ブルース・リー唯一の師匠にして、中国拳法『詠春拳』の達人・イップ・マン(葉問)
実在する中国武術家の生き様を描いたドニー・イェン主演映画【イップ・マン】シリーズは、クンフー(功夫)映画の最高傑作です。
圧倒的なアクションに加え、人格者であるイップ・マンの人間性も描かれている点が最大の魅力。
のちに香港で一大門派に発展した「葉問派詠春拳」は、シリーズ以外にも度々映画化されています。
ということで、ドニー・イェン主演映画【イップ・マン】シリーズを観る順番に、その他+αの作品についてもお届けします。
この記事で分かること
- ドニー・イェン主演作+外伝の5作品を観る順に
- シリーズ外オリジナル作品4本も
- あらすじ概要・雑学小ネタ・予告動画
- DVD・ブルーレイ情報
- 木人椿、買えます情報
イップ・マン 序章 (2008)
映画【イップ・マン 序章】は、ドニー・イェン主演シリーズ第1作目。
第28回香港電影金像奨の最優秀作品賞を受賞、イップ・マン人気の火付け役となった作品です。
- 舞台は1935年の中国広東省・佛山
- ここは数多くの道場が軒を並べる武術の町
- 詠春拳のイップ・マンは、佛山イチの武術家として有名に
- しかし1937年に日中戦争が勃発。佛山は日本の占領下に
- 裕福だったイップ・マンの豪邸は日本軍の司令部として没収
- さらに日本軍将校が、空手VS中国武術の娯楽試合を始めた
- イップ・マンは誇りをかけ、日本軍将校と一騎討ちすることに
主演のドニー・イェン氏は、少しでもご本人に似せようと10kg減量してイップ・マン役に挑みました。
さらに詠春拳は、一から稽古。約9ヶ月で習得したそうで。
鍛錬として木人椿を打つ姿からは、すでに達人オーラが漂ってます。
特に娯楽試合での1VS10の対決シーン、将校との一騎討ちは、圧巻で必見です。
ちなみに日中戦争で佛山が占領され、イップ・マンの屋敷が司令部として没収されたのは史実。
日本軍と対決というのはフィクションです。
完全な伝記ではありませんが、イップ・マンの佛山での前半生を描いた作品。
映画【イップ・マン 序章】
監督 : ウィルソン・イップ
主演 : ドニー・イェン、リン・ホン、池内博之ほか
上映時間 : 108分
イップ・マン 葉問 (2010)
映画【イップ・マン 葉問】は、ドニー・イェン主演シリーズ第2作目。
前作《イップ・マン 序章》の続きとなる、戦後の生活を描いたお話です。
- イップ・マンは家族とともに、イギリスの植民地・香港に移住
- 1950年。知人を頼りに武館を開くも、決まりとしきたりがあるらしい
- 香港で武館を開く各派の師範と手合わせし、認めてもらう必要が
- イップ・マンは武館を仕切る洪拳の師匠・ホンと激闘、決着つかず
- 詠春拳の武館が閉鎖に追い込まれる中、あるイベントで事件が
- イギリス人ボクサーが中国拳法を侮辱、立ち向かったホンが殴り殺された
- イップ・マンはホンと中国拳法の想いを胸に、リベンジマッチに挑むことに
なんと。
洪拳の師匠ホン役は、カンフー映画界の重鎮サモ・ハン・キンポー氏(当時58歳)
体型からは想像もつかないキレッキレのアクションは健在で、まだまだ動けます、このお方(笑)
約2分20秒に及ぶホンVSイップの円卓シーンは、のべ8日間かけて撮影。
