ホラーやスリラー映画の良さは「怖さ」を疑似体験できるところ。
でも1本映画を観るためには最低でも1時間半くらい、長いものでは3時間くらいかかります。
もうちょっと気楽にサクっとキングの世界観を楽しみたいんだけど…
そんなあなたに捧ぐ、S・キング原案オムニバス系3作品をお届けします。
クリープショー(1982)
映画【クリープショー】は、キングの短編小説の映像化作品…ではなく、この映画のために書き下ろしたオリジナル。
「世にも奇妙な物語」のように、5つの違ったテイスト物語が楽しめるひと粒で5回美味しいキングワールド作品です。
映画【クリープショー】のあらすじ
物語の語り部は、ホラー漫画大好きなひとりの少年。
「漫画なんぞくだらない」という父親と、「そういう父ちゃんだってエロ本集めて隠してるじゃないか」という、その会話の方がくだらないよね…ってな触りから始まります。
漫画の面白さを伝えたい少年のおすすめの話が実写となって語られていき、こんな5つのストーリーが展開します。
第1話「父の日」
どケチすぎる大富豪の父親をめぐる、親族一同の恐怖体験の物語。
7年前に大叔母に殺されたらしい父のゾンビが復活し、気に入らない親族に仕返し。
さらには、自分をこんな目に合わせた大叔母の生首をケーキにし、父の日を祝っちゃおうとするシュールなゾンビホラーです。
第2話「ジョディ・ヴェレルの孤独な死」
農夫のジョディの所有地に、ある日隕石が落下。
小物感満載な彼は、この隕石をその筋の研究所に高値で売ろうと画策します。
ところが隕石はとんでもなく熱く、拾い上げたジョディは隕石を落として真っ二つに。
割れた隕石の中の得体の知れない緑の物体に侵食され、悪態を吐きながらジョディが迎える最期を描いた物語です。
第3話「迫りくる潮流」
大富豪の男性が、不貞を働いた妻とその愛人を海岸に生き埋めにして始末。
潮が満ちればもがき苦しみながら溺死する…という酷い罰を与えますが、翌朝見に行くと2人の姿がありません。
まぁついでに流されたんだろう程度に考えていたら、ブヨブヨにふやけた2人が屍人となって現れ、同じ目に遭わされるという道連れ系ホラーです。
第4話「木箱」
大学の研究棟の片隅で発見された古い木箱。
大航海時代のお宝かと思ったら、中には毛むくじゃらでエメラルドカラーの瞳を持つ化け物が。
姿を確認して研究しようにも、マッハで喰いちぎられてしまうため、採掘場の池に沈めて封印することに。
…と、その前に、口煩い妻を亡き者にしたいひとりの教授は、化け物に喰わせて完全犯罪を…というモンスター&人間の腹黒さを描いたプチパニック系ホラーです。
第5話「這い寄るやつら」
自分以外はみな虫ケラのように低脳だ、と思っている傲慢社長は、自意識も過剰ならば潔癖症も過剰。
彼にとって最大の悩み・最恐のライバルは、誰もが嫌うあの黒いカサカサ虫G。
殺虫剤を撒こうが駆除に大金つぎ込もうが一向に減らないGに悪戦苦闘し、終いには超大量のGに埋め尽くされるという、悪夢必至の悪寒系ホラーです。
あ、第5話のG虫は、予告動画でも大量に映し出されてきちゃいますから、虫ダメな方は特にご注意を。
私は名前を出すのも御免被りたいほど大の虫嫌いなので、あやうく失神するところでした。
閲覧注意!黒いカサカサGも登場。映画【クリープショー】↓
監督:ジョージ・A・ロメロ
キャスト:E・G・マーシャル、エド・ハリス、ジョー・ヒル、S・キング他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません。
映画【クリープショー】の見どころ
1話1話が短めのオムニバス作品って、観たい話数だけ観て終了してもいいところが魅力ですね。
あっさりテイストでありながら存分にキングのホラーが堪能でき、思わぬ見どころもあったりします。
- ストーリーテラーとなる少年は、S・キングの息子ジョー・ヒルが演じている
- B級らしさ溢れるテイストのホラーだが、第1話では若きエド・ハリスのお姿が
- 第3話の小物感満載な農夫を、ちゃっかりS・キングが主演
日本映画でも小説や漫画を原作にした映画がたくさんありますが、作家自ら俳優として出てくるものはあまりないような…?
