【笛を吹く男】韓国映画のあらすじは?童話がベースのヒューマンホラー

ホラー

朝鮮戦争直後の混乱期。

地図にもない山奥の村に、ある親子が迷い込んでしまいます。

のどかで平和な様相の裏にあるのは、狂気と闇に包まれた閉鎖的な集団心理。

ドイツの民間伝承を韓国カラーに染め上げた、ヒューマンホラー映画【笛を吹く男】の世界へとご案内いたします。

 

この記事で分かること

  • あらすじ概要・出演キャスト
  • 予告動画・DVDブルーレイ情報

 

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【笛を吹く男】童話がモチーフの異色作

ハーメルンの笛吹き男

たける
たける

カラフルなおっさんと…ネズミ??

REON
REON

…が出てくる、ヨーロッパの童話があるんだよ。

映画【笛を吹く男】は、グリム童話のひとつ『ハーメルンの笛吹き男』をモチーフにした韓国映画。

ネズミ被害に困った人々を助けたのに裏切られ、復讐を果たす男の悲劇を描いたお話です。

 

  • 童話をただ映画化したのではなく、韓国の土俗信仰が根底にある
  • 見知らぬ「ソン(客人)」に対する畏れと排斥は、まさに狂気
  • …ということで、原題は「손님」=お客さん
  • 英題は、ハーメルンの伝承を意味するパイドパイパーから「Piper」=笛を吹く人
  • 韓国演技派俳優たちの濃い濃いな演技が見どころ

 

童話を重苦しい雰囲気に仕上げたあたりは、さすが韓国映画といったところ。

軽快なシーンでさえも怪しげな香りが漂い、人間が何よりも恐ろしいというヒトコワの神髄が味わえます。

名もなき小さな村で起こった惨劇を、容赦なく残酷に描いたヒューマンホラー映画【笛を吹く男】です。

 

モチーフとなったドイツの童話《ハーメルンの笛吹き男》についてもお届けしております。

グリム版のあらすじ・教訓・驚きの裏話など、こちらもあわせてどうぞ↓

童話《ハーメルンの笛吹き男》のお話は?教訓や実話説を徹底解説
ドイツにある小さな街・ハーメルン。 そこには古くから語り継がれる、謎のお話がありました。 グリム童話のなかでもひときわ不気味な光を放つ、『ハーメルンの笛吹き男』についてお届けします。 この記事で分かること 童...

 

映画【笛を吹く男】基本情報

笛を吹く男2015年 韓国映画
ジャンルホラー・ファンタジー
監督・脚本キム・グァンテ
上映時間119分
出演リュ・スンニョン、イ・ソンミン、チョン・ウヒ他
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【笛を吹く男】小さな村と2人の余所者

笛を吹く男

物語の舞台は、1950年代の韓国のどこか。

朝鮮戦争休戦直後の混乱が残る中を、とある父子がソウル目指して旅しておりました。

 

  • 父の名はウリョン。左足が不自由だけれど笛が得意な流れ者楽士
  • 息子の名はヨンナム。なんとも可愛い坊ちゃん刈りのメガネっ子
  • 2人の旅の目的は、ソウルにいるアメリカ軍医に会いに行くこと
  • というのも息子のヨンナムが、肺病らしき病に侵されているから

 

たける
たける

また随分な山道を…。

REON
REON

…えっちらおっちら歩いて旅してるな。

ときおり咳込み、肺病になってごめんなさいと言うヨンナム君は、父親思いの賢いお子さま。

一方の父・ウリョンも、自分の命より我が子が大事という人の良い父ちゃんです。

 

  • そんな仲良し父子は旅の途中、激しい嵐に見舞われた
  • どこか雨露しのげる場所は…と、山奥のほったて小屋を発見
  • 2人は身を寄せ合い、そこでひと晩過ごすことに
  • 翌朝には嵐が過ぎ去り、近くの村を探そうと出発
  • すると小屋の目の前に、茂みに隠れた小さな道が

 

たける
たける

父ちゃん、道がある!行ってみよう!