ボクサー戦ではパンチをまともに喰らい、気絶…からの撮影続行という逸話が。
そんなサモハン氏の活躍と、どこへ行こうとブレない信念を持つイップ・マンの勇姿が見どころです。
武術の強さ・心の強さで誇りを取り戻す、異種格闘技戦に胸が高鳴る作品。
映画【イップ・マン 葉問】
監督 : ウィルソン・イップ
出演 : ドニー・イェン、サモ・ハン・キンポー、ホァン・シャオミン、デニス・トー他
上映時間 : 109分
イップ・マン 継承 (2015)
映画【イップ・マン 継承】は、ドニー・イェン主演シリーズ第3作目。
前作《イップ・マン 葉問》の続きとなる、香港での暮らしに困難が押し寄せる重厚なお話です。
- 1959年の香港は、好景気に沸く裏で無法地帯も
- チンピラが闊歩し、ファイトクラブで荒稼ぎ
- …という裏社会を牛耳るボスが、小学校まで地上げ
- イップ・マンが立ち上がるも、息子がピンチに
- さらに最愛の妻がガンで余命半年と発覚
- 挙げ句、同じ詠春拳のチョン・ティンチが正統派争いを申し込んできた
この作品はコレといった明確な敵がおらず、人間ドラマがメインです。
物静かに穏やかに、時に力強く寄り添うイップ・マンと、最期まで夫を気づかう妻ウィンシン。
2人が手を繋いで歩くシーンでは、妻のほうが背が高い身長差すら、切なく愛おしく見えてきます。
本物のイップ夫妻は奥様のほうが背が高く、リアルにこんな感じだった模様。
ちなみにイップ役のドニー氏は173cm、妻役のリン・ホンさんはモデル出身で179cm。
美しく芯の強いウィンシンに、涙を持ってかれること間違いなしです。
もちろんアクションも重厚で、裏社会のボス役に元ボクシング世界ヘビー級王者のマイク・タイソン氏が登場。
ギャラとスケジュールの関係で出番は少ないですが、これだけは言えます。
…タイソンのパンチ、すげー(゚Д゚)
研ぎ澄まされた詠春拳対決も印象的で、もう全てが見どころ。
イップ・マンが人生において最も大切なものを見出していく、シリーズ最高傑作。
映画【イップ・マン 継承】
監督 : ウィルソン・イップ
出演 : ドニー・イェン、マックス・チャン、リン・ホン、マイク・タイソン他
上映時間 : 105分
イップ・マン外伝 マスターZ (2018)
映画【イップ・マン外伝マスターZ】は、ドニー・イェン主演シリーズのスピンオフ作品。
前作《イップ・マン 継承》に登場した、もう1人の詠春拳の使い手チョン・ティンチの後日談です。
- 1960年代の香港。ティンチは食料雑貨店を営むオーナーに
- というのもイップとの正統派争いに負け、武術界を去ったから
- 息子と穏やかな生活を送る中、とある女性の窮地を救った
- …ら、犯罪組織の幹部キッドに目をつけられ、店も住む場所も失った
- その後、救った女性の兄が営むナイトクラブで働き始めた
- ところがキッドが麻薬密売組織と手を組み、ティンチの恩人が次々と犠牲に
- ティンチは悪を成敗するために、武術の封印を解き放った
チョン・ティンチ役のマックス・チャン氏は、香港アクション映画界のニュースター。
今作の監督であり、アクション監督や武術指導者としても世界的に有名なユエン・ウーピン氏が発掘した逸材です。
…っていうか、ユエン監督ってどちら様?
