冬になると雪と紅い粘土質の土壌が混ざり合い、まるで大地が血を流しているかのように深紅に染まる丘クリムゾンピーク。
ここにはポツリと一軒そびえ立つ古めかしくも妖美な館がありました。
人里離れたこの場所を彷徨う紅い幽霊は、何に囚われ何を伝えに現れたのか。
独特の感性と繊細な描写が織りなす執念と怨念、縛られた感情と魂を描いたゴシックホラー映画【クリムゾン・ピーク】の世界へとご案内いたします。
この記事でわかること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・動画配信サービス・DVD情報
【クリムゾン・ピーク】ゴシック建築とモダンな世界
ゴシック建築の建物って、なんだか荘厳だよね。
…こういうのがまたホラーの舞台に合うんだよな。
歴史を感じる古びたお屋敷って、日本家屋でも西洋のお屋敷でも幽霊話が絶えませんよね。
そもそも幽霊っているの?いないの?と聞かれると、私は…幽霊はいるようないないような曖昧な解釈です。
人は誰しも目で見えて初めてモノの存在を認めるかと思います。
それでも「幽霊を見た」「幽霊はいる」と言われると、なんだか実在する気にさえなってきます。
そんな曖昧な存在の幽霊を見たことがある一人の女性が巻き込まれた、そらおぞましい恐怖体験を描いたホラー映画が【クリムゾン・ピーク】 です。
映画【クリムゾン・ピーク】基本情報
クリムゾン・ピーク | 2015年 アメリカ・カナダ映画 |
ジャンル | ゴシック・ホラー |
監督 | ギレルモ・デル・トロ |
脚本 | マシュー・ロビンス、ギレルモ・デル・トロ |
上映時間 | 119分 |
出演 | ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン他 |
動画配信サービス | Amazonプライムビデオ(レンタル作品) |
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【クリムゾン・ピーク】活気と成功の街・バッファロー
物語の最初の舞台となるのは、20世紀初頭のアメリカ・ニューヨーク州。
工業地域として有名な北西部の街バッファローに、鉄鋼業で財を成した資産家の一人娘イーディスというお嬢様がおりました。
- イーディスは現在24歳のうら若き乙女
- 女性の社会進出の機会も増え、イーディスは小説家を目指していた
- コツコツ手書きで執筆した小説のジャンルは、一般ウケしそうにない幽霊話
幽霊ネタだなんて。ちょっぴりマニュアックだねー。
子供の頃に幽霊を見たことがあるから、書きやすかったんじゃない?
実はイーディスは現在父一人娘一人の身の上です。
母上は彼女が幼い頃にコレラで他界。今でこそコレラはワクチンや治療法も確立していますが、昔は強い感染力と高い致死率の流行り病でした。
そのため、柩で眠る母上の姿をひと目みる機会もないままお別れした過去があります。
そして数年が経ったある晩に、思いもよらぬ形で母上と再会することに。
- 骨と皮だけになり黒く干からびた母上の幽霊が
- 『イーディス…時が来たらクリムゾンピークに気を付けなさい』という伝言を残して去って行った
ぎゃーーーーーー(泣)。
…幽霊って生きてた時の姿じゃないんだな。
この時イーディス若干10歳。
怖がりはしてたものの、泣き叫ぶことなく「クリムゾンピーク?なんのこっちゃ」という幽霊遭遇体験をしていたんです。
こんなことがあって以降、イーディスは創作意欲を膨らませて幽霊小説をコツコツ執筆。
ところが父上のコネで原稿チェックをしてもらった編集者からはダメ出しを喰らい、家族ぐるみで付き合いのある婦女子からはマウンティングされることも。
それでも決して凹まないイーディスは、せっせとオカルト腐女子力アップに努めておりました。
夢追い人のめぐりあわせ
こんなオカルト腐女子に育っちゃって、お父上は心配しなかったの?