REON
REON

…子供ってほんと好奇心旺盛だよな。

昨日まではなかった小道を訝しみ、その先へ行くことを躊躇ったウリョン。

ところがヨンナム君が先走り、止めるのも聞かずにズンズン奥へと歩き進んでしまいます。

 

  • ヨンナム君を追うように、仕方なくウリョンも小道へ
  • 少し行ったところに、草むらに見せかけた戸板が
  • どうやら夕べの嵐で倒れたらしく、この先には一体何が?
  • …とさらに進んだら、小さな村に辿り着いた

 

たける
たける

なんだ、こんな近くに村あったじゃん。

REON
REON

…戸板で入り口カモフラージュしてた閉鎖的な村がな。

ウリョンとヨンナム君が辿り着いたのは、なんとも長閑で平和そうな村。

男衆は農作業に精をだし、女衆はせっせと炊き出しをし、子供たちは仲良く元気に遊び回っておりました。

 

  • ところがウリョンとヨンナム君の姿を見て、子供たちが逃げ出した
  • 村の大人も騒然とし、よそ者が来たとヒソヒソ話
  • そんな様子を知った村長は、父子を自宅に招待
  • 食事をもてなし、そこはかとなく歓迎した

 

たける
たける

なんか村人みんな感じ悪っ!

REON
REON

…どこの誰だか分からんよそ者だ。警戒されても無理なかろう。

草ボーボー扉で存在を隠してきたこの村に、外から人がやって来たのはこの父子が初めて。

村長がわざわざ招き入れたのは、村人の不安を拭うため、2人の素性を探るためでもありました。

そんなこととはつゆ知らず。

ウリョンは村長の質問に対し、ひとつずつ丁寧に答えていきます。

 

  • 笛吹きが得意なので、薬売りの客寄せをしていたこと
  • 妻は戦争で亡くなり、自分も足が不自由なこと
  • 戦争が終わったので、息子の病気を治すために旅をしていること
  • アメリカ軍医がくれたメモを頼りにソウルに向かってること

 

たける
たける

メモにはなんて書いてあったの?

REON
REON

…「kiss my ass monkey」消えろ、サルだと。

メモを見せてもらった村長は、正しく理解していないウリョンを害のない人物と判断。

ほんの数日、ここで世話になりたいと申し出る父子の願いを聞き入れ、ひとつだけ約束を交わします。

「戦争が終わっていることを、村人に絶対話すな」

そんなことならお安い御用…とウリョンとヨンナム君は約束を守ることを誓い、村長の一存で村に滞在することになったのです。

 

村の秘密と親子の運命

笛を吹く男

戦後で貧しく物騒な外界とは違い、全てが平和で豊かな村。

寝食困らないようにと良くしてもらったウリョンは、お礼に得意の笛を披露します。

 

  • その日、村では赤児誕生祝いが行われていた
  • その祝いを盛り上げましょう、と笛をピーヒャラピーヒャラ
  • それでも村の大人たちは、よそ者ウリョンを相変わらず毛嫌い
  • ところが子供たちがピーヒャラを気に入り、笛に合わせてちょっとダンス
  • 和んだのも束の間、その脇でタマゴを調理していた若い村娘に異変が

 

たける
たける

うげぇ〜。血の色のタマゴ気持ち悪い…。

REON
REON

…神が降りて来た吉報なんだとさ。

若い村娘の名はミスク

チョンジュ(清州)の奥さんと呼ばれる未亡人で、彼女には巫女の素質がありました。

しかし巫女としての特別な力はまだなく、役立たずとなじられることもしばしば。

そんな彼女が割った血のタマゴとは、巫女として目覚めた証・特別な力を授かったことを示す御告げだと考えられていたのです。

 

  • これはめでたい!とすぐさま祝いの宴が
  • ウリョンとヨンナム君もご馳走になり、やがてお開きに
  • その晩ウリョンは村長に連れられて、村人の集会に参加
  • そこでは村人が、もう我慢ならねぇ問題を議論中

 

たける
たける

チューチューー🐭

REON
REON

…これがまた、ひどく凶暴なんだよな。

もう我慢ならねぇ問題とは、時も場所もわきまえずに大量出没するネズミちゃん。

コイツら罠を仕掛けても毒を盛っても、ニャンコを投入しても一向に減りません。

それどころかニャンコを喰い散らかし、赤児まで狙われ耳を齧り切られた子も。

 

  • ネズミ狩りの責任者は、村長の息子ナムス
  • 今は打つ手がないのでニャンコ生肉をネズミに献上中
  • それじゃ埒があかん、もっと根本的な対策はよ!
  • これを聞いたウリョンは、笛を使ったネズミ退治を提案

 

たける
たける

何言っちゃってんの、このよそ者は?

