どうしようもない救いのなさと、余韻が残る奥深さ。
よくまぁここまで残酷なストーリーを思い付くもんだ…というのが韓国映画の真骨頂です。
…ということで、執念と心の淀みが生み出した凄惨な復讐を描いたおすすめ韓国映画15選をお届けします。
復讐者に憐れみを(2002)
【復讐者に憐れみを】は、パク・チャヌク監督が手がけた復讐三部作の第1弾。
愚かで残酷な復讐がメビウスの輪のように全て繋がり、復讐が連鎖してしまう物語です。
- 聴覚障害を患う青年が主人公
- 病気の姉のために臓器売買に手を出し、全財産も臓器も失った
- お金欲しさに子供誘拐事件に加担するも、子供が事故死
- さらに青年の重荷となっていることを悔いて姉が自死
- 青年は闇売買組織に復讐し、子を失った父親は青年に復讐
- 子供の父親は父親で、リストラ問題で社員から復讐されてしまう
誰かの行いが誰かの復讐の的になり、全編復讐だらけ。
決定的なひとつの悪に対する復讐劇ではなく、悪人と善人の境界線が曖昧なところが大きな見どころになっています。
復讐心を持った全員が哀れな結末を迎える作品 です。
映画【復讐者に憐れみを】
監督:パク・チャヌク
キャスト:ソン・ガンホ、シン・ハギュン、ぺ・ドゥナ他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません(2021年7月現在)
オールドボーイ(2003)
【オールドボーイ】は、パク・チャヌク監督が手がけた復讐3部作の第2弾。
突然拉致され、15年間も監禁部屋に閉じ込められた男の身に起こる悲劇の物語です。
- ペラペラとよく喋るやかましいオッサンが主人公
- 雨の晩、何者かに拐われ完全引きこもり生活をさせられた
- 誰が何のためにそんなことを…が謎のまま、15年後に解放
- 寡黙になったオッサンが復讐を誓うも、それはある人物からオッサンへの復讐だった
原作:土屋ガロン氏、作画:嶺岸信明氏による《ルーズ戦記 オールドボーイ》という日本漫画を映画化。
口は災いの元。人生を復讐心に乗っ取られた2人の男の病んだ姿が重たい作品 です。
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親切なクムジャさん(2005)
【親切なクムジャさん】は、パク・チャヌク監督の復讐三部作の第3弾。
無実の罪を着せられ13年間服役し、幸せを奪われたが故に復讐に燃える女性の物語です。
- 我が子を盾に脅され、罪を被らざるを得なかったクムジャさんが主人公
- 収監先では誰に対しても優しく接し、付いたアダ名が「親切なクムジャさん」
- 「親切」は、出所後の復讐に備え、囚人仲間を協力者にするための布石
- さらに当時の捜査関係者をも抱き込み、真犯人を追い詰め取っ捕まえた
真犯人にはクムジャさんに着せた罪以外にも、出るわ出るわのてんこ盛りな余罪が。
真犯人の胸くそ悪さ・犠牲になる幼児らの痛々しさ・子を想う親の怒りの恐ろしさに身震いさせられる作品 です。
黄泉がえる復讐(2017)
【黄泉がえる復讐】は、殺人事件の被害者が蘇り、犯人を殺して消えてしまう物語。
ドロドロの復讐劇…というより、死者が生者を道連れにする系のファンタジックホラーです。
- 母親が強盗殺人で命を落とし、真犯人を探し中の検事が主人公
- 巷では「犠牲復活者」と呼ばれる死者が蘇り、犯人に復讐する出来事が
- 検事の母親も犯人に復讐するために蘇るも、息子である検事が襲われそうに
「犠牲復活者」の特徴から、実は検事が母親殺しの真犯人では?と疑われてしまいます。
しかしその裏には、母親の間違った深い愛情が隠されており、ラストはしんみりとした切なさが。
「犠牲復活者」という発想と、こんがらがった設定がなかなか斬新な作品 です。
殺されたミンジュ(2014)
