ここは何処?なぜ自分が?目的は何。
何度も繰り返されるあの日あの時。
ひとりの男の奇妙な体験、タイムループで描かれるヒューマンミステリー映画【残酷で異常】の世界へとご案内いたします。
この記事でわかること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・動画配信サービス・DVD情報
映画【残酷で異常】罪と罰と贖罪の形
これ、サイコパス映画?
いや、グロさは全くない。
残酷で異常。
とんでもないシリアルキラーが出てきそうなタイトルですが、血が!人肉が!という描写はありません。
肉体的な痛みではなく、精神的な痛みを何度も味わう地獄を描いたタイムループ作品です。
- 原題は「Cruel & Unusual」=「罪に対して異常なほど残酷な罰」といったニュアンス
- 邦題は「cruel=残酷な」「unusual=異常な」と、まんま直訳しただけ
- 妻を殺した自覚も自分が死んだ自覚もない男が主人公
- タイムループする度に、コトの真相や己の罪の重さを知り悔恨するお話
今作は、監督・キャスト共に知名度がありません。
加えて円盤化もされておらず、観るとしたらAmazonプライムビデオでの見放題配信1択という配信状況。
そもそもタイトルがザックリしすぎ、どういった内容の映画なのかも分かりにくい欠点が。
ところがひとたび観始めると、美しい映像の中で繰り広げられる謎めいた展開に夢中になります。
ひとりの男性の身に何が起き、どうして同じ日を繰り返す羽目になったのか。
現世と常世を行き来し、独りよがりの思い込み・すれ違った感情が招いた悲劇と贖罪の様子を描いた映画 が【残酷で異常】です。
映画【残酷で異常】基本情報
残酷で異常 | 2014年 カナダ映画 |
ジャンル | サスペンス・ヒューマン・ミステリー |
監督・脚本 | マーリン・ダービズビッグ |
上映時間 | 95分 |
出演 | デヴィッド・リッチモンド=ペック、ベルナデッタ・サクイバル他 |
動画配信サービス | Amazonプライムビデオ(prime対象) |
無料お試し期間を活用すれば、実質¥0で視聴可能です。
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映画【残酷で異常】汝、己を知りたまえ
物語は、自宅トイレで倒れている妻メイロンに寄り添う夫エドガーの様子から。
半ベソかきながら懸命に心臓マッサージを施すも、妻が死んでしまう悲しい出来事から始まります。
- メイロン…メイローン(号泣)と泣きじゃくるエドガーも、急にその場でバタンキュー
- …したはずが、意識を取り戻したら車を運転中
- しかもさっき自宅トイレで倒れたはずのメイロンが助手席に
- さらに「パーティ楽しんでたのに途中で帰るだなんて」と愚痴り中
えっと…これは過去の回想が始まったってこと?
…いや、今リアルタイムで妻も生きてるし外出中ってことだ。
一体何がどうなってる??
エドガーは慌てて急ブレーキをかけ、オロオロうろたえまくります。
妻メイロンが心配そうに話しかけても、自分でも何言ってるか分からないほどの混乱っぷりです。
- メイロンいわく、疲れといつも飲んでる薬のせいなんじゃ…
- 確かにエドガーは胃潰瘍を患っていて、ここ最近特に体調悪い
- とにかく今の状況がさっぱり掴めず悶々モンモンもん…
- …という最中、エドガーの携帯に着信が
- 息子のゴーガンが友人に大怪我負わせ、学校から逃げたらしい
今度はメイロンがうろたえまくってる?
エドガーの異変より、息子のほうが心配なんだよ。
実はゴーガンはメイロンの連れ子。
夫エドガーのことはもちろん愛しているけれど、それ以上に息子を溺愛しています。
- エドガーだってメイロンを愛してるし、義理の息子ゴーガンのことも大切
- 欲しい自転車も買い与え、家の手伝いもさせるなど父親らしく接してる
- ただゴーガンはもう13歳なので、それなりに大人扱い
- 学校から行方不明になっても、子供じゃないんだから心配いらん
確かに思春期の息子をいつまでも子供扱いするのはちょっと…だよね。
でもメイロンからすると、ただ突き放してるように映ったみたいだ。
結局ゴーガンのことで少し夫婦仲が険悪になり、エドガーは食事のあと自室に篭ることに。
語学学校の英語教師なので、採点を済ませてしまおうとドアを開けたら……。
そこは自室ではなく、見知らぬ施設の廊下でした。
- ここは何処!?と、本日2回目のうろたえタイム
- 今きたドアを開けようにも、びくともしない
- とりあえず辺りを見回すと、数名の人々がそこかしこに
- ヒゲ面の中年に声をかけられ、とある部屋に連れていかれた
TVモニターが1台と、十数人の老若男女?