REON
REON

…獣は笛の音に反応するから、ネズミ駆除も可能だそうだ。

村人の痛い視線を浴びながら、ウリョンはおもむろに笛をピーヒョロロ。

すると闇夜に紛れた鳥や獣たちが、一斉にザワつき始めたのです。

この現象に驚いた村人たちは、ただいま絶賛怯え中。

ただ村長だけは動じることもなく、笛吹き男・ウリョンの提案にとても乗り気でした。

 

  • 村のネズミを追いだしたら、牛1頭分の報酬を出すと持ちかけた
  • 牛1頭分はかなりの大金。ヨンナム君を治療してもあまりある金額
  • そんな大金よそ者に!?…と村長の息子ナムスが猛反対
  • 村人はというと、絶大なる信頼を寄せる村長の意見にみな賛同
  • …ということで、ウリョンは駆除を請け負うことに

 

たける
たける

ほんとにネズミ駆除できんの?

REON
REON

…笛だけでは難しいが、ちゃんと秘策もある。

笛の楽士として薬売りの客寄せをしてきたウリョンには、その時学んだ薬の知識が。

ネズミが嫌う薬粉を作り、ネズミが好む薬粉も作り、村の地の利を活かせば必ずや駆除できる!

…という確固たる自信がありました。

 

  • まずはネズラブな粉を、村外れの祠まで道のように散布
  • 次にネズキラーの粉を、山から吹き下ろす風を用い村を覆うように散布
  • ネズキラーで家屋から誘き出し、ネズラブに食いつかせる算段
  • さらに笛の音で誘導し、祠に連れ込んで巨石で塞げば一丁あがり

 

たける
たける

…ネズミいすぎ((;゚Д゚)))))

REON
REON

…こんなに居たら、そりゃ生活も困るわな(汗)

息子ヨンナム君のお手伝いもあり、見事ネズ駆除に大成功したウリョン。

初めはよそ者と嫌っていた村人も、悩みの種をなんとかしてくれた2人にすっかり懐いていきました。

 

  • そんな村人の変化をよく思わない人物が
  • ネズ担当だった村長の息子ナムスは面目丸潰れ
  • もてはやされる2人に対し、村長も心中穏やかではない
  • そもそもこの村には全員が背負うべき大きな秘密がある
  • 団結力を揺るがしかねないあの父子は、今や危険そのもの

 

たける
たける

平和な村が、より平和になったのは…。

REON
REON

…ウリョンとヨンナム君のおかげなのにな。

実はこの村は、戦争中にアカと呼ばれる中国軍の襲撃を受け、村長や今いる村人が一度は捨てて離れた場所。

行き場がなかった村長たちが再び村に舞い戻り、村に残っていた巫女やライ病患者を虐待死させた過去がありました。

ネズミに悩まされるようになったのも、村長と男衆が巫女を焼き殺したあの日から。

この秘密を外の人間に知られてはならない、秘密を知ってる人間が外に出てはならない。

それがこの村の絶対的指導者である、村長が強いる平和の礎でした。

しかし偶然迷い込んだ父子の存在が、村人の心を動かす小さな起爆剤となり、ウリョンに誘われ外へ行きたいと思う者も出始めてしまいます。

そこで村長は村人に対し、こんな真っ赤な嘘をでっち上げ↓

「あの父子はアカ(中国軍)のスパイだ。ネズミ駆除の報酬は、奴らの活動資金になってしまうぞ」

そんな話になっているとも知らず、ウリョンはネズミ駆除の報酬をもらいに集会所へ。

ところがネズミを追い出したのはお前ではなく、巫女ミスクだと村長に言われてしまいます。

周りにいた村人も、ウリョンをスパイだ裏切り者だと罵って、誰ひとり味方してくれません。

そんな難癖を聞き流し、報酬の包みに手を伸ばしたところ…。

なんと村長の息子ナムスが、ニャンコ解体刃物で彼の指を3本ほどバッサり。

報酬どころか指を失い、笛までも取り上げられたウリョンは、その場でヨンナム君と共に村を追われることに。

しかし村長が煽動する非道な仕打ちはこれで終わりではなく、ヨンナム君が命を落とす結果になってしまいます。

悲しみに暮れたウリョンは笛吹き男らしい方法で、村人全員を血祭りにあげることに… というのが大まかなあらすじになります。

 