【殺されたミンジュ】は、女子高生ミンジュ殺害に関与した集団暴行グループに、武装組織がリベンジしていく物語。
鬼才キム・ギドク監督らしい、独特すぎる世界観がぶっ込まれた1本です。
- ミンジュという名の女子高生が、集団暴行の末にむごたらしく殺された
- たいしたニュースにもならないまま、あっという間に事件は風化
- ところが1年後、集団暴行グループ7人が次々拷問されるリベンジ事件が
- リベンジ事件は、ミンジュを想う人物の私怨による復讐ではない
命令された暴力と行き場のない暴力が、ミンジュ殺害事件を軸にひとつに繋がっていきます。
被害者がミンジュという名前なのは、民主(ミンジュ)とかけた隠語。
民主主義の闇を絡め、「理不尽さに対する復讐」を哲学っぽくまとめ上げた作品 です。
映画【殺されたミンジュ】
監督:キム・ギドク
キャスト:マ・ドンソク、イ・イギョン、キム・ヨンウン他
悪魔を見た(2010)
【悪魔を見た】は、婚約者を殺された捜査官が、狂人な犯人以上に狂気に満たされ突き抜けた復讐を果たす物語。
人は愛する者のため、どこまで残酷になれるのか。
そしてどこまでいけば復讐に満足し、やり遂げたと思うのか。
イ・ビョンホン氏とチェ・ミンシク氏。韓国二大トップスターの凄まじい傷めつけ合いにゾワっとします。
- 婚約者を殺された国家情報院捜査官が主人公
- 犯人を確保するも、体内にマイクロチップを埋め込んであえて泳がせた
- サイコな犯人が再び犯行に及べば、取っ捕まえて制裁
- …また泳がせ、犯行をしでかしたら制裁の繰り返し
殺人の欲望を抑えきれない犯人と、泳がせたことで新たな犠牲者になる者の心情を無視して復讐を続ける捜査官。
サディストがサディストを生み、悪魔が2人に。
互いの生き地獄を決して譲らず、負の感情が凄まじい作品 です。
名もなき復讐(2015)
【名もなき復讐】は、韓国代表の射撃の名手として期待されていた女性が、レイプリベンジを成し遂げる物語。
ドン底まで突き落とされ、自分で自分を守るために逆襲していきます。
- 家族で交通事故に遭い、両親を失い言語障害になってしまった女性が主人公
- 射撃代表の未来は閉ざされ、生きる希望を失った
- 強姦の被害にも遭い、助けを求めた警察では狂言扱いされた
- さらに腐った男どもの欲情のはけ口にされ、タガが外れて殺しまくることにした
夢を追いかけ頑張ってきた射撃の腕前が、負の連鎖から抜け出す手段に。
彼女と同じ境遇の妹がいる女性警官だけが、彼女を救おうとしてくれます。
救われない想いは救わないことで報われる…という復讐の結末に皮肉が込められた作品 です。
映画【名もなき復讐】
監督:アン・ヨンフン
キャスト:シン・ヒョンビン、ユン・ソイ、アン・セハ他
※現在、動画配信サービスでの取り扱いがありません(2020年2月現在)
少女は悪魔を待ちわびて(2017)
【少女は悪魔を待ちわびて】は、刑事だった父親を殺した犯人の刑期が終わるまで、復讐の機会を待ち続けた少女の物語。
まだあどけなさが残る少女と、煮えたぎる悪意とのギャップに心が痛くなります。
- 刑事だった父親を殺された少女が主人公
- 犯人はその他7人を惨殺した連続殺人鬼。だが証拠不十分で立件は1件のみ
- 当時5歳だった少女は、ひたすら資料を集めて復讐策を練る人生を歩むことに
- 15年後、犯人が出所。少女の全人生をかけた新たな連続殺人事件が始まる
少女の復讐は思わぬ形で進行し、さらに謎の第三者も出現。
ミステリアスかつ緊迫した駆け引きが続く展開に。
醜さを美しい映像に閉じ込め、人の命の儚さと執念の深さに切なくなる作品 です。
母なる復讐(2012)
【母なる復讐】は、同級生に強姦され、自殺した娘のために復讐を決心した母親の物語。
未成年者の性犯罪率が高く、実際に被害に遭う少女らが多い現実があり、韓国で起きた闇がベースになっています。
