執筆作品がこれほど多く映像化された小説家は他にいないんじゃ…というほど著名なS・キング。
そんな彼が世に羽ばたくきっかけとなったのは、超能力を持つひとりの少女の物語から。
小説としても映像化作品としてもデビュー作となった《キャリー》を始め、S・キングの原点ともいえる超常現象・オカルト系4作品をお届けします。
キャリー(1976)
映画【キャリー】はS・キングの名が広く世に知れ渡ることになった記念すべきデビュー作。
一度はボツにしたものの、奥方のひとことで最後まで書き上げ出版に至った超能力少女モノの小説【キャリー】の映像化作品です。
映画【キャリー(1976)】のあらすじ
いつもいじめのターゲットになっていた女子高生キャリー。
そばかすだらけの地味な見た目は、同じ学校の女子からは「あの子ダッサ(笑)」と言われ、近所のクソガキどもには「うぇ〜…キャリーだww」と小馬鹿にされ続けています。
加えて家に帰れば「おー神よ!」の狂信的な母に支配され、キャリーはどこに居ても常に何かに怯える毎日。
そんなキャリーもまもなく卒業。高校生活最後に開催される学内パーティー・プロムが間近に迫ったある日、なんじゃコリャな出血惨事に見舞われます。
それは女性ならほぼ誰の身にも起こる身体の変化・初潮を迎えた証。
クラスメイトからは「マジ?今ごろ?ウケるー(笑)」ってな具合にからかわれ、初潮の知識がないキャリーはパニックを起こしてしまいます。
このことがきっかけとなり、超能力に目覚めたキャリー。実はモノを念力で動かす力・テレキネシスの持ち主でした。
勝手に動くモノの様子にビビった女子の中には、パニックになったキャリーに同情する子が現れます。
彼女はカップル参加が条件のプロムにキャリーを誘い、自分の彼氏にキャリーのパートナー役を頼んで、いじめの罪滅ぼしをすることに。
そうしてキャリーは狂信ママの反対を押し切って、密かに憧れていた華やかなプロムに参加することになりました。
しかしいつものようにキャリーをイジりたい女子どものいたずらで、とんでもない目に遭わされてしまいます。
気弱で内気なキャリーの中に潜んでいた恐ろしいパワーが炸裂し、いじめの報復に壮絶な惨殺を繰り広げるサイキックスリラー物語です。
加害者も被害者も…思春期の暴走は止まらない。映画【キャリー(1976)】↓
監督:ブライアン・デ・パルマ
キャスト:シシー・スペイセク、パイパー・ローリー、エイミー・アーヴィング他
映画【キャリー(1976)】の見どころ
この作品の見どころは、キャリーを演じたシシー・スペイセクの高い演技力。
私は子供の頃、たまたまやってた地上波放送で初めて映画【キャリー】を観たんですが、未だにその形相を思い出せるほど強烈な存在感を放っていました。
- 華奢で洒落っ気もなく、地味で内気で気弱なキャラクターなのに印象的
- 序盤ではキャリーママの狂信っぷりもかなり強烈
- いじめっ子女子どももけっこうな鬼畜キャラ
- 一番の見せ場・プロムで血を浴びるシーンは度肝を抜かれる
地味系女子が、我慢の限界を超えて念力で破壊と殺戮の限りを尽くすエンディングは、いま観てもゾワっときます。
そしていまだから気付いたんですが、サタデーナイトにフィーバーしちゃってたジョン・トラボルタがいじめっ子女子の彼氏役で登場。
鬼気迫る怖さを存分に味わいたい方におすすめの作品です。
※映画【キャリー】は、1976年版の他に、2013年リメイク版も。
ディスクを手にするなら、見比べOK!な2本セットがお得です。
キャリー(2013)
キングのデビュー作《キャリー》は、破格の安さで版権を譲渡してしまったヒット小説。
印税ガッポリのチャンスを手放し、それでも自身が有名になれただけで幸せなキングをよそに、2013年にはリメイク映画【キャリー(2013)】も制作されました。
映像美が加わった新キャリーも、やっぱり可哀想ないじめられっ子の報復スリラーになっています。
映画【キャリー(2013)】のあらすじ
地味で根暗な女子高生キャリーは、高校ではスクールカースト最下位。
事あるごとにいじめに遭い、家でも熱心なキリスト教徒の母親に支配されていました。