ジャッキー・チェン氏を有名にし、ドニー・イェン氏を見出し、《マトリックス》《キル・ビル》などのハリウッド作品にも召喚された凄いお方。
そんなユエン監督のお墨付き、本格武術と憂いある演技のマックス・チャン氏が見どころです。
この作品に出演時は43歳と遅咲きですが、東洋のジョニデとも言える端正な顔立ちは目の保養になります。
かつての野心は姿を消し、武術のあり方を改めて悟った男の物語。
映画【イップ・マン外伝 マスターZ】
監督 : ユエン・ウーピン
出演 : マックス・チャン、デイヴ・バウティスタ、トニー・ジャー、ミシェル・ヨー他
上映時間 : 108分
イップ・マン 完結 (2019)
映画【イップ・マン 完結】は、ドニー・イェン主演シリーズ最後となる第4作目。
晩年の暮らしを描いた、さらばイップ・マンなお話です。
- イップ・マンはガンを患い、余生を静かに過ごすことを決意
- そんな頃、サンフランシスコで活躍する弟子ブルース・リーから手紙が
- 1964年。反抗期の息子の留学先の視察も兼ねて渡米
- そこで見たものは、異郷に生きる同胞たちの苦しい現実
- リーとの再会・太極拳の達人ワンとの出会いを通し、米国人の非道を実感
- 中国武術を卑下する海兵隊軍曹と、誇りをかけた最期の闘いに挑むことに
病をおして、自分が出来ることに心血を注いだ晩年のイップ・マン。
ストーリーは少しベタですが、最後まできっちり見せ場のある秀作です。
ただし実際には渡米しておらず、ブルース・リーの葬儀参列シーンもフィクション。
その代わりと言っちゃなんですが、79歳でこの世を去ったイップ氏が、最後に残した実物ビデオ映像が流れます。
木人椿を打つ貴重な資料なので、ラストお見逃しなく。
これで完結、10年に渡るイップ・マンシリーズの集大成。
映画【イップ・マン 完結】
監督 : ウィルソン・イップ
出演 : ドニー・イェン、チャン・クォックワン、スコット・アドキンス、ウー・ユエ他
上映時間 : 105分
イップ・マン 最終章(2013)←その他
映画【イップ・マン 最終章】は、アンソニー・ウォン主演のシリーズ外作品。
ドニー・イェン主演シリーズの初作が「序章」、これが「最終章」なので間違えやすいですが、続きではありません。
- 日中戦争で日本軍に家を接収され、生活に困窮
- そこでイップ・マンは妻子を残し、単身で香港へ
- 庶民相手に詠春拳を教え、妻が佛山から訪ねてきた
- ただ、弟子たちが職業ストライキを強行。トラブルが絶えなかった
- 妻は佛山に戻って病に倒れ、イップ・マンは死に目に会えず
- 精神的に参った彼は、妻の面影を感じる知人女性と良い仲に
- そのころ弟子たちは武館を開き、1人が大きなトラブルに
- イップ・マンは町の治安と弟子の命を救うため、悪の巣窟に乗り込んだ
ガタイがよく強面のイップ師匠ですが、演じたアンソニー・ウォン氏は当時52歳。
ドニー・イェン氏の2歳上でこの貫禄は、なかなか出せるもんじゃない気がします。
ドニー・イェン版とはまた違った渋さのある、より実話に近いイップ・マン作品。
映画【イップ・マン 最終章】
監督 : ハーマン・ヤオ
出演 : アンソニー・ウォン、ジリアン・チョン、ジョーダン・チャン他
上映時間 : 100分
イップ・マン 誕生 (2010)←その他
映画【イップ・マン 誕生】は、デニス・トー主演のシリーズ外作品。
詠春拳を習い始めた幼少期から青年期にかけての、史実とは異なるオリジナルストーリーです。
- イップ・マンは兄貴分であるティンチ少年と佛山の詠春拳道場に入門
- 鍛錬に余念がなく、やがて留学のために単身香港へ
- そこで詠春拳の達人と出会い、師匠とは少し異なる詠春拳を学んだ
- 佛山に戻ったイップは達人流詠春拳を披露するが、師範代が邪道だとお叱りに
- そんな頃、佛山の精武体育会の会長殺害事件が発生
- 手口は、邪道と言われたイップの詠春拳に酷似
- 殺人容疑をかけられたイップだが、真犯人の目星が
イップ・マン役のデニス・トー氏は、実際に詠春拳を会得しているアクション俳優。
ドニー・イェン版《イップ・マン 葉問》にも出演、サモハン氏の1番弟子ワイケイ役で洪拳も披露しています。
その他にもドニー・イェン版と出演者が被っており、道場の師匠はサモ・ハン・キンポー氏。
さらに《序章》《葉問》でカム・サンチャウ役のルイス・ファン氏が、ティンチ役で登場。
