S・キングの小説『IT』は、文庫本にして4冊にも渡る長編ホラー作品。
1990年にはTV映画【IT】として制作され、その後2017年には【IT/”それ”が見えたら、終わり。】という長ったらしいタイトルの劇場映画としても制作されました。
同じ原作の映画が2つ。
果たして違いはどこにある?どっちが面白い?
ということで、「REONさんの二つの”それ”の違いを検証」をお届けします。
TV映画【IT】と劇場映画【IT/”それ”〜】の違いはココ
まず1番の大きな違いは、架空の殺人ピエロ・ペニーワイズの容姿が全然異なります。
- 1990年版では、カラフルなサーカスのピエロ風
- 2017年版では、シックな白を基調とした中世ヨーロッパ風
パッと見ていかにもピエロは1990年版なんだねー。
口調や表情、仕草も1990年版の方がユーモラスだよ。
ちなみにどっちのペニーワイズもオデコがハゲ散らかってますが、そんなにお歳がいってない俳優さんがキャスティングされていました。
1990年版のペニーワイズ役 ティム・カリー氏
引用 : wikipedia commons
1990年版のペニーワイズに扮したのは、当時34歳のティム・カリー氏。
イギリス出身の俳優さんで、他にもこんな作品に出演しております↓
- 「ロッキー・ホラー・ショウ(1975)」
- 「アニー(1982)」
- 「レッド・オクトーバーを追え(1990)」
- 「ホーム・アローン2(1992)」
- 「チャーリーズ・エンジェル(2000)」など
2017年版のペニーワイズ役 ビル・スカルスガルド氏
引用 : 映画.com
2017年版のペニーワイズに扮したのは、当時25歳のビル・スカルスガルド氏
2000年にデビューした若手俳優さんで、こんな作品で頑張っています↓
- 「ホワイト・ウォーター・フューリー(2000)」
- 「シンプル・シモン(2010)」
- 「アトミック・フロント(2017)」
- 「デッドプール2(2018)」など
そういや2017年の【IT/”それ”が見えたら、終わり。】には続編があるんだよね?
あぁ。2019年11月1日公開の【IT/THE END “それ”が見えたら、終わり。】だな。
続編では、引き続きビル・スカルスガルドがペニーワイズ続投です。
若さと勢いのある分、2017年版ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)のほうが、動きにキレと怖さがありますね。
子役にも違いがたくさん
制作年が違うので当たり前っちゃ当たり前ですが、ルーザーズクラブの子役俳優さんも異なります。
さらに子どもたちのキャラに違いが。
①黄色いレインコートの男の子・ジョージー
【1990年版】
- 折り紙の船を追う途中、看板はくぐって避ける冷静さがある
- 排水溝でペニーワイズに襲われる描写はなく、悲鳴でフェードアウト
【2017年版】
- 折り紙の船に夢中になり過ぎて、看板にオデコ強打
- 排水溝でペニーワイズにまず右腕を喰いちぎられる
- さらに排水溝に引きずり込まれる描写あり
②ルーザーズクラブの紅一点・ベヴァリー
【1990年版】
- 三つ編みロングがキュートな大人しめの性格
- さらに父親からの虐待は殴られるという暴力のみ
- 洗面所で見る”それ”も、赤い風船が割れて血が飛び散る程度
【2017年版】
- タバコも吸うわ態度は反抗的だわとちょっと不良少女系
- 髪型も、序盤こそロングヘアだが途中からベリーショートヘア
- さらに父親から受けているのは性的虐待
- 洗面所で見る”それ”は、そりゃもう半端なく大量の血というスプラッター状態
③ぽっちゃり体型・ベン
【1990年版】
- ベトナム戦争だかで父親が戦死した設定
- ゆえにベンが見る”それ”は、愛しき父親の姿を模したペニーワイズになっている
- ベヴァリーにポエムを贈るが、単なるポエマー
- あと、やっぱりポッチャリなだけあってお菓子好き
【2017年版】
- 本好きで博識なので、ベヴァリーに詩を贈る
- さらには歴史オタクだから、デリーの歴史から糸口を見つける
- 見えてしまう”それ”は、本から知り得た内容に基づいている
④喘息持ちの病弱少年・エディ
【1990年版】
- お金持ちのお坊っちゃま
- ゆえに母親が超過保護
- さらに対ペニーワイズ必殺アイテム「ママの銀のイヤリング」の提供主
【2017年版】
- 特にお金持ちではなく、一般家庭
- しかもどう見ても潔癖症ではなさげな母親
- …だが、相当な過干渉
⑤よくしゃべるリッチー
【1990年版】
- 口も達者だが手も達者
- 映画館の2階席から、いじめっ子ヘンリーにコーラぶちまける気の強さ
【2017年版】
- 特に負け犬感はない
- ただしルーザーズの中で若干パシリに近く、ベヴァリー宅ではお外で見張り番
⑥ルーザーズクラブ最後の一員・マイク
【1990年版】
- ベンのあとに転校してきた優等生
- デリーの歴史や、周期的に起こる街の事件を探り当てたのはマイク
【2017年版】
- 転校生でも正式な学生でもない
- 対ペニーワイズ必殺アイテムとして、屠殺場で使ってる銃を用意した勇者