そんな彼女も高校卒業間近に初潮を迎え、パニックとヒステリーからサイキック能力に目覚めることに。
自分だけが持っているのか、それとも実はみんなも同じ力があるのか。
超能力に多大な興味を持ったキャリーは、図書館で調べたり能力をコントロールしようと特訓を開始します。
力に魅了されながらもうまく操れないキャリーは、相変わらずいじめのターゲット。
そんな中、ひとりの女子生徒はこれまでのいじめ行為を後悔し、キャリーと交流するようになっていきます。
本当はみんなと仲良くしたい、学校生活を楽しみたかったキャリーは、卒業パーティー・プロムに誘われ参加することに。
しかし執拗にキャリーをいじめ続けてきた女子グループの悪巧みから、楽しかったプロムは一転します。
怒りに震え、手当たり次第にサイキック能力を解き放ち、全てをめちゃくちゃにする物語。
映画【キャリー(2013)】の見どころ
キングの原作を損なわないよう、結局は1976年版と物語は大差がありません。
それでもリメイクならではの見どころもご用意されてます。
何より主役のキャリーを演じたクロエ・モレッツが可愛い。ミスキャスト感も否めませんけどね。
- リメイク版は女性監督ということもあるのか、女子の生態がけっこう陰険
- 携帯電話など、現代風アレンジがされているので世界観に入り込みやすい
- キャリーの方がいじめっ子達より可愛すぎるが、ダサさと根暗な雰囲気を演技でカバー
- 狂信的なキャリーママを演じたジュリアン・ムーアが1番怖い
- 映画の目玉・プロムでの惨劇シーンはCGを駆使してド迫力
個人的には1976年版のキャリーのほうが好みでした。作風の古さと終始漂う陰鬱な流れに、悪寒が走る怖さがあったかと。
リメイク版はキャリーの掴み所がない妖しげさがなくなり、ただ地味なだけで中身は今どきな女子高生という感じ。
あぁ、でも作風とは関係なしに、日本語吹き替えでの楽しみもあります。
- キャリーママの声を潘恵子さん(ガンダム初期でララァ役の声優)
- キャリーの声を藩めぐみさん(ハンター✖️ハンターのゴン役の声優)
こんな声優親子による親子役共演もあるので、アニメ好きならではの見どころになる…かな(汗)
血生臭さありきの青春の1ページ、「やられたから倍返し」を覗き見したい方におすすめの作品です。
※映画【キャリー】には1976年版のオリジナルも。
見比べOK!な2本セットのディスクがおすすめです。
炎の少女チャーリー(1984)
映画【炎の少女チャーリー】は、キングの小説《ファイアスターター》の映像化作品。
火のないところに煙が立ちまくる、パイロキネシスという超能力スリラーです。
映画【炎の少女チャーリー】のあらすじ
ある新薬の被験者として集まった若い数名の男女。
投薬後に命を落とす者が続出する中、大学在学中にアルバイトとして参加した2名だけは新薬の効果が現れ、超能力を身につけます。
そんな2人は被験での出逢いで恋に落ち、やがて結婚して子宝にも恵まれます。
超能力者となった両親から産まれた女の子・チャーリーにも超能力が受け継がれ、悪用されることを恐れた両親は娘の力をひた隠しながら育てていくことに。
しかし秘密裏に監視していた新薬研究組織の手で、チャーリーが9歳になった年に母親が殺されてしまいます。
残された父娘は逃亡生活を送りますが、組織の追っ手にとっ捕まり、チャーリーの目の前で父親を抹殺。
両親を奪われたチャーリーの心の叫びが炎を起こし、泣きながら全て焼き払う悲痛な物語です。
幼い心から解き放たれるおぞましい超能力。映画【炎の少女チャーリー】↓
監督:マーク・L・レスター
キャスト:ドリュー・バリモア、デビッド・キース、ジョージ・C・スコット他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません。
映画【炎の少女チャーリー】の見どころ
この作品の見どころは、チャーリーが操る超能力・パイロキネシスが単なるキングの創造の賜物ではないところかもしれません。
実際に1965年にはブラジルで、1983年にはイタリアで、さらに1986年にはウクライナでもチャーリーばりの少年少女による不可思議な火災現象がありました。
