観終わったあと、ズシンと心に深く残るノワールさ。
今や映画ジャンルのひとつとしてすっかり定着した韓国映画の中には、実際に起こった事件をモチーフにした作品が数多くあります。
…ということで、ベースになった事件のあらましとともに実話ベースのおすすめ映画10選をお届けします。
チェイサー(2008)
主人公は、デリヘルの店長となった元刑事。
自分の店の女の子が2人ほどバックれたことがキッカケとなり、猟奇連続殺人犯にたどり着く刑事ドラマです。
シリアルキラーの陰の力がすざまじく、確実に嫌な気分になります。
心が参ってるときに観るとますます参る、そんじょそこらのホラーより怖いったらありゃしない作品。
映画【チェイサー】のベースとなった事件
資産家の老夫婦がハンマーで殺害されたのを皮切りに、金持ちやデリヘル嬢など計20人が被害者に。
韓国国内を震撼させたこの連続殺人犯は、普通に見えて全くもって異常なカニバリズム(人肉嗜食)のある男性でした。
2004年7月に逮捕され、犯人は2005年6月に死刑が確定しています。
殺人の追憶(2003)
華城市の用水路から女性の遺体が発見され、ベテランと若手、2人の刑事が乗り出すも捜査は難航。
ずさんで無能な捜査が続き、証拠捏造・自白強要の間にも次々と犠牲者が。
感情的になり過ぎた刑事を中心に、警察のダメっぷりや複雑な心境を見せつけられ、心がグワーッと重くなる作品。
映画【殺人の追憶】のベースとなった事件
韓国・京畿道華城市の農村地帯で、10代〜70代の女性ばかり10人が殺害され、遺棄されました。
大規模な捜査態勢・容疑者は2万人以上。
目撃証言もDNA証拠もありながら、犯人は特定できず2006年時効に。
警察捜査のずさんさが批判され、これまで未解決でしたが、最新のDNA鑑定により2019年にようやく犯人が特定された事件です。
殺人の告白(2012)
10人の女性が犠牲になった連続殺人事件。
ひとりの刑事が犯人を追い詰めるものの、顔に深い傷をつけられ結局は取り逃がしてしまいます。
それから17年。捜査は行き詰まり、時効を迎えたところで犯人を名乗る人物が。
連続殺人事件の犯行を記した告白本を出版し、一躍時の人になった自称犯人と刑事の攻防を描いたミステリーサスペンス作品。
実際の事件史からヒントを得て構想したフィクションです。
2017年《22年目の告白〜私が殺人犯です》として、藤原竜也さん主演でリメイクもされました。
映画【殺人の告白】のベースとなった事件
映画《殺人の追憶》と同じ事件がベースです。
10代〜70代と幅広い年代・女性ばかりの強姦殺人死体遺棄事件。
つい最近まで未解決のままでしたが、別件で収監中の男が犯人として33年ぶりに断定されました。
すでに時効を過ぎ、罪に問えないまま解決したことになります。
トガニ 幼き瞳の告発(2011)
主人公は、恩師の紹介で聴覚障害者学校に転任した教師。
懐っこいけれどどこか怯えた子供たちが、教師らから虐待されていることを知ります。
しかも女子児童に至っては、日常的に性的暴行が。
新任教師と子供たちが裁判で証言し、その実態を明らかにしていく人間ドラマ。
これが事実だと受け止めるには、あまりに重く苦しいストーリーです。
社会を変えることに繋がった異色の映像化作品。
映画【トガニ 幼き瞳の告発】のベースとなった事件
韓国・光州広域市にある聾学校で、校長を始めとした教職員らが女子生徒に性的虐待を繰り返していた事件。
施設内のみならず、地域ぐるみでその事実を隠蔽し、明るみになっても教師らの罪は軽く無罪になった者もいました。
その事実を韓国の作家コ・ジヨンさんが小説に。
そして、いち読者だった俳優コン・ユ氏が自ら出演したい、映画化したいと申し出たことがキッカケで映画に。
公開されるやいなや話題を呼び、事件の再検証・教師らの罪状も見直されました。
さらに13歳未満の児童や、障害を持つ女性に対する性的虐待を厳罰化する「トガニ法」が成立。
この映画が法改正にも繋がりました。
ハン・ゴンジュ 17歳の涙(2013)
主人公は、中学生の時に集団性暴行の被害に遭った少女。
両親からも地元民からも蔑まれ、転校して新たな学生生活を送ることに。
歌うことが好きな彼女は歌を通じて親友ができるものの、かつてSNSにアップされた事件のことが明るみになり、再び居場所を失ってしまいます。
性犯罪に巻き込まれた少女の心の痛みに胸が苦しくなる作品。
映画【ハン・ゴンジュ 17歳の涙】のベースとなった事件
韓国・慶尚南道密陽市で、3人の女学生が男子高校生や不良グループ41名から輪姦された事件です。
たまたま男子高校生に間違い電話をしたことがキッカケで、軽い好奇心から会うことに。
強姦の様子や個人情報がSNSで公開され、セカンド・レイプの被害にも遭いました。
加害者の男子高校生らは特に刑罰もなく、前科もつかず事件は収束。その後ごく普通の暮らしを続けます。
その一方で、被害にあった女子中学生らは両親からも世間からも批判を浴びることに。
性犯罪者に対する意識の低さが露呈する結果となりました。
あいつの声(2007)
人気TVキャスターの9歳の子供が誘拐され、身代金要求の電話が。
犯人は捜索の目をかいくぐって身代金受け渡しに成功します。
手掛かりは脅迫電話の声だけ。