⑦いじめっ子・ヘンリー
【1990年版】
- いじめの対象・ルーザーズクラブの面々とはほぼ同い年
- いじめの内容もちょっかい出したり追い回したりといったところ
【2017年版】
- ルーザーズクラブの面々よりも5〜6歳年上
- 車でブイブイ追い回し、ナイフで斬りつける残忍な性格
- 父親が警官ということもあり、銃も扱う気でいた
- 実は父親が怖すぎてビビりな一面が
- ただし終盤で父親を殺害という狂犬
…と、こんな感じで役柄にいろいろな違いがあります。
でもどっちの子役さんたちも、むっちゃ演技派だよねー。
それぞれどんな性格の子なのか、区別しやすくて分かりやすいよね。
時代の違いで演出の違いも
「IT」の最初の映像化は1990年。
そして物語にちなんで27年後にリメイクされたのが2017年版。
そんなオツな裏話もあるんですが、27年も経てば世情も変わる、演出もちょいちょい違いがあったりします。
演出の違い・その①
行方不明になったジョージーを偲んだり、デリーの過去の事件を探る際の手段に違いが。
- 1990年版では、写真アルバムや新聞記事のスクラップブックが用いられている
- 2017年版では、小さなネガを映し出すスライド映写機が用いられている
ここら辺はちょっと先端な感じがします。
が、田舎町だからなのか、特に子どもたちも大人も携帯電話・スマホ・パソコンを使うことは無いようです。
演出の違い・その②
恐怖の元凶・ペニーワイズのアジトにも違いがあります。
- 1990年版では、荒れ地にある廃墟じみた管理棟が入り口
- 2017年版では、街外れの廃墟の井戸小屋が入り口
結局どちらも行き着く先は下水道なんですけどね。
演出の違い・その③
行方不明になった子どもたちの姿については、大きく演出が異なります。
- 1990年版では、暗い下水道の奥地でグルグル巻き
- 2017年版では、光が差し込む下水道奥で宙に浮いている
ここら辺は、物語の流れに即して「現実的な描写」と「幻想的な描写」という感じです。
演出の違い・その④
ルーザーズクラブの7人で、一致団結してペニーワイズに挑むんですが、その際の攻撃方法にも違いが。
- 1990年版では、エディのママの純銀イヤリングをアイテムにパチンコ
- 2017年版では、殺傷能力のあるマイク持参の屠殺用の銃
対ペニーワイズ戦での決戦は、時代感の違いが大きいですかね。
元のストーリーはおんなじなのに。
時代に合わせた違いとかがけっこうあるんだね。
もちろん映像化するにあたり、脚色されているので原作とも違いが。
作り込まれた小説版もオススメです↓
とっつきやすさも違う
そもそもS・キングの原作小説『IT』はかなりの大作。
TV映画【IT】も劇場映画【IT/”それ”〜】も、原作をギュギュっと映像化しているのでどちらも尺が長いです。
①鑑賞時間が違う
- 1990年版は187分のロング作品
- 2017年版は137分とちょい長め
②描かれる内容も違う
- 1990年版はS・キング原作小説をざっくり全部映像化
- 2017年版は幼少期のみ。大人時代の最終決着は続編としてぶった切り
ストーリー全体を一気に鑑賞するなら1990年版、世界観をより詳しく鑑賞するなら2017年版 といったところでしょうか。
まぁ、しっかり世界観に浸るなら、断然S・キングの原作なんでしょうけど。
原作小説は何からインスピレーションを得て描かれたのか、という雑学エピソードもまとめてあります↓
1990年版と2017年版、面白いのはどっち?
引用Amazon
さて、けっこう沢山の違いがあった【IT】の2作品。
こうなるとやはり気になるのが『どっちが怖い?どっちが面白い?』というところですよね。
どちらもガーっと一気に鑑賞した私の結論はこちら↓
怖さも面白さもあるのは、2017年版【IT/”それ”が見えたら、終わり。】
個人的には洗練された全体の雰囲気と、そこはかとなく怖さも充分味わえる2017年版が好きですかね。
とはいえ、どちらの映画【IT】にも、それぞれの良さがあります。
《1990年版の良さはココ》
- 子ども時代は回想として違和感なく盛り込んである
- 怖すぎないので、ホラー映画がちょっぴり苦手でも観れる(…多分)
- 子どもたちの冒険と友情の青春物語な感じが強い
《2017年版の良さはココ》
- 冒頭からジョージーの腕が喰いちぎられるというスプラッターな演出
- おどけるだけではないペニーワイズの動きの気色悪さ
- とにかくペニーがビックリ登場するし怖い
- 子ども時代にだけ焦点をあてているので、より奥が深い
- ビルの一途な弟愛や、ルーザーズクラブの面々の心の葛藤がよくわかる
- 映像・BGM音楽・ストーリーなど全体の流れにムダがない
- 続編で完結・大人キャストの後編も怖さ充分
2017年【IT/”それ”が見えたら、終わり。】予告動画はこちら↓
続編【IT / The End “それ”が見えたら、終わり。】
ということで、2つを見比べて検証した結果をお届けしました。
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