心配どころか応援してたよ。
イーディスのお父上は資産家の大金持ちですが、元々は鉄鋼業に勤しみ努力して成功を掴んだ苦労人。
可愛い愛娘が追い求める夢の成功を祈り、なにかと背中を押してくれていました。
- いつも直筆で原稿を仕上げるイーディスに万年筆をプレゼント
- 次作はタイプライターで書き上げたいといえば会社のタイプライター使用を許可
- 社交パーティーなどの参加も無理強いせず、好きなように過ごさせた
イーディスにとって「小説家」であることを認めてくれる唯一の人物がお父上です。
周囲は「もっと女子力上げないとお嫁に行き遅れますわ、オホホ」だの「人は誰でも恋に落ちるから、恋愛小説を書けばいいのに」だのとイチャモンつける者ばかり。
…まぁ確かに現代でも恋愛モノは映画もドラマも小説も、みんな喰いつき良いよね。
…そこへお父上以外、もう一人イーディスの小説を認める人物が現れるんだ。
遠路はるばるイングランドの片田舎から、姉とともにやって来た準男爵の爵位を持つトーマス・シャープ。といっても貴族ではありません。
貴族と騎士の間の身分、商工業で功績を挙げた上流階級市民に与えられる称号が「準男爵」です。
彼もまた、イーディスのように成し遂げたい夢に取り組む夢追い人であり、このたび折り入ってイーディスのお父上にお願いがあって渡米してきました。
- Youは何しにアメリカへ?というとスポンサーを探しに来た
- モノを開発することが好きで、現在赤粘土掘削機の発明中
- 英国産の赤粘土は質が良く、英国王室御用達のレンガの材料でもある
- 掘削機の発明開発が成功すれば収益はウハウハ
発明開発以外に特に収入のないシャープ家は、すでに資産もカツカツ。
資金融資さえ受けられれば間違いなく収益を生み出す発明品だから、と世界各地の資産家のもとを訪れ、プレゼンしまくっていたんです。
で、いつイーディスの小説読んだの?
あぁ、ちょうどプレゼンの日にイーディスが会社のタイプライターで原稿書いててね。そのときサラッと流し読みしたんだよ。
みながケチョンケチョンにけなす自分の小説を面白いと評価してくれたトーマス。
そりゃ頑張って書いた作品に興味を示して認めてくれる人物に出会ったら、惹かれないわけがありません。
惚れた腫れたと色恋沙汰に全く興味がなかったイーディス。
物腰も柔らかくイケメンで、衣服こそボロっちいものの上質なスーツに身を包むトーマスに恋心を抱くようになりました。
身辺怪しいシャープ姉弟
イーディスはオカルト腐女子ですが、周囲に素敵な殿方がいなかったわけではありません。
現在医者の職に就くアランという幼馴染がいます。
ただ、アランはいつもイーディスのことをマウンティングしてくる婦女子のお宅のご子息でもあります。
- アランとしては、ちょっとイーディスに気がある
- イーディスとしては、幼馴染なので恋愛対象としてアウトオブ眼中
- そもそもアランの家族のミーハー婦女子とはウマが合わない
- トーマスの姉ルシールとは気が合った
次第にイーディスはトーマス&ルシール姉弟と3人でお出掛けするようになります。
…が、この親交を懸念したのがお父上です。
なんとなく虫が好かない、なんか胡散臭いという理由で姉弟の身辺調査を依頼。
準男爵家なんだから身分はしっかりしてるし、お父上、ちょっと言い掛かりなんじゃ…
我が子を愛する父上の直感をなめたらいかんぜよ。
どうやらトーマス&ルシール姉弟には、愛娘と交友するには相応しくない秘密があった ようで、もちのロンでスポンサー契約の話はお流れに。
お父上は早々にイーディスと引き離さねばと小切手を握らせ、英国に追い返すことにいたしました。
【クリムゾン・ピーク】カンバーランドの幽霊屋敷
こうしてなかなか母上の幽霊以外が登場しないまま、ホラーであることをすっかり忘れる展開が続く映画【クリムゾン・ピーク】の物語。
このあと一気に急展開していきます。
あ…。忘れてた。今作はホラーだったね(笑)
…ほぼオカルト腐女子と発明オタクの恋愛話になってたな。
胡散臭く秘密があるトーマス&ルシール姉弟を愛娘から引き離すことに成功した父上。
話はトントン拍子に進んだかのように思えたその直後…お父上とイーディスに悲劇が襲います。
- お父上が自室のバスルームで血まみれに
- 誰がどう見ても顔面陥没するほどの激しい殴打が死因
- ところが誤って洗面台に頭をぶつけてお陀仏という検死結果に
節穴すぎるずさんな捜査と検死によって、お父上は事故死扱いになりました。
この急展開はどうもキナ臭いね。
…そう思って幼馴染のアランはちょっと色々調べ始めたよ。
そんなアランの心配をよそに、イーディスはこれみよがしのトーマスの求婚を受け入れ渡英。
遺産の処分も全て顧問弁護士に任せ、悲しみから逃れるようにアメリカを離れて英国に移り住むことになったんです。
オンボロ屋敷と母上の伝言
準男爵トーマスの妻となったイーディスが訪れた先は、イングランド北西の端にあるカンバーランド。
現在ではカンブリアの一部になっている地域です。
- シャープ家のお屋敷は「アラデールホール」と呼ばれている大きな館
- 外からみれば立派だが、中は天井に穴が開き、床板も腐って沈んでいる
- 薄暗い上に館が軋み、つねにラップ音ばりの奇怪な音も
- 修理しようにも今は使用人はおらず、暮らしているのもトーマスとルシールのみ
幽霊さんたち、スタンバイOKでーす!