- 信じがたい炎を操る能力がガチらしいところがちょっと怖い
- 幼心を深く蝕む秘密組織の黒幕が政府だった…というスケールのデカさ
- 当時8歳の天才子役ドリューバリモアの演技に感動する
- チャーリーが操る炎の種類がバリエーション豊かで「おぉスゲー」ってなる
- じわじわ迫る追っ手のシーンはゆったりと、ボバーん!と蹴散らす炎のシーンはスピーディ
泣きながら悪い大人に立ち向かう、チャーリーの姿に切なくなります。
ついもらい泣きしちゃうけど、動物モノや子供が主役の映画が好きな方におすすめの作品です。
デッドゾーン(1983)
キングの同名小説の映像化作品となる映画【デッドゾーン】
「危険な地域」「死角」という意味のタイトルですが、イマイチ内容としっくりこない気がします。
たしかに「危険な出来事」に関わるお話ですが、突然超能力を授かってしまった悲しき男の愛と使命の超能力ミステリーといったところでしょうか。
映画【デッドゾーン】のあらすじ
物語の舞台はアメリカ北東部の地域ニューイングランド。
若き男性教師はある晩に、同僚でもある恋人とデートののちに大規模な自動車事故に巻き込まれてしまいます。
一命は取り留めたものの、意識が回復するまで5年もの歳月が流れ、恋人だった女性は他の男性と家庭を築いて子供を育てる良き母に。
ひとり時の流れに置いていかれ、孤独を感じた男性教師。
彼にはもう一つ感じる異変がありました。
それはなぜか他人に触れるとその人物の過去・未来・秘密にしておきたい企みがビジョンとなって見えてしまう透視能力。
そしてそれはただ見えるだけでなく、未来を変える力でもありました。
あるときは火災死亡事故を未然に回避し、またあるときは警察の捜査に協力して事件解決に導くことも。
しかしこの力は彼の生活を一変させ、世間から注目されることに疲れ果ててしまいます。
そんなある日、未だに心に秘めた想いを抱くかつての恋人を見かけ、彼女が推している新進政治家の演説会に参加することに。
偶然にも握手を交わすこととなった新進政治家から、世界に危機をもたらすビジョンが見えたことで、未来を変えるべくひとりで立ち向かう能力者の物語です。
若い頃からおどろおどろしいクリストファー・ウォーケン主演。映画【デッドゾーン】↓
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
キャスト:クリストファー・ウォーケン、ブルック・アダムス、マーティン・シーン他
映画【デッドゾーン】の見どころ
キングの原作小説では、男性教師と新進政治家の2人の視点から描かれているこの作品。
映画では男性教師目線のみに焦点をあてたストーリー展開になっているので、若干原作とは印象が異なります。
- 展開は地味だが、ミステリー要素が濃いので見応えがある
- 突然目覚めた能力を悪用することなく、使命を見出すヒーローものっぽさが興味深い
- …とはいえ特別な力が必ずしも吉と出るわけではない哀愁がある
主演のクリストファー・ウォーケンは、妖しい男・憂いのある男を演じさせたらNO.1の実力派俳優です。
なぜ力を授かったのか、どう扱えばいいのかを苦悩する姿が滲み出ていて、孤高の能力者の心情が流れ込んでくるような秀作かと。
少しSFっぽさもあるサイキックミステリー系の海外ドラマ好きや、しっとりヒューマンミステリー好きの方におすすめの作品です。
…ということで、特殊な能力がもたらす超常現象・オカルト部門4作品をお届けしました。
キングのデビュー作が超能力系だった割には、あまりこの手の映像化作品がありません。
それでもキングらしい「追い詰められた精神がもたらす悲劇」が描かれており、超能力もそれぞれ別モノになっているところが注目ポイント。
刹那が漂う超能力系映画をお楽しみいただけたら、恐悦至極にございます。
その他キング原作映画も色々ご紹介しております。お好みのジャンルでS・キングの世界をどうぞ。
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