事件発生から44日後に子供の遺体が発見され、父親であるキャスターが自ら事件の結末を報道する…というサスペンス作品。
犯人からの電話のセリフは、実際の脅迫電話での会話を再現というリアルが盛り込まれています。
映画【あいつの声】のベースとなった事件
韓国・ソウル市の高級住宅街で、TVキャスターの9歳になる1人息子が誘拐される事件が発生。
身代金を要求する男からの電話は60回にものぼり、身代金も男に奪われる結果に。
誘拐から44日後、男の子は遺体となって発見され、誘拐してすぐに殺されたことが判明します。
すでに手にかけた後に身代金を要求していた…というこの事件は未だ犯人逮捕に至っていません。
奴隷の島 消えた人々(2016)
天然塩の名産地で、知的障害者が違法労働させられているという情報が。
報道クルーが「塩の取材」を装って潜入するも、大量殺人事件に巻き込まれることに。
島ぐるみで知的障害者を奴隷として扱っていた秘密に便乗し、実は公にされていなかった連続殺人犯がこの島を隠れ蓑にしていた…という社会派ドラマ。
殺人事件事件が起こったというくだりは、サスペンス要素を盛り込むことで物語にオチをつけた流れになっています。
とはいえ、長年行われていた塩田での違法な奴隷労働の実態が垣間見れる作品。
映画【奴隷の島 消えた人々】のベースとなった事件
高級な天然塩の産地・韓国全羅南道新安郡で、雇用主だけでなく島の住民も黙認の重労働が発覚。
知的障害者やホームレスが、違法な斡旋業者によって塩田のある島に送り込まれ酷使されていました。
劣悪な環境で無賃金。島から脱走した者は酷いリンチを加えられることも。
天然塩の取材クルーによって、この違法行為と実態が明らかになりました。
イテウォン殺人事件(2009)
ソウル・イテウォンのバーガーショップで、韓国系アメリカ人の17歳の少年2人による刺殺事件が。
被疑者の少年2人は、お互い罪をなすりつけあい、裁判が難航。
初動捜査のずさんさや裁判の雑さから、最高刑に処されることなく犯人不在で事件解決…という法廷サスペンス作品。
チャン・グンソク氏が犯人の少年のひとりを演じて話題になり、実際の事件解決に繋がった作品です。
映画【イテウォン殺人事件】のベースとなった事件
韓国・ソウル梨泰院のハンバーガーショップのトイレで男子大学生がメッタ刺しにされ、殺された事件が発生。
この辺りは米軍駐屯地にも近く、現場に居合わせた韓国系アメリカ人の少年2人が逮捕されます。
自白もあり、あとはどちらの少年が凶器を振り回したかを裁判で特定するだけ。
ところが証拠不十分で実行犯か断定できず、犯人不在のまま裁判は終了。
映画が注目され再捜査が始まり、2016年に少年の片方へ懲役20年の刑が確定しました。
カエル少年失踪殺人事件(2011)
カエルを捕まえに行くと言い残し、突如5人の小学生が失踪。
特ダネスクープを狙うTVプロデューサー、犯人像を分析する教授、そして捜査する刑事らが事件解決に挑みます。
少年らの父親のひとりに疑惑の目が向けられるも、一向に子供たちの足取りは掴めず。
生きていて欲しい・どんな姿であっても帰ってきて欲しいと願い続けた両親の苦悩に切なさが込み上げます。
事件解決の糸口を掴み、真相に近付きたい人々が奔走するヒューマンドラマ作品です。
映画【カエル少年失踪殺人事件】のベースとなった事件
韓国・大邱広域市逹西で5人の小学生が行方不明になり、11年後の2002年に白骨化した状態で発見されました。
「カエルを捕まえに行く」という言葉が最期となったことから、カエル少年と呼ばれるように。
遭難や転落ではなく明らかに他殺の形跡が残されており、事件として捜査。
付近に軍の射撃訓練場があり、何らかの関与が疑われるも未解決のまま迷宮入りしています。
共謀者(2012)
足の不自由な妻と献身的に支える夫は、船で中国に新婚旅行へ。
夫が目を離した隙に妻がいなくなり、さらに乗客名簿からも名前が消え、臓器を抜き取られた遺体となって発見されます。
この事件の裏には臓器売買の闇組織が関わっており、さらに税関・病院・公安までグルの国際密売犯罪だった…というクライムサスペンス。
伏線が複雑に交差し、裏社会で動く大金と臓器・良心のあり方を訴える作品。
実際に臓器のない状態で発見された遺体からヒントを得て、監督が1年を費やし臓器売買の実態を調査したフィクションです。
映画【共謀者】
監督:キム・ホンソン
キャスト:イム・チャンジョン、チョン・ジュン他
※現在、動画配信サービスでの取り扱いがありません(2020年2月現在)
映画【共謀者】のベースとなった事件
夫と旅行中の韓国人女性が中国で拉致され、遺体となって発見されました。
しかも臓器がない状態で。
あとを絶たない臓器売買の犠牲になったエグい事件です。
…ということで、実際に起こった忌々しい事件をモチーフにした、闇が深そうな韓国映画10選をお届けしました。
どの作品もドキュメンタリーではなく、あくまでフィクションです。
それでも元が実際の事件ということで、重い作品揃い。気丈な心のときに鑑賞することをおすすめします。
ただの脚本ではない、背筋が凍る暗い韓国映画作品チョイスのお役に立てれば、恐悦至極にございます。
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