昭和13年。
ひとつの村を恐怖に陥れた青年がおりました。
身勝手な理由で怨念を募らせ、村人を次々と虐殺。
かつて実際に起こった史上最悪の大量殺人事件を描いた映画【丑三つの村】の世界へとご案内いたします。
この記事で分かること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・DVDブルーレイ情報
【丑三つの村】昭和初期の大量虐殺劇
「丑三つ時」って今で言うと何時?
深夜の2時〜2時半ごろかな。
日本には、1時・2時といった数字による時間表示のほかに、「延喜法(えんぎほう)」と呼ばれる古来からの時間表示方法があります。
「延喜法」とは1日24時間を十二支で示し、2時間ごとにひとつの干支を充てがったもの。
さらにその2時間を30分ごとに4つに分け、今はどの時間帯なのかを確認出来る時刻表です。
まず十二支の始め、「子」は23:00〜01:00を示し、その次の干支「丑」は01:00〜03:00。
「丑三つ時」というのは、丑の刻を30分ごとに分けた3つ目の時間帯、つまり02:00〜02:30を表します。
今作【丑三つの村】は、この「延喜法」による丑三つ時あたり、深夜の時間帯に起こった大量虐殺を描いた作品。
昭和13年に実際に起きた津山事件、もしくは津山30人殺しと呼ばれる出来事のお話です。
- 津山事件とは、昭和13年(1938年)岡山県岡山県苫田郡西加茂村で発生した惨殺劇
- これを題材に、作家・西村望氏がノンフィクション小説を執筆
- 津山事件は、横溝正史氏の金田一シリーズ「八つ墓村」のベースにも
- 今作に登場する村のオープンセットは、「八つ墓村(1977年版)」と同じものを使用
- 全編が非道で残虐的なため、R-18指定
今作の見どころは、実際の事件の顛末がかなりリアルに描かれているところ。
ただ暴力的なだけでなく、閉鎖的な村の忌むべき因習・夜這いという濡れ場もたっぷりあります。
監督は、日活ロマンポルノ出身の耽美・田中登氏。
…ということで、濡れ場はハンパなくエロいです(笑)
それはさておき、ほんの2時間の間に村人30人を血祭りにあげた青年は、なぜ凶行に及んだのか。
今なお語り継がれる昭和の驚愕事件を描いたヒューマンホラー映画 が【丑三つの村】です。
ベースとなった実際の事件、「津山事件もしくは津山三十人殺し」についても解説しています。
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映画【丑三つの村】基本情報
丑三つの村 | 1983年 日本映画 |
ジャンル | 実話ベース・犯罪サスペンス |
監督 | 田中登 |
脚本 | 西岡琢也 |
原作 | 西村望 『丑三つの村』 |
上映時間 | 106分 |
出演 | 古尾谷雅人、田中美佐子、池波志乃、五月みどり、大場久美子ほか |
動画配信サービス | Amazonプライムビデオ(prime対象) |
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【丑三つの村】排他的な村の因習
時は日中戦争真っ只中の1938年。
戦争の長期化により、多くの若者が総力戦に駆り出される国家総動員法が制定された年のこと。
とある田舎村の列車駅にて、赤木厳という青年の出征を見送る多くの人々の様子から物語は始まります。
- この時代、お国のために戦い散ることこそ男の勲章
- 若者にとっても親にとっても、出征は誇らしいこと
- …ということで、駅では村人総出で賑やかにお見送り中
- ただ、赤木の母親は喜ばしくも複雑な面持ち
- そんな中、ひときわ盛大に「万歳!」と見送る青年が
この青年は出征しないの?
徴兵検査をパス出来なくてな。
ゴボウのようにヒョロっこく、顔色悪しなこの青年の名は犬丸継男。
兵士として戦場へ赴くにはあまりにも病弱なため、彼の任務はもっぱら出征兵のお見送りのみ。
- ただ、継男は村始まって以来の秀才と評判の神童
- 村人に会えば欠かさず挨拶、正義感も強い好青年
- 頭の良さを活かし、師範になるため勉強中
- それでも男として出征するのが何よりの夢
出征もできず勉強中って…生活はどうしてるの?