…もう、いかにもな雰囲気出まくってる屋敷だな。
こんなボロっちいアラデールホールですが、もともとオカルト腐女子なイーディスは若干ワクワクした表情で足を踏み入れます。
そしてワクワクしているのはトーマスも同じ。
イーディスが嫁に来てくれたおかげで遺産が発明開発資金となり、こんなことを言いながら掘削機の開発に精を出しておりました。
トーマス『雪が降ってクリムゾンピークになる前に完成させなくちゃ』
イーディス『!!…今なんて?』
トーマス『あぁ、土壌の赤粘土が混じって雪が赤く染まるから、ここら辺はクリムゾンピークって呼ばれてるんだ』
なにげない夫トーマスとの会話で母上からの伝言を思い出したイーディスは、屋敷内でたびたび幽霊を見るようになりました。
彷徨い歩くは紅き幽霊
いくら幽霊小説も執筆するオカルト腐女子とはいえ、イーディスはちょっと霊感が強いかも程度の普通の女性です。
幽霊耐性があるわけでも、除霊脳力があるわけでもありません。
- そもそもそも初めて見た幽霊は大好きな母上だった(黒く干からびて怖かったけど)
- ここで遭遇するのは、どこの誰とも知らない幽霊(しかも全身真っ赤だし)
ギャーーーーーーーーーー(泣)。
…うん、確かにけっこうビビる。
たびたび遭遇するようになった紅き幽霊のせいなのか。
イーディスはアラデールホールに住むようになってから、次第に衰弱してしまいます。
気分は優れず食欲もなく、咳込めば血を吐くことも。
『このままでは幽霊に取り憑かれる…』
頼れる夫トーマスに相談するも、発明に夢中な彼は「気のせいだ」と軽くあしらい、身体を気遣って看病してくれる姉ルシールも大丈夫と言うばかり。
それでも一向に善くならないイーディスは、ある時こんなことに気づきました。
- よくよく見ると、幽霊はそれぞれ脳天に斧・頬骨陥没・赤児を抱いてるなどの特徴が
- これは…殺されて何かを伝えたくて現れたのでは?
- そういえば母上の幽霊も伝言しに来ただけだった
伝えたいことがあるにしても、急に出てくるのやめて…。
…そうは言ってもこれ、ホラー映画だし。それになんか登場の仕方が貞子っぽくて親近感あるぞ。
こうしてイーディスは持ち前の好奇心とオカルト腐女子魂を奮い立たせ、屋敷を彷徨う紅き幽霊の秘密を探ることに。
そして遠く離れたアメリカでは、彼女の身を案じる者が動き始めます。
そう。幼馴染のアラン。
彼は、イーディスの父上が生前知りえたトーマス&ルシール姉弟の秘密を知り、イーディスに身の危険が迫っていることを察知したのです。
クリムゾンピークにそびえ立つアラデールホール。
果たしてここに出現する幽霊は、この屋敷が生んだ怨霊なのか。
それとも姉弟の秘密と深く関わっているのか…というのが大まかなあらすじになります。
【クリムゾン・ピーク】物語のカギを握る生身の登場人物たち
今作映画【クリムゾン・ピーク】は深紅の大地で紅く染まった幽霊に驚かされるホラー作品。
…ですが、命ある生きた方々が常にストーリーの軸にいます。
幽霊よりも執念深く、幽霊よりもドロドロとした醜さのある登場人物をご紹介いたしましょう。
イーディスは小説家志望で幽霊を信じるお嬢様。今作の主人公です。
当初はイーディス役に、映画《ラ・ラ・ランド》主演のエマ・ストーン起用の予定でしたが、結局出演を見送ることに。
代わって主役を射止めたミア・ワシコウスカが、「クリムゾンピーク」で紅き幽霊に遭遇するも臆することなく徐々にその秘密を暴くイーディスの姿を好演しています。
トーマスは容姿端麗、準男爵の爵位も持つ英国紳士。イーディスの初恋の相手であり夫になる人物です。
トーマス役も当初はベネディクト・カンバーバッチ起用の予定でしたが、こちらも主人公イーディス同様キャストが変更に。