三谷幸喜さんや宮本亜門さんみたいに演出家がチョロっと脇役、もしくはやっぱり演出家の松尾スズキさんのように演技派俳優も兼ねたお方が出てくることはありますけど。
主演をはるS・キングやキングJr.の演技を観たい方におすすめの作品です。
クリープショー2 怨霊(1987)
映画【クリープショー2 怨念】は、前作でもタッグを組んだジョージ・A・ロメロ監督が脚本も手掛けた続編です。
ロメロ監督って誰やねん!というと、ゾンビ映画第一人者・ホラー映画の巨匠・カルト映画の鬼才とも呼ばれるすごいお方。
怖いの書く人S・キングと、怖いの撮る人ロメロ監督の怖い三昧、3つのお話が収録されています。
映画【クリープショー 2 怨念】のあらすじ
お気に入りホラー漫画雑誌「クリープショー」の新刊を楽しみにしている少年。
ちょっと近所のいじめっ子にイジられるというネタを1話1話の間に挟み、アメコミマンガチックな映像から実写の恐怖物語が始まります。
第1話「木彫りのインディアン人形」
荒野の片隅の寂れた田舎町。
等身大の木彫りインディアン人形が目印の雑貨屋を営む老夫婦が、若造3人組の強盗に襲われ射殺されてしまいます。
毎日話しかけ、大事にしてくれた老夫婦の無念を晴らすべく、インディアンの木彫り人形が動き出して強盗3人を抹殺する復讐劇。
第2話「殺人いかだ」
陽気でハイな2組のカップルが、音楽ガンガン鳴らしながらドライブデート。とある山あいの小さな湖にやってきます。
もう遊泳するには肌寒いのに、若さと勢いで湖に飛び込み大はしゃぎする彼ら。
湖の中ほどにある浮き台まで泳ぎ着くも、なにやら妖しげな大きく黒い藻のような塊が漂ってきます。
ひとりが興味本位で藻に触れたところ、ジュルジュルと黒い藻が纏わり付いて無残な姿に。
まるで生き物のようなブキミな物体に次々と若者らが喰われ、最後にはアッと驚く展開が待っているモンスターパニックです。
第3話「ヒッチハイカー」
お金も時間も身体も持て余す有閑マダム。
夫の目を盗んで不倫を楽しんだ帰り道、運転中の車で誤ってヒッチハイカーを轢いてしまいます。
怖くなった有閑マダムは血まみれのヒッチハイカーを置き去りにし、その場から逃亡。
しかし轢いてしまったヒッチハイカーが「奥さん、乗せて下さいよぅ」だの「私を轢き殺しましたね」だの言いながら執拗に追いかけてきます。
ヒッチハイカーVS有閑マダムとの間で始まった、追うか追っ払うかの攻防戦。
「やってやったわ」
…と、とうとうマダムに軍配が上がるも、もはやアンタ誰!?ってくらいグチャグチャになったヒッチハイカーの執念が勝る物語です。
30分ほどの短いストーリーが3作品。映画【クリープショー 2 怨霊】↓
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません。
映画【クリープショー 2 怨念】の見どころ
オムニバスって、途中までは面白いのに結末が何だかなぁ…って中途半端な終わり方だったりしますよね。
この作品の見どころは、短い展開の中にちゃんと起承転結があるところ。あとは流し見程度でも程よく楽しめるところでしょうか。
私は字幕なしの状態でこの映画【クリープショー2/怨霊】を観たんですが、英語ニガテでも充分ストーリーが把握出来ました。
- ストーリーテラーの少年はキングの息子ジョー・ヒル(ただし出番ちょっと)
- どのお話もスッキリとしたオチまでご用意されている
- 第1話の人形の復讐劇は、インディアンの風習を知っていると結末にニヤリとする
- 第2話は、いかだじゃなくて藻に襲われるから、タイトルにはモヤモヤが残る
- 第3話は現実味ありげ、ありがちなホラー設定だがビジュアルが強烈&トラック運ちゃん役でキング出演中
- どのストーリーにもそれぞれ印象に残るクラシックカーが登場
たとえば第1話の木彫りのインディアンの物語。
誇り高く勇敢なインディアン部族には、戦果と栄誉を示す戦利品として「頭皮を剥ぎ取って」「頭髪をちょん切って」持ち帰る風習が。
「あー。だから最後はこんな結末に…」と納得できる終わり方になっています。
細かな知識があるとより楽しめますが、1話30分くらいのゾワる怖さをスッキリ味わいたい方におすすめのオムニバス作品です。
クリープショー 3 (2006)
映画【クリープショー3】は、前作【クリープショー2/怨霊】から20年の時を経て制作された、待望の続編。
…ですが。
S・キングもロメロ監督の手も離れ、無関係になっちまったにも関わらず「正統な続編」を名乗るオムニバスホラーです。
映画【クリープショー 3】のあらすじ
とある街の住人たちに襲いかかる、それぞれの恐怖の身の上話。
アニメーションで始まるプロローグから実写に移り、エピローグまで繋がるこんな5つの恐怖体験物語が展開します。