祖母がなんとか面倒みてる。
両親を早くに亡くした継男は、「おばやん」と慕う祖母と2人暮らし。
未だ出征できない自分に苛立ちながらも、継男は勉強に明け暮れる日々を送っておりました。
- 夜遅くまでの勉強がたたったのか、継男はちょっと風邪っぴき
- ばあやんに言われて医者に行くも、風邪ではないらしい
- 美味いモン食って安静にしてればOKとの診断
- 病院から帰る途中、村を離れた先輩・中山と遭遇
中山先輩、ハンチング帽かぶって随分とハイカラな。
見た目に反して、羽振りは良くないようだが。
偶然の再会に喜んだのも束の間。
継男は中山先輩から「金を貸して欲しい」とせがまれます。
- 子供の頃世話になったし…と、しぶしぶ持ち金を貸すことに
- お礼と言っちゃなんだが、中山先輩はエロい写真を継男にプレゼント
- あられもない女体写真は継男にとって超刺激的
- ついでに「夜中の村」でイイコトしちゃえと唆された
「夜中の村」でイイコト??
…継男の村には夜這いの風習があったんだよ。
女を抱けば病気なんてすぐ治る!
…と、なんともいい加減なアドバイスをして颯爽と去っていった中山先輩。
彼のくれたエロ写真と「夜中の村」がきっかけとなり、継男はこのあと一気に色ボケしていくのでございます。
究極の逆恨み
おそらく発禁モノと思われる、中山先輩からもらったエロ写真。
継男もいいお年頃の青年なので、村外れの山でコッソリ眺めて性欲をかき立てていたところ、不意に声をかけられてしまいます。
- 声をかけてきたのは、継男の幼なじみ・やすよ
- 2人は互いに好意を寄せ合う恋人のような間柄
- 継男は慌てて写真を隠し、やすよとちょっとイチャコラ
- 他愛もない会話も交わし、穏やかな時間を過ごした
継男、カノジョいたんだ♪
…男女の仲というほど深い関係ではないが。
継男のことを「継やん」と呼んで慕うやすよとの時間は、エロ写真なんか眺めるよりもずっとずっと充実した時間。
やすよのおかげで心が和んだ継男は、煩悩を取っ払って再び勉強に勤しむようになります。
- ところがある晩、とんでもないモノを目撃
- 珍しく濃い霧が村を覆い、継男はひとり深夜の村を散歩
- …していたら、まだ灯りの点った1軒の民家が
- 格子越しに中を除いたら、なんと男女が乳繰り合い
- しかも生々しく合体中なのは、この家の女房と別の家の男
…これが「夜這い」?
みんながみんな淫らなわけではないが、この村の常習的な因習なんだとさ。
この晩、初めて目にした男女の営み。
その様子を食い入るように見入った継男は、男が赤木勇造、女が千坂えり子であることに気付きます。
実は夜這いをしていた勇造は、夜這い取締りを行う男衆の長。
夜這いの実態を知った継男は、その辺りの大人の事情に矛盾を感じておりました。
- あの日以来、継男は夜這いが気になって仕方ない
- 数日後、継男は思い切って深夜にえり子のお宅訪問
- えり子はごく当たり前のように継男を押し倒し、下半身を弄んだ
- 絶頂を迎えた継男は、まんざらでもない様子
継男くん、目覚めちゃいましたか(笑)
とはいえ、まだひと皮むけてないけどな。
中山先輩にもらったエロ写真から始まり、男女の営み・夜這いに興味深々になった継男。
ある日、何度もばあやんに金の無心をする女性・赤木ミオコからも夜這いに誘われます。
- 継男はホイホイ誘いに乗り、ミオコ相手に初体験
- 以後えり子ともミオコとも肉体関係を続け、すっかり性の虜に
- ただこの村は、誰もがどこかで血縁関係がある可能性が
- 特に継男とミオコは、遠巻きながらも親戚関係
あ…そっか。よそ者を嫌う閉鎖的な村だし…
夜這いありきで、子孫繁栄を繰り返してたんだろうね。
