンマ博士の愛息子ですらなく、ただ捨てられた少年型ロボットに過ぎません。
もはやメトロシティに自分の居場所がないトビーは、他のロボットのようにこの地上で居場所を見つける他ありませんでした。
まだ動けるロボットもいるじゃん…って、え?人間もいるよ!?
…メトロシティに住めない貧困層とか、捨てられた子供たちも地上に住んでたんだよ。
上から降ってくるゴミやロボットでたくましく生きている地上の人々。
トビーはここで孤児ばかりのグループの子供たちと知り合いになり、『アトム』というニックネームで過ごすことになりました。
しかしこの世にたった一つしか存在しないブルーコアを持つ身の彼を、ストーン現大統領が放ってはおきません。
メトロシティに連れ戻され、ブルーコアもテンマ博士パパの手で取り出されることに。
たかがロボット、されど息子。
悲しみと後悔と葛藤の末、テンマ博士パパはブルーコアを再びトビー…『アトム』に埋め込みます。
これに激怒したストーン現大統領は、また懲りずにレッドコアを活用して大暴走。
もう誰にも手がつけられなくなったレッドコア搭載のロボットをどうにかすべく、感情を持った心優しき『アトム』が立ち向かうことになり …というのが大まかなあらすじになります。
【ATOM】主な登場人物
世の中が便利になっていくにつれ、生じる格差や差別。
その対象を人と人ではなく、人とロボットという形に変え、大切なものは何かというメッセージを伝えてくれる物語が手塚治虫氏の《鉄腕アトム》です。
その根底にある意図をしっかりと汲み取り、心を通わせていく登場人物たちを吹き替え声優さんとともにご紹介いたしましょう。
トビーはロボット学の権威・テンマ博士の一人息子であり、事故でロボット少年『アトム』になる主人公。
原作漫画のアトムのような勝負パンツ&真っ赤なブーツ姿ではなく、Tシャツ&ジーンズ姿が基本です。
ときおり見せるニヒルな笑顔がたまらなく可愛いくて、今作のアトムもとっても魅力的。
そんなトビー/アトムの声を、映画《チャーリーとチョコレート工場》でチャーリー役を演じていたフレディ・ハイモアが担当。
日本語吹き替え版では上戸彩さんが担当しています。
ビル・テンマは、科学省長官でもありトビーの父親でもある天才科学者。
ロボットによる便利社会の生みの親でもありますが、ロボットをただのアイテムとして卑下している一面も。
亡くなったトビーの代わりに少年型ロボットを作ったけれど、その差別的思想が拭えずにもがき苦しんでします。
そんなテンマ博士の声をニコラス・ケイジが担当。悲しみや苦しみなど心境の変化を巧みに声で演じきっているかと。
日本語吹き替え版では役所広司さんが担当しています。
お茶の水博士は、新エネルギー『ブルーコア・レッドコア』を発見・開発した科学者。原作と同じくデカっ鼻の心優しきお方です。
ただ原作ほどの出番はなく、『アトム』となったトビーをサポートすることは特にありません。
ちょい役のお茶の水博士の声は、映画《パイレーツ・オブ・カリビアン》シリーズでデイヴィ・ジョーンズ役のビル・ナイが担当。
日本語吹き替え版では、アニメ《幽☆遊☆白書》のナレーションの声の人・西村知道さんが担当しています。
コーラは地上に住む孤児グループのリーダー的存在の少女。
実は天空都市メトロシティ出身で、育児ロボットにポイっと捨てられた過去があります。
同じ孤児仲間には両親がいないことになっていて、この秘密を知るのはアトムのみ。
しかしアトムが人間ではなくロボットだったということを後から知り、複雑な心境に。
仲間と思っていたのに打ち明けてくれなかった寂しさがあったようです。
そんな多感でちょっと頼もしさもあるコーラの声は、映画《アナと雪の女王》のアナ役・クリスティン・ベルが担当。
日本語吹き替え版は、あっちこっちで大活躍の声優・林原めぐみさんが担当しています。
ストーン大統領は、現メトロシティのトップ。
軍事面の強化が支持率アップに繋がると思っている大バカヤローです。
終いにはレッドコア搭載のピースメーカーと合体し、街を滅茶苦茶に破壊。もちろん再選なんぞされるはずがありません。
腹黒く野心家のストーン大統領の声は、名俳優ドナルド・サザーランドが担当。
日本語吹き替え版では、アニメ《北斗の拳》でアミバの声の人・土師孝也さんが担当しています。
…とこの他にテンマ家の猫背の使用人ロボット・オリン、地上で仲間になった子供たち、ガラクタ同然だけど心通わせていくボロロボットなどが登場。
あぁ、あとテンマ博士の助手の一人として手塚治虫氏も。トレードマークのベレー帽姿を見かけたら、それが手塚治虫氏です。
1950年代にこんなAIのようなSF物語を発想した手塚治虫先生のイマジネーション、ほんとハンパねぇでございます。
ただ、ハリウッドリメイク版ということで、原作の《鉄腕アトム》そのまんまというわけではありません。
…が、鉄腕アトムの本質は活かされているし、これはこれで新たなアトムストーリーを楽しめる作品じゃないかなと思います。
【ATOM】まとめ
特徴的なトンガリヘア、十万馬力で空も飛ぶ。
あの《鉄腕アトム》の新たなアニメ映画【ATOM】は、字幕版でも吹き替え版でも、どてらでも充分楽しめるアニメ作品です。
- ロボットが人間の生活を豊かにする空中都市メトロシティが舞台
- ロボットたちの生みの親・テンマ博士の愛息子トビーが主人公
- 事故で亡くなり、少年型ロボット『アトム』として新たな息吹
- ロボットに対する偏見・差別を通して、心の繋がりを大切にしていく物語
手塚治虫氏は、これまで多くのマンガ家やアニメにも大きな影響を与えてきた偉人です。
《鉄腕アトム》もそのひとつ。
例えばミサイル部品から『アトム』が生まれたとか、足の裏からジェット噴射で空を飛ぶとか、胸に埋め込まれた動力源とか、アメコミのアイアンマンによく似ています。
アイアンマンがどんなお話なのか、大まかなあらすじはこちら↓
【アイアンマン】スーツの始まりはここから。マーベルのアメコミヒーロー
よく似ている感じもしますが、別にアイアンマンをパクったわけではありません。
アイアンマンのアメコミ刊行は1968年から。今作の原作鉄腕アトムは1952年からなので、やっぱりロボットやヒーローキャラの先駆けを作ったのは、手塚治虫氏なんだなぁとしみじみ思いました。
1989年に、多くの人々から惜しまれつつ60歳でこの世を去った手塚治虫氏。
そんな偉大なマンガ家の生誕80周年を記念して制作されたアニメ映画【ATOM】は、原作を尊重し、手塚治虫氏に敬意を評し、《鉄腕アトム》愛も感じたハリウッドリメイク作品 でした。
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