第1話「リモコン」
近所のキモいジィさんも、何かとウザい家族にもうんざりしている今どきの女子高生。
ある日ケータイで友達にグチりながら帰宅すると、パパが「なんでも制御の万能リモコン」を露天商から購入してきます。
実は彼女が嫌ってる近所のキモいジィさん発明のそのリモコン。
「色彩調整ポチっとな」で家族がみな黒人になっちゃったり、「字幕切り替えポチっとな」で話す言語が外国語になっちゃったり。
電化製品のリモコンではなく、ポチっと操作で周りの人間が変化しちゃうリモコンで、姿がグログロしく変化する厄介アイテムの物語。
第2話「ラジオ」
ある日警備員の男性が、露天商の浮浪者からラジカセを購入。
なんだよ壊れてんじゃん…と自分で修理したところ、ラジオから急に女性の声が。
警備員はその声に魅了され、その声の通りにあんなことやこんなことまでしでかすようになってしまいます。
単なるラジオではなかったようで、ラジオから流れる女性の指示で人生踊らされ、翻弄されていくお話です。
第3話「コールガール」
両親の留守をいいことに、ちょっとお楽しみしたい青年。彼は自宅にコールガールを呼ぶことに。
現れたコールガールはお色気ムンムン、手慣れた手つきでサービスを始めます。
しかしこのお色気レディ、実は最近巷を賑わす猟奇殺人犯。
彼女はいつものようにゾクゾクしながら殺しを楽しもうとしたところ、今回ばかりはお客様をチョイスミスしたようです。
青年のほうが一枚うわての化け物だった…というどんでん返しホラー。
第4話「教授の妻」
近々結婚することになった、とある教授。教え子を自宅に招き、妻となる女性を紹介します。
しかしあまりの幼な妻の容姿をいぶかしく思った学生たち。
「そういや教授はアンドロイドの研究してたな。妻とか言って、これはその成果に違いない」
…と思い込み、とんでもない勘違いから幼な妻を残酷にイジりたおすシュールなスリラーです。
第5話「ホーンテッドドッグ」
無料診療所に勤務するひとりの医師。
不真面目で奢った性格の彼は、物乞いをする浮浪者に落ちてた砂利だらけのゴミと化したホットドッグを投げ与えます。
しかしこのホットドッグを食べたせいで、浮浪者は食中毒であの世逝き。
それからというもの浮浪者の亡霊に取り憑かれ、どこにいても何をしていても亡霊に悩まされることに。
患者の声も浮浪者の声も、誰の声にもまじめに取り合わなかったDr.が報いを受ける、自業自得の恐怖体験談です。
絶叫轟くショッキングな5つのストーリー。映画【クリープショー3】↓
監督&脚本:アナ・クラヴェル、ジェームズ・デューデルソン
キャスト:ロイ・アブラムソン、マギー・アヴィラ他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません。
映画【クリープショー 3】の見どころ
キングの世界観でもなければストーリーテラーの少年もおらず、さらに「クリープショー」という架空の漫画雑誌からチョイスした怖い話という流れすら無いこの作品。
なのでキングの俳優出演も、息子ジョー・ヒルのストーリーテラーもありません。
…が、ちゃんと見どころはあります。
そしてそれなりにスパイス効いた展開にもなっています。
- 同じ街の住人が登場人物なので、独立したストーリーだが5話全てがクロスオーバー
- あっちの話のエキストラがこっちの話では主人公…という全体の流れが面白い
- ブキミで謎めいた怖さはなく、グロ先行のコメディタッチスリラー
- ストーリーに捻りがないので、よく言えば単純明解・素直に言うとお話が雑
- …とはいえノリと軽さで押し切った、ちょっと古めのB級ホラー感で楽しめる
もはやその辺のご近所さんから発せられた「都市伝説」めいたお話ばかり。
続編にすらなってないバッタもんですが、クリープショーを名乗らなければ充分良く出来たショートストーリーが揃ってます。
キングファンやロメロ監督が描くホラーファンの方よりも、ブラックジョークの軽さとどうでもいいB級ホラーを手短に楽しみたい方におすすめの作品です。
…ということで、S・キングの原作映画とは異色の、書き下ろし&続編を名乗っちゃう似非キングのオムニバス作品をお届けしました。
どれも1話が20分〜30分くらいのあっさりテイスト、安定のB級感が漂います。
そもそもキングは書いた小説すべてが大ヒットしているわけではありません。
むしろ半数以上の小説は駄作という評価も(笑)
とはいえ、キング作品VSキング作品では駄作に見えても、キング作品VSキングっぽく頑張った作品とでは雲泥の差が。
ちょっと見方を変え、サクッとオムニバス作品を通してキングの凄さに気付いていただけたら、恐悦至極にございます。
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