そんな村で「一人前の男」になった継男は、自身が望む真の男になるため、入隊試験を受けることに。
ところが軍医による身体検査で、継男の大きな病が発覚してしまいます。
- ずっと風邪っぽかった継男は、実は肺結核
- この時代、肺結核は不治の病。患ったら差別されることも
- 案の定、村人みんなが手のひら返したように継男を避けた
- えり子もミオコも、継男の夜這いを追い返すように
- 将来嫁に…と思っていたやすよとも別れる羽目に
今までずっと、もてはやされてきたのに。
随分と忌み嫌われて、結核も悪化して。悲報続きだな。
もはや自分を相手にしてくれるのは、2人暮らしのおばやんのみ。
継男の咳はひどくなる一方で、咳き込んで吐血するようになってしまいます。
- 皆が継男を避ける中、村娘・和子が身体を気遣ってくれた
- ばあやん以外で味方してくれるとか、和子は俺に惚れちょる(by.継やん)
- …というのは完全に思い込み。和子は病気を知らなかっただけ
- 結核と知るや否や、化け物でも見るかのように避けまくった
そういや結核ってうつるの?
咳やくしゃみで飛沫感染する可能性がある。
結核菌を吸い込んでも、必ずしも感染するわけではありません。
たいていの場合、免疫力が働いて菌を追い出しますが、高齢だったり免疫力が低下していると発症することも。
今でこそ薬も開発され、きちんと治療すれば治る病気ですが、継男のいた時代、昔は死に直結すると恐れられていたのが結核でした。
ゆえに村人は徹底して継男をハブり、村に害なす人間とみなすようになっていきます。
そんな折、継男は偶然、村の男衆が厄介なよそ者をなぶり殺す様子を目撃。
「次に殺されるのは、きっと俺だ」
そう思いこんだ継男は、殺される前に殺せばいいと考えるように。
そうして着々と村人殺害計画を立て、猟銃と銃弾・日本刀などの武装を整えます。
標的は、村人全員。
特に自分を迫害した人物を中心に、片っ端から虐殺するつもりです。
村人狩りの日時は10月20日の丑三つ時。
「皆様方よ、今に見ておれで御座いますよ」
そう怨みを吐いた継男は、村外れの送電線をちょん切り、村は完全なる暗闇に。
そうしてまず初めに手をかけたのは、なんと1番の味方だったばあやん。
「生きてるうちは悪させんでな…」と言っていたばあやんを鉈で切り殺し、心置きなく惨殺無双を開始したのです。
こうして継男は次々と村人の家に飛び込み、逆恨みしている人々を銃殺・刺殺。
民家はあっという間に血で染まり、村人の9割が犠牲となり… というのが大まかなあらすじになります。
【丑三つの村】登場人物たち
日本の犯罪史の中でも、ひときわ凶悪なトンデモ事件。
身勝手な悲劇を描いた今作は、その事件性を浮き彫りにした豪華俳優陣の名演技も見どころです。
どいつもこいつも腹にイチモツ抱えてそうな、登場人物たちをご紹介いたしましょう。
犬丸継男は、あだ名が「継やん」の今作主人公。
舞台となったこぐれ村では、秀才・真面目と評判の好青年でした。
…が、結核を患い差別されたことを逆恨み、村人30人を大虐殺。
師範になるより兵士になりたかった思いが強く、村を自分の戦場・大虐殺を自分の戦争に見立てた大バカ野郎です。
一通り殺しまくって満足した後、「皆様方よ、さようならで御座いますよ」という名台詞を残して自害しています。
はんは、継男の唯一の家族である祖母。
継男とは、互いにひとり残して生きていけないほど強い絆で結ばれています。
いつなんどきでも継男を想う良き理解者だったのに、はんの想いは継男には届かなかったようです。
やすよは、継男に想いを寄せる幼馴染み。
継男の結核が発覚してもなお、継男を想い続ける健気な少女です。