最終的にトーマスを演じたトム・ヒドルストンは、実際に容姿端麗・頭脳明晰・ケンブリッジ大学で最優秀成績を修め、ご先祖様は準男爵という英国紳士。
まさにこの役にピッタリの優雅かつ品格ある演技は見応えがあります。
ルシールはトーマスの2つ上の姉。優しく温かみのある女性ではありませんが、ところどころで他人を思いやる素ぶりを見せる妖艶さが。
誰よりも弟を愛し、イーディスのことも大切にしてくれますが、その本心は無表情過ぎてうかがい知ることができません。
裏の顔がありそうな姉ルシールを演じたジェシカ・チャステインは、ナチュラルメイクの平野ノラさんに似てるかな、という気がします。
アランはイーディスの幼馴染みの医師。
海外で医学を学んできたのか、地元バッファローに帰国後に眼科医として開業しました。
イーディスに好意があるようなないような…
微妙な存在のアランは、もっぱら今作を鑑賞した方々からは「わけのわからない発明家トーマスより、イケメンで医者のアランの方が良いのに」という評価も。
たしかにイケメンなチャーリー・ハナム演じるアランですが、残念ながら出番はそんなに多くありません。
…と、この他には、イーディスの父上、母娘でキャッキャと女子力上げることに熱心なアランの家族、シャープ姉妹の謎を調べる探偵などが登場。
スプラッターでもなく、オカルト色が強いわけでもなく。
どちらかというと芸術色の濃い、怖くないホラー作品となっております。
登場人物もさることながら、なんといっても音楽が素敵
今作の見どころとして、私が推したい部分がひとつ。
それはまだ40代の映画音楽作曲家フェルナンド・ベラスケスが手掛けた劇中クラシック音楽です。
物憂げで危うく、妖しげで切ない今作の世界観をさらに見応えある作品へと押し上げています。
怖いというより美しささえ感じるのは、彼の楽曲のおかげもあるかと。クラシック好きな私にはたまらない名曲の数々です。
イーディスとトーマスの舞踏ワルツ曲『Valse sure une berceuse anglaise』↓
劇中ルシールがピアノ演奏する子守唄『Lullaby Variation』↓
繊細で物憂げなクリムゾンピークの世界観をまるごと堪能できるサウンドトラックもおすすめです。
楽曲ごとの曲名も把握出来ますが、1時間ほどのボリュームでノンストップ再生。
クラシックがあまり好きじゃないけどクリムゾンピークの曲って良いよね、というあなたの安眠のお手伝いに是非どうぞ(笑)
Fernando Velazquez『Crimson Peak Original full Soundtrack』↓
【クリムゾン・ピーク】まとめ
「クリムゾン」とは若干青みがかった濃い赤色のカラーネーム。
ブラウザでも#dc143cのコードで表示可能な、マゼンダと赤の間にある深紅のこと。
- 舞台は20世紀初頭のアメリカとイングランド
- 鉄鋼業の資産家のお嬢様と準男爵の爵位を持つ英国紳士が主人公
- かつて母の幽霊から警告された「クリムゾンピーク(深紅の丘)」で巻き起こった惨劇の秘密
真っ赤なクリムゾンカラーに染まった雪の大地や幽霊。
いかにもものすごいスプラッターなホラー映画かと思いきや、際立っていたのは古い館や衣装の美しさ。
たしかにホラーと銘打ってるだけあって、幽霊登場シーンはビクッと驚く怖さがあります。
しかし今作【クリムゾン・ピーク】は、幽霊の存在や彷徨う魂に怖さはなく、むしろその奥に隠された悲しい出来事や狂った人間模様。そこに怖さの焦点をあてたホラー作品でした。
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