…あぁ、セラピーの集会室だな。
またしても訳わからん状況に置かれたエドガー。
一体この集まりは何だ?
っていうかこの施設なに。
…という疑問をTVモニターに映るオババ様にぶつけるも、返ってくる返事は「いいから座れ!」のひとことです。
そうして渋々着席し、始まったのはなんとも物騒な告白大会。
なせかエドガーは、己の過ちを自覚する謎セラピー集会に紛れ込んでしまったのです。
赦されざる罪人の末路
TVモニターのオババ様に促され、ひとり語りをする人々。
エドガーはなぜ自分がここにいるのか、全く思い当たる節がありません。
だってこの集会では、誰も彼もが「家族を殺しました、えぇ、こんな形で…」と殺人を告白していたから。
- エドガーはこれまで人を殺めたことなどない
- どうにも場違いだ!と異論を唱えたが、軽くあしらわれた
- なおも喰いついて文句を言ったら「7734」に行けと怒られた
7734って部屋番号?
うん、まぁ部屋番号だが、もっと深い意味がある。
7734…7734。
ちょっと字体を変えて反転させると、ここが何処なのかという答えが隠されています。
つまりここは、『hell』地獄の一部。
罪を犯した死者が集められ、罰を受ける施設だったのです。
- ここにいる人々の腕にはみな、殺した相手を示す刻印が
- 実はエドガーの腕にもラテン語で妻を意味するUXORの文字が
- エドガーに自覚がないため、地獄の入り口行って理解してこい
- …って事で「7734」号室に行かされ、思わぬ事実が判明
- エドガーは妻を殺し、その後自分も死んでいた
なにこのゲームみたいな隠れ設定(笑)
…なかなか斬新な地獄だよね。
モニターの向こう側の連中は、さしづめ地獄の番人といったところです。
しかしそんな連中から「妻を殺した・お前はもう死んでいる…」と言われても、エドガーがあっさり納得するはずもなく。
- そもそも愛してる妻を殺す動機がない
- とにかくここから出せ!とドアを開けたら…自室に帰れた
- ただし、確かに自分が妻を殺してしまった
- そしてまた施設に舞い戻り、また妻を殺す日の繰り返し
何度も何度も妻を殺し続けるって…
…相当メンタル堕ちる残酷な罰だよな。
エドガーがこの施設にいる理由。
それは、妻をその手で殺めてしまった現実を受け入れるため。
なぜ妻を殺したのか、なぜ自分も死んだのかを理解するため。
……そして後悔と懺悔で心が痛み、もがき苦しむため。
地獄に堕とされ罰を与えられたエドガーは、さらに現実世界で知らなかった真実も知ることになっていきます。
- 最近、自分の体調が悪かった本当の理由
- 不満があっても耐え忍んでいた妻メイロンの本音
- あの日、息子ゴーガンがどんな目に遭っていたか
- 自分の振る舞いが思い上がりでしかなかったことも判明
エドガーは、次第に過ちの大きさ・己の愚かさを思い知ります。
しかしどんなに後悔しようが、どんなに打ちひしがれようが、「あの日」と「施設」のループに終わりはありません。
自分の意思は関係なく、懺悔しても赦されることもなく。
現世と常世を行ったり来たり、無限に永遠に繰り返されるのです。
それでもエドガーは、どうにかして現実を変えようと試みます。
本当に愛してやまない妻メイロンのため。
このままではひとり残され孤児になってしまう息子ゴーガンのため。
エドガーはここから抜け出すのではなく、ここにいる理由と繰り返される「あの日」の出来事を変えることに… というのが大まかなあらすじになります。
映画【残酷で異常】現世と常世の登場人物たち
主人公を中心に、物語の真相にほんの少し関わる数名の人々。
数少ない登場人物の中から、特にキーパーソンとなるキャストをご紹介いたしましょう。
エドガー (デヴィッド・リッチモンド=ペック)
