映画【マレフィセント】は、アンジェリーナ・ジョリーが恐ろしくも切ない魔女を演じているディズニー実写映画です。
これまで慣れ親しまれた「眠れる森の美女」とは全く別の視点から捉えたダークなファンタジー。
でも、童話「眠れる森の美女」は、もっとダークでおどろおどろしさ満載のお話もあるんです。
ということで「REONさんのホントは怖いヨーロッパの童話」をお届けします。
グリム童話より以前に書かれたペロー童話
グリム童話は、1812年にヤーコブとヴィルヘルムというグリム兄弟が記した童話集。
その中にある「いばら姫」に登場する魔女がマレフィセントです。
昔から語り継がれる民話が元になっているので、グリム兄弟以前にも民話を集めて物語を書いていた人物がいます。
それがフランスの詩人シャルル・ペローです。
グリム童話は有名だけど、ペロー童話ってあんまり聞いたことないね。
ペロー童話は子供にも分かりやすい童話というより、読み物的な要素が濃いからね。
伝承されてきた民話の集大成であることはグリム童話もペロー童話もおなじなんですけどね。
ペローはさらに民話を脚色して、語り継がれてきたお話はどこいった、というくらい当時の風習なんかも取り入れて1697年に童話集を発表しました。
じゃあ全然お話変わっちゃってるの?
悪い魔女が姫に呪いをかけて100年の眠りについて、王子様のキスで目覚める、ってところまではほぼ同じだ。
あれ?じゃぁ別にペロー童話もグリム童話と変わりないんだ、と思うなかれ。
ペロー童話には、なんとその後の眠り姫の壮絶な物語が描かれているんです。
ペロー童話・眠り姫のその後が…エグい
え、ハッピーエンドな童話の続編?
そう。続きのお話があるんだが…心して聞きたまえ。
一変した結婚生活
長い眠りから醒めた姫君は、救ってくれた王子様と結婚して妃となり、2人の子宝に恵まれます。
一人目はオーロールというチビ姫様、二人目はジュールというチビ王子様です。
嫁ぎ先で幸せに暮らした眠り姫ですが、ある日この王国付近に人喰い鬼が現れたという噂がはびこります。
王子様はたくさんの兵士を引き連れて、人喰い鬼討伐の旅に出かけました。
しかし実は人喰い鬼は王子様の母君である王妃だったのです。
戦慄の嫁いびり
王子様が人喰い鬼討伐で留守になったのをいいことに、王妃さまは本性をあらわします。
なんと料理長にこんなことを言い放つのです。
チビ姫さま、喰われちゃったの!?
料理長が匿った。
可愛いチビ姫君を調理するなんて出来なかった料理長は、城の自室にチビ姫君を匿って、王妃には代わりに子羊を調理して出しました。
そうとは知らず、王妃はチビ姫料理と思って美味しくいただきご満悦。
柔らかく美味しかったチビ姫君(子羊ですけどね)。その味が忘れられない王妃は、次にまた料理長にこんなことをぬかします。
チビ王子様のことだって調理なんか出来ない料理長。チビ姫君に続いてチビ王子様も自室に匿います。
そして今度は子山羊を調理して王妃に召し上がっていただきました。
料理長のおかげで喰われずに済んだんだ。
でも母である眠り姫は、我が子が行方不明になって寝込んじゃったんだ。
美味しく孫をいただいて、ちょっとばかり目障りな嫁が寝込んだのを嬉しそうに高笑いする王妃さま。
究極の嫁いびりです。
さらについでだから…と料理長にこんなリクエストも出しました。
孫のみならず、嫁まで喰らう気満々とは。
料理長は眠り姫にことの顛末を話し、チビ姫さまとチビ王子さまは無事なこと、王妃が実は人喰い鬼で、王子の帰国まで自分の部屋に隠れていてほしいことを伝えます。
舌は誤魔化せても鼻は誤魔化せなかった
3人を匿った料理長。最後に眠り姫料理と称して雌鹿を調理して王妃に捧げます。
王妃は案外グルメじゃないのか、これまた嫁だと思って美味しくいただき大満足。
しかしある日お城の中で美味しそうな生肉の匂いを嗅ぎつけます。
神の舌は持ってないのに。
鼻は利くんだな。
料理長の部屋に隠れていた眠り姫親子は食人王妃に見つかってしまい、料理長ともども王妃に捕まってしまいます。
怒り狂った王妃は召使いに言付けて、大量のマムシや毒ヘビを投入した大釜を準備させます。
さらに蛇が良く暴れるようにムカデも追加、という特性風呂の完成です。
あとは自分を欺いた料理長や眠り姫親子をその中に放り込んで処刑するだけ…というまさにその時。
人喰い鬼退治に出掛けていた王子様のご帰還です。
おぅ…ナイスタイミング。
でもね、このあと最後がまた壮絶だよ。
母である王妃は玉座に踏ん反り返り、その前には大量のヘビで埋め尽くされた大釜が。
さらに脇には妃と我が子と…なぜか料理長まで縄で縛られて、一体何が起こってるの。
王子様は一瞬この状況にテンパりますが、王妃が人喰い鬼だったと悟ります。
息子が帰ってきたら適当に言い訳を考えていた王妃ですが、この状況は言い逃れ出来ぬと観念し、自ら大釜に飛び込んで自害します。
自分で用意させた特性ヘビ風呂に入っちゃったんだ。
マムシも毒ヘビもムカデも蠢いてるんだぜ。グロすぎる…。
こうして人喰い王妃の魔の手は去り、散々な結婚生活もようやく穏やかになったとさ。
めでたしめでたし。
…っていうのがペロー版の「眠れる森の美女」のお話です。
良く知る童話とたしかに全く異なります。呪いをかける魔女の存在がかすむほどダークなエンディングになってました。
大人が楽しめるホラーな童話
こんな感じで民話を大きく脚色したペロー童話ですが、児童文学としても、また伝承をモチーフにした創作文学としても高い評価があります。
お話がけっこうエグいので、読み聞かせには不向きですけどね。
だからグリム童話の方が有名なのかもしれません。
ペロー童話は、ホラーな部分が楽しめる大人の童話といったところですかね。
「眠れる森の美女」の他にも、内容がエグいかもしれない大人ホラーな、こんな作品も収録されてます。
- 赤ずきん
- 青ひげ
- 仙女たち
- サンドリヨンまたは小さなガラスの靴
- とさか頭のリケ
- 親指小僧…など
ハッピーエンドなグリム童話と重複している民話もあるので、一度じっくりペローの作品集を読んでみたいなと思いました。
こんな怖い童話ではないディズニー実写映画【マレフィセント】の大まかなあらすじやキャストについてはこちらをどうぞ。
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