映画【笛を吹く男】

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【笛を吹く男】登場人物たち

人の良い父子に対し、恩を仇で返した村人たち。

トップクラスの韓国個性派俳優たちが集結した、登場人物たちをご紹介いたしましょう。

 

キム・ウリョン(リュ・スンニョン)

ウリョンは笛が得意な流れの楽士。

幼い頃に楽団に売り飛ばされ、そこで何度も鞭打たれて左足が不自由になりました。

ウリョン演じたリュ・スンニョン氏は、韓国でも指折りの名演技派俳優。

朗らかな笑顔と鬼神のごとき形相を、ひとつの役柄に閉じ込めた演技力はまさに圧巻です。

リュ・スンニョン氏は、こちら作品でもまた違った魅力を振りまいています↓

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ヨンナム (ク・スンヒョン)

ヨンナムは、楽士であるウリョンの一人息子。

目が悪く、歯も痛く、肺病も患っているという不憫な少年です。

見た目がとっても可愛くて、ちょっとのび太はいってます(笑)

 

村長 (イ・ソンミン)

村長は、地図にもない村を治める絶対的君主。

集団生活、集団思想を上手いこと操る腹黒い人物です。

村長を演じたイ・ソンミン氏は、演技派で知られるトップ俳優。

この役柄が似合いすぎ、というか怖いくらいの演技力です(笑)

ウリョン役のリュ・スンニョン氏との共演・掛け合いは、かなり贅沢な演技合戦と言っても過言ではありません。

 

ナムス (イ・ジュン)

ナムスは、村長の一人息子である青年。

最初からウリョンを嫌い、妬んで嫉んで最後には指チョッキンするとんでもない輩です。

演じたイ・ジュン氏は、MBLAQ(エムブラック)という歌手グループのメンバーとして活躍していたこともある、歌手兼俳優さん。

綺麗な顔立ちの胸くそ野郎を、印象深く熱演しています。

 

ミスク (チョン・ウヒ)

ミスクは、村の巫女見習いをしている若き未亡人。

ほんとは巫女の素質など全くなく、村長から集団生活の義務だと脅されて巫女っちゃってる人物です。

村に馴染めず孤独を感じ、外から来たウリョンたちに想いを寄せるように。

演じたチョン・ウヒさんは、映画《ハン・ゴンジュ 17歳の涙》で主演、映画《哭声/コクソン》にも出演している演技派女優さんです。

 

…と、この他に、小さな集落の村人たちや子供たち、村の秘密に関わるかつての巫女などが登場。

人間の怖さをひしひしと感じる、絶えず不穏な空気漂う作品 となっております。

 

 

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【笛を吹く男】感想まとめ

笛を吹く男

温厚そうな村長と、よそ者に怯える村人が暮らす名もなき村。

そこへ迷い込んだ楽士の父子は、とんでもない目に遭わされます。

  • 村は外界との繋がりを断った超閉鎖的な場所
  • 楽士の父子は、いわば招かれざる客人
  • 致し方なく村長が招き入れ、2人は世話に
  • そのお礼に村のネズミ駆除を請け負い、見事一掃
  • …したのに報酬ナシで追い出され、指も息子も失った

一見平和、でも不穏。

その中で徐々に露わになっていく人間の悪意・集団心理は、観ていてゾワゾワ気分が悪くなります。

人の良さにつけ込んで、恩を仇で返す村人たちはどいつもこいつも畜生ばかり。

自己保身のために攻撃する者、周りの不安を煽る者、それを煽動して諌める者。

今作には「最も悍(おぞ)ましきは人間の心」というキャッチコピーがついてるんですが、まさにその通りです。

情け容赦ない酷い仕打ちも、それを倍返しする鬼の所業も、心に潜む狂気の表れ。

映画【笛を吹く男】は、血塗れのグロも精神的なグロも、ネズ大量のグロもある恐ろしい韓国映画 でした。

 

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