- 夫と離婚し、娘と2人で新たな幸せをスタートさせた母親が主人公
- 娘は転校先でチョイ悪イケメンに恋するも、ソイツと仲間たちから強姦された
- 事件として訴えたが、彼らの親は金で解決しようとし、警察はやっつけ仕事で捜査
- 裁判沙汰に持ち込んでも少年法が彼らを守り、少年らは無罪に
- 娘は陵辱されたことを苦に自殺。母親は娘が受けた痛みの全てを知ることに
- 1人ずつ計画的に死の制裁を下していった
ノリと勢いで性欲を満たそうとする浅はかさ。
そしてそんな彼らでも守られてしまう少年法の壁と刑罰の軽さへの無念が招いた復讐劇 です。
映画【母なる復讐】
監督:キム・ヨンハン
キャスト:ユソン、ナム・ボラ、ユ・オソン他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません(2020年2月現在)
嘆きのピエタ(2012)
【嘆きのピエタ】は、天涯孤独な借金取りの青年と、彼の母親を名乗る女性との残酷な日々の物語。
第69回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた、キム・ギドク監督作品です。
- 青年は、極悪非道の取り立ても平気で行うろくでなし
- そんな彼の元に、突然母親を名乗る女性が
- 母の無償の愛を知り、青年は大切な人を失う怖さを知ることに
- これまでの行いを改心するも、全ては驚きの真相を秘めた復讐だった
もうちょい詳しいあらすじについてはこちらもどうぞ↓
恨みの深さと心の闇がたっぷり込められ、先が読めそうで読みきれないどんでん返しなストーリー。
復讐によって人の心の痛みを思い知らされ、人に与え続けた身体の痛みを自らの身をもって贖罪していく作品 です。
ビーデビル(2010)
【ビーデビル】は、閉鎖的すぎる小さな島で、血まみれの大虐殺を達成する女性の物語。
散々な目に遭わされ絶望感が沸騰し、キレたら怖いよ、なスプラッター復讐劇です。
- 10人ほどの小さな集落出身の幼馴染み女子2人が主人公
- ひとりはソウルでキャリアウーマンに、もうひとりは島内に嫁いで子を持つ母に
- …ただ、嫁は全住民からの暴言・暴行・性的虐待と毎日が生き地獄
- 子供のためにもソウル女子を頼りたかったが、めんどくさいと断られた
- そんなある日、母を庇おうと虐待に巻き込まれ、子供が命を落としてしまった
島の誰もが虐待を傍観。久々に里帰りしたソウル女子さえも傍観者となって一切ノータッチ。
この生き地獄から逃れる希望も失い、自分の身よりも大切な我が子を失い、ミナゴロシの復讐が始まります。
虐待シーンも酷ければ、惨殺無双もグロすぎる過激な作品です。
映画【ビーデビル】
監督:チャン・チョルス
キャスト:ソ・ヨンヒ、チ・ソンウォン、パク・チョンハク他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません(2021年7月現在)
鬼はさまよう(2015)
【鬼はさまよう】は、三者三様の想いが交錯する物語。
殺しに快楽を求める殺人鬼・妻を殺され恨みを抱く男・二つの悪意を追う刑事の追撃戦が始まります。
- ソウルで女性ばかりを狙った連続猟奇殺人事件が発生
- 事件の担当になった刑事が、たまたま車両事故で殺人犯を検挙
- …とそこへ義弟から嫁(刑事の妹)と連絡がつかないという知らせが
- 実は妹が犠牲者のひとりであり、義弟が復讐の鬼と化した
兄は刑事として殺人鬼を追い、義弟は復讐鬼として殺人鬼を追うことに。
罪悪感のなさと耐えきれない理不尽さ、感情の痛みがストレートに伝わってくる辛く凶悪な作品 です。
アウトロー 哀しき復讐(2010)
【アウトロー 哀しき復讐】は、妻子を殺された元刑事が、犯人と事件に関わった人々に復讐していく物語。