エドガーは、妻をこよなく愛する地味めのメガネ中年男性。
弾みで妻を殺害し、その後死亡したから殺人者扱いになった人物です。
訳もわからずあの世とこの世を行き来し、何がどうしてこうなった…
という謎は、エドガーが理解することで鑑賞者も一緒に理解出来る仕組みになっています。
共感せずとも同感はする、驚くほど良くできた演出の沼にハマってください。
結末ではきっとエドガーと同じ清々しさすらリンクするかと。
メイロン (ベルナデッタ・サクイバル)
メイロンは、連れ子を伴ってエドガーと結婚した外国人妻。
得意料理がメヌードというトマト煮込み・息子ゴーガンを叔父のいるミンドロ島に…という会話から、フィリピン出身の女性かと。
メイロンの存在が今作最大のキーポイントになっています。
ドリス (ミシェル・ハリソン)
ドリスは、地獄の施設で異彩を放つオールディーズな女性。
唯一「自殺」の罪でここにいる人物です。
今作は少しキリスト教の概念が絡んでいて、キリスト教では自殺は最も忌むべき命の奪い方。
それでもドリス自身は、他者ではなく己を殺したからみんなとは格が違うというオーラを振りまきまくっています。
30年もこの施設で「自殺」を繰り返し、残された家族の悲しみを背負い続けている、いわばお局様。
エドガーの「あの日」を変えるキーマンでもあります。
…と、この他に、謎のTVオババ様、グループセラピー仲間などが登場。
じわじわ明かされる人物像と共に、罪のあり方・罰のむごさを異種独特な雰囲気に閉じ込めた作品 となっております。
映画【残酷で異常】感想まとめ
無意識の悪がどれほど重い罪なのか。
咎人に科せられた最も残酷な罰は、耐えがたい罪の意識を執拗につつく終わりのない償いでした。
- 悪人というほど悪ではない地味な中年男が主人公
- 自宅付近と謎の施設を行ったり来たりする珍事が発生
- しかも同じ日・同じ結末の繰り返し
- 実は妻を誤って殺害し、自分も亡くなっていることが判明
- 主人公は無自覚の罪を重ね、謎の施設という地獄に堕ちていた
- ただし懺悔と悔恨からささやかな救いも見出し、穏やかに贖罪し続けるお話
今作で特に興味深く面白かったのは、生者に共通する痛みのあり方が死者にとってもイタイ…という罰のエグさ。
痛みには2種類ありますよね。
いつかは癒える肉体的な傷を伴う痛みと、いつまでも消えない心の傷の痛み。
どちらがより残酷な痛みかというと、心を傷つけられる痛みのほうがずっとずっと残酷かと。
嫌な思い出、グサっとくる他人の言動って、忘れてもまた甦ってずーーん…ってきますから。
そんな心の痛みを、あえて思い起こさせるために繰り返し体験させるという罰。
これ以上ない『残酷で異常』な拷問だと思いません?
映画タイトルはくっそ地味ですが、まさにぴったりな言い回しです。
何度も何度も愛する家族を傷つけ、追いつめたことをひたすら後悔し、良心の呵責に耐えられない苦悩が無限にループするだなんて。
地獄の罰はなんて怖いんでしょう…(汗)
さらに今作には、もうひとつコワイところが。
それは他者への配慮が足りず、良かれと思ってナゾの自信で己を突き通す生き方。
もしかしたら自分もそんな生き方をしているかもしれない…
そう思ってしまうほどリアリティある主人公エドガーの姿にも、魂がゾワる怖さがありました。
後悔先に立たず。
死んではじめて自分の愚かさに気付いても手遅れです。
今作を通じて、改めて自分の言動に戒めるべき部分はないかと考えさせられました。
映画【残酷で異常】は、生き方の残酷さと死後の償いの残酷さを現世と常世のループという形で表現し、己を省みることの大切さに気付かせてくれる隠れ名作でした。
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