若干デジャヴなキャスティングですが、お話が全く別・演技も別なので、きちんと楽しめる仕様になっています。
佛山・詠春拳・イップ・マンという史実をもとに、ミステリータッチで進む斬新なオリジナル作品。
映画【イップ・マン 誕生】
監督 : ハーマン・ヤオ
出演 : デニス・トー、ルイス・ファン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウ他
上映時間 : 100分
※動画配信サービスでの取り扱いがありません (2021年7月現在)
イップ・マン 宗師 (2020)←その他
映画【イップ・マン 宗師】は、デニス・トー主演のシリーズ外作品。
同じくデニス・トー主演の《イップ・マン 誕生》の続編ではなく、また別の葉問像を描いたお話 です。
- 若きイップ・マンは正義を行使する警察官
- ある時いわれなき罪を着せられ、マフィアのボスの娘に命を狙われた
- …が、それはさておきボスを逮捕・勾留。日本人との密輸を突き止めた
- ただし署長はボスをVIP待遇。なぜならこの町の経済を回す大物だから
- イップは部下に命じて密輸品を摘発。麻薬と思いきや超大金だった
- 一部の警察官は金に目が眩み不正。さらに勾留中のボスが暗殺された
- ついでにこの件を追うイップの家族が危険な目に
- そんな中、日本人主催の武闘大会が開かれ、イップは空手の達人と闘うことに
これまた完全オリジナルのイップ・マン物語。
ただ、本物のイップ氏は争いごとを避け、武術は喧嘩のためのものではないという思想の持ち主です。
他人を虐げるために用いるなら、勝っても負けてもそれは負けでしかない。
困っている人のために用いるならやむなし、というお考えなので、そういった部分から生まれた警察官キャラかと思います。
史実とはだいぶかけ離れているものの、イップ・マンの信念と理念には基づいている作品。
映画【イップ・マン 宗師】
監督 : リー・リーミン
出演 : デニス・トー、ユアン・リー・ルシオン、マイケル・ウォン他
上映時間 : 83分
グランド・マスター (2013)←その他
映画【グランド・マスター】は、トニー・レオン主演のシリーズ外作品。
イップ・マンと詠春拳のお話というよりも、南北それぞれの武術派の伝承に関するお話です。
- 舞台は戦争間近の1930年代、中国・佛山
- イップが40歳のとき、北部武術派の重鎮ゴンが佛山へ
- ゴンは北の武術を南に伝え終えたので引退するつもり
- 代わって南の武術を北に広めて欲しいとのこと
- 後継者候補は、ゴンの1番弟子マーサンとイップ・マン
- ところが権力に目が眩んだマーサンが師匠ゴンを殺害
- 結果イップが後継者となるも、ゴンの娘がイップに試合を申し込んだ
- 互角の闘いとなり、娘はイップを認めて文通すように
- そんな中、日中戦争が勃発。南の流派を北に伝えること叶わず
- マーサンは破門され、ゴンの流派は娘の代で途絶えた
たとえば少林拳・太極拳は、北派の武術。
一方、白鶴拳・詠春拳は、南派の武術。
北への伝承が叶わなかった南派の武術は、日本に伝わり空手の基になったものもあります。
そういった伝承の歴史の一部が描かれている、というあたりが見どころのひとつ。
さらにトニー・レオン、チャン・ツィイー、マイケル・チャンといった豪華キャストも見どころです。
アクションは少なめ、イップ・マン映画としては物足りないんですけどね。
戦争という激動の時代を駆け抜けた、人と技の栄枯盛衰を儚く美しく描いた作品。
映画【グランド・マスター】
監督 : ウォン・カーウァイ
出演 : トニー・レオン、チャン・ツィイー、マックス・チャン他
上映時間 : 123分
…ということで、ドニー・イェン出演映画【イップ・マン】シリーズを観る順番に、さらに+αの映画作品についてお届けしました。
結局どれから観るのがベストなの?
個人的にはコレがおすすめです↓
- 初めて観るなら、ドニー・イェン主演シリーズを「序章→葉問→継承→外伝→完結」の順番で
- もし気に入ったら、その他シリーズ外のオリジナル作品を
こんな攻め方をすると、より一層楽しめるかと思います。
カンフー映画の最高峰、詠春拳の達人に酔いしれていただけたら、恐悦至極にございます。
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