目を背けたくなる凄惨なシーンが多く、ほぼスリラーな展開です。
- かつて拉致監禁・レイプ被害に遭った女性を支え、夫婦となった刑事が主人公
- 過去を乗り越え、幸せになろうとするも妻と子供が殺害されてしまった
- 証拠不十分・アメリカ国籍だったこともあり、犯人はあっさり釈放
- 刑事は鉄仮面をかぶり、己の正義感を貫いた復讐の鉄槌を下していく
法の目をかいくぐった悪事と、矛盾した不条理な法を貫く司法。
刑事の人一倍強い正義感のベクトルが、間違った方向に進んで私刑を正義とはき違えていきます。
冷徹に計算し尽くされた、周到な復讐劇に驚愕する作品 です。
映画【アウトロー 哀しき復讐】
監督:キム・チョルソン
キャスト:カム・ウソン、チャン・シニョン、キム・ミンジュ他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません(2021年7月現在)
血の贖罪(2012)
【血の贖罪】は、高校生時代に集団レイプした被害者を愛してしまい、彼女への罪滅ぼしも兼ねて復讐を始める物語。
性犯罪被害者ではなく、元加害者の視点から捉えた変化球の復讐劇です。
- 高校時代パシリだった青年は、友人に唆されてひとりの女子を集団で輪姦
- 特に刑罰を受けることなく、ごく普通の生活を送って大人に
- 事件から10年後、教会で出逢った女性があの時の被害者と判明
- どれほど辛く苦しい人生を送ったかを知り、彼女のために復讐することに
残虐なシーンは多くなく、出演者に至っては美男美女でもなく。
いかにもな復讐劇の設定でもなく、派手さもなく。
ナイナイ尽くしですが、それがかえって真実味を帯びてリアルなお話しに見えてきます。
友情・罪悪感・愛情・嫌悪。最後は贖罪で幕を閉じ、自己満足な復讐の結末を迎えることに。
淀んだ空気が絶えず流れ、被害者側と加害者側の心情が丁寧に映し出された作品 です。
映画【血の贖罪】
監督:イ・ドング
キャスト:オム・ヨヌ、ヤン・ヨンジャ、ホン・ジョンホ他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません(2021年7月現在)
さまよう刃(2014)
【さまよう刃】は、中学生の娘を殺された父親が殺人犯になってしまう復讐劇。
東野圭吾さんの小説が原作で、寺尾聰さん主演《さまよう刃(2009)》のリメイクです。
韓国ではこれが実話に基づく出来事という認識で制作したようで、韓国性犯罪の闇の深さにずーーん…とします。
- 男手一つで娘を育てている父親が主人公
- ある晩娘が誘拐され、強姦され、殺害され、遺体も公衆にさらされた
- 父親は怒りよりも絶望よりも、守れなかった無力な自分を責め悔いた
- 警察は似たような性犯罪絡みの殺人事件の多さから、適当に捜査
- やきもきした父親は自分で犯人を見つけ、葬ることに
父親が自分らを探しているのを知り、挑発してきた犯人はなんと少年法で守られている少年ら。
「子供のしたこと」では済まされない命を弄ぶ行為には、胸くそ悪くなりまくります。
罪を犯した少年らは、本当に守られるべき存在なのか。
重いテーマを真正面から、感情たっぷりに描いた作品 です。
映画【さまよう刃】
監督:イ・ジェンホ
キャスト:チョン・ジェヨン、イ・ソンミン、ソ・ジュニョン他
…ということで、韓国映画の中から執念と業の深さが恐ろしい復讐劇15選をお届けしました。
理不尽な無念を晴らしても、報われることのない心の虚しさと悲しさ。
救いのない結末が重くのしかかる、後味が悪すぎる映画探しのお役に立てれば、恐悦至極にございます。
その他の韓国映画も、ジャンル分けしてご紹介しております。あわせてどうぞ↓
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