…が、親の意向で別の男性と結婚・離婚、また別の男性と再婚という人生を歩むことに。
それでも「継やん」への想いは変わらず、なにかと継男に寄り添い続けます。
そんな純粋な少女・やすよを演じたのは、まだ無名だった田中美佐子さん。
この無名時代の輝く初々しさと美少女っぷりに、ぜひ驚いてください(笑)
個人的には、今や釣り好き、もはや釣り人の田中美佐子さんも大好きです(←どうでもいい)
千坂えり子は、継男が初めて夜這いした人妻。
こぐれ村では旦那が出征で留守の間、火照る身体を鎮めるために夜這いを受け入れるのが日常茶飯事だったようで。
継男はたびたびえり子にお世話になるも、ひどい扱いを受けて怨みを抱き、抹殺リストに追加。
えり子の旦那さんはリスト外でしたが、継男は成り行きで夫婦ともども猟銃でズドン!しています。
赤木ミオコは、継男の祖母はんの親戚。
たびたび金を無心しに訪れ、ついでに継男の貞操も無心した人妻です。
身体の相性が抜群だったのか、継男を「男」にしてからも逢瀬を重ねていきます。
…が、他の村人同様、結核の継男をスパッと差別。
子沢山のミオコは、お子さんもろとも血祭りにあげられました。
竹中和子は、継男の病を知らずに優しく接した村娘。
結核と知ってからは、村の誰よりも継男を避けまくり、迫害しまくります。
それでも惚れてると勘違いされ、夜這いにも来られ、家族ぐるみで継男を徹底拒絶。
継男の勝手な思い込みは怨みへと変わり、和子は恐怖を味わいながら壮絶死を遂げることになります。
赤木勇造は、こぐれ村の男衆をまとめる有力者。
村で悪さする人間をいたぶるくせに、己はちゃっかり夜這いしてフンフン言ってるしたたかなオッサンです。
結核の継男に目を光らせ、なんなら殺しちゃおうと画策。
抹殺リスト筆頭に上がるものの、村人殺害計画で継男が唯一仕留め損なった人物でもあります。
…と、この他に、継男に色ボケを仕込んだ中山先輩、夜這い先の旦那たち、最後は殺される村民らがわんさか登場。
濡れ場でウホウホしていると、スプラッターな血の粛清を浴びることになる作品となっております。
【丑三つの村】まとめ
男は戦争に行って初めて一人前。
そんな時代に男になれず、別の意味で男になった青年は、なんとも身勝手すぎる大事件を起こしました。
- 物語の舞台は1938年の片田舎
- 村始まって以来の秀才ともてはやされた青年が主人公
- ただ彼は、身体が弱く出征できずに悶々モンモン…
- そんなある日、村の因習「夜這い」を目撃
- 己も夜這いに夢中になるも、結核を患ったことが発覚
- 村人は結核青年を迫害し、逆恨みした彼は村人を大虐殺
戦争行ってナンボの時代。
男は戦争に行くことこそが名誉だと、出征を夢見た青年には、賢さを活かした生き方もあったはず。
肺結核を患って、閉塞的な村で差別を受けて、心身共に追い詰められて…これは確かに不運ではあります。
だからといって、自分の絶望感を村人のせいにして、もはや逆恨みとしか言いようのないつまらん理由で大虐殺していいはずがありません。
そもそも村きっての秀才が考えるには、動機がお粗末すぎやしませんか。
…と愚痴りたいところなんですが、このお話が実話とは。
映画でびっくり、実話と知ってまたびっくり。
兵士に憧れた青年が、自らひとり戦争を勃発させ、彼が唯一経験した戦場が自身の村だった…。
という皮肉な展開にも、たいそうな衝撃を喰らいました。
時代がなしえた悲劇ですが、全体を通してかなり憤りを感じる内容かと思います。
映画【丑三つの村】は、昭和の驚愕事件の顛末を知ることが出来る貴重な犯罪史映画 でした。
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