アメリカ史上最も最悪で最大の黒歴史とも言われる1967年のデトロイト暴動。
些細なことから始まった白人警官と黒人住民との衝突は、さらに国境警備隊や陸軍までも駆り出された事実上の内戦となりました。
終息まで5日間。デトロイト暴動の最中に起こった不当弾圧の真相を描いた映画【デトロイト】の世界へとご案内いたします。
この記事でわかること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・動画配信サービス・DVD情報
【デトロイト】アメリカの黒歴史ともいえる最大の暴動
ねぇ、時々「レイシズム」って言葉聞くんだけど、どういう意味?
人種主義、民族主義…人種差別主義って意味もあるな。
世界中どこの国でも少なからずある差別や偏見。
特に顕著なのがアメリカの有色人種に対する徹底した差別問題です。
今でこそ少しはマシになりましたが、未だなくならない黒人差別は、アメリカにとって杞憂される社会問題でもあります。
- 長きに渡り、アメリカは黒人を奴隷として扱ってきた
- かつて綿花栽培などのプランテーション産業が盛んだったアメリカ南部では、黒人奴隷が主な労働力
- その一方で、急速な工業化が進んだアメリカ北部は、南部の奴隷制や貿易のあり方に反発
- 奴隷制を支持する南部奴隷州と、奴隷制を認めない北部自由州がいがみ合うことに
奴隷制への対立はさらに激化し、1861年〜1865年には南北戦争に発展。
この最中にリンカーン大統領が奴隷解放宣言を発表し、南北戦争終結後には正式に合衆国憲法で奴隷制度が廃止に。
その後、人ではなく隷属する家畜同然の扱いを受けてきた黒人は、1910年頃を境に次第に南部から大移動。
早くから黒人奴隷に異議を唱える州が多かった北部に移住する者が増加しました。
ようやく待遇が改善されたんだね。
…とはいえ差別まで撤廃されてたわけじゃないんだがな。
- 黒人は白人より低賃金で労働に従事
- 狭い住宅街に押しやられ、スラム化した街の治安は悪化の一途
- たびたび警官と黒人住人との間でイザコザが発生
- 奴隷という扱いこそないが、人種差別の軋轢が広がった
- 1960年代には黒人の公民権運動も過熱し、北部ミシガン州のデトロイトも白人と黒人が一触即発状態
こうした長年の鬱憤と不運が重なり、1967年ついに内紛とも呼べる黒人大暴れの大暴動が勃発。
この事態を収拾すべく、白人警官は根強く残る差別意識と黒人に対する嫌悪感を顕にした理不尽な逮捕・尋問・虐殺を遂行します。
いくつもの納得いかない当時の裁判記録や関係者の記憶を洗い直し、セミドキュメンタリーとしてキャスリン・ビグロー監督が映像化。
履き違えた正義の恐ろしさを描いた映画が【デトロイト】 です。
映画【デトロイト】基本情報
デトロイト | 2017年 アメリカ映画 |
ジャンル | 歴史・ヒューマンドラマ |
監督 | キャスリン・ビグロー |
脚本 | マーク・ポール |
上映時間 | 143分 |
出演 | ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス他 |
動画配信サービス | Amazonプライムビデオ(prime対象) |
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映画【デトロイト】暴動の始まりは違法酒場へのガサ入れ
舞台はミシガン州のデトロイト。
ここはアメリカの自動車産業を支える巨大都市に発展した工業都市です。
そういやフォードとかゼネラルモータースとかクライスラーってデトロイトが発祥だよね。
あぁ。もともとデトロイトは19世紀頃から馬車や自転車とか、製造が盛んだったからな。
デトロイトでは自動車工場に勤めたり商店を開くなど、低所得者居住区域・黒人街が形成されていました。
そう簡単にはなくならない差別の壁は、白人と黒人が住み分けることでクリアさせていたんです。
そんな黒人街の一区画、デトロイト市の西側に位置する12番街で行われた、ある案件の警察のガサ入れ。
物語は、デトロイト暴動の発端となる出来事のシーンから始まります。
- アメリカでは当時、酒の販売・提供は許認可制
- 許認可を受けても、営業は深夜2時頃までと決まってた
- 「blind pig(めくらの豚ちゃん)」なる酒場が無許可なうえに時間外営業してた
- 1967年7月23日(日)午前3:45分。違法営業を取り締まるため、警官が潜入
ところが、ちょっと店のオーナーや利用客数名をしょっ引くつもりで踏み込んだ豚ちゃんバーには、数人どころか80人以上の客が。
おぅ♪豚ちゃんバー、大繁盛じゃん。
この日、ベトナム戦争から帰還した黒人兵士のお帰りパーティしてたんだってさ。
無事の帰還のお祝いに水を指すつもりはありませんが、豚ちゃんバーの営業自体は違法。
当初、警官たちは居合わせた黒人らをバー裏口から目立たないように連行するつもりでした。
…が、裏口はがんじからめに施錠されていて使用不可。致し方なく表玄関から連行せざるを得ない事態に陥ります。
- 輸送車両も4〜5台用意する必要に駆られ、しょっ引かれた黒人さん達はいい見せ物に
- 壁に手をつかされ、中には殴られる黒人男性も
- 輸送車両に押し込む際、どさくさに紛れてケツを撫でる警官も
- この時代、警官の約9割は白人
- 白人警官の侮辱的な対応を見ていた黒人街の野次馬が、瓶を投げたり放火を始めた
「もう我慢ならねぇ」という黒人の皆さんや、面白半分で騒ぎ始める面々も続出。
街の破壊・放火・強奪・白人警官襲撃と、辺りは無法地帯に。
かくして世に言う「デトロイト暴動」は、豚ちゃんバーへの正当なガサ入れの初動ミスを皮切りに、翌日には州兵や陸軍まで動員される大騒動へと発展 したのでございます。
緊迫した状況下で広まった誤認情報
12番街の豚ちゃんバーから始まった暴動は、とどまるところを知りません。
暴動は周辺区域150ブロックにまで被害が拡大。
警官&軍隊VS黒人街の争いは、「警官たちを狙うスナイパーが潜んでいる」という情報が錯綜するほど混乱していきます。
- 街の治安・市民の安全・財産の保障…と事態収拾は急務
- 怪しげな人物、強奪犯はことごとく逮捕
- 窓から騒乱の様子を覗き見しようものなら「スナイパー発見!」と容赦なく蜂の巣に
緊迫状態が続く中、デトロイト警察は常時パトロールを行い、監視の目を光らせておりました。
中でも「小さな悪事でも見逃したら暴動を認めることになる」「市民はみな我々警官に期待している」という持論を持った警官フィリップ・クラウス。
彼は、本当に容赦なく丸腰の黒人を虐殺する始末です。
逃走するヤツを止める手段=銃をぶっ放すっていうのは…。
フィリップ警官はやり方が極端すぎるな。
- フィリップ警官にしてみれば、黒人を容赦なく取り締まることが虐殺と取られるのは心外
- どんな過程であれ、終わり良ければすべて良し
- 自分の行動にこれっぽっちの迷いも間違いもない、と常にドヤ顔で任務にあたっていた
そんな彼が暴動3日目に起こった事態収拾で指揮を執り、やりたい放題の過剰な捜査権を行使。
これがまた…数名の人生を狂わせ、警察権力を失墜させただけでなく、ひいては司法・行政をも巻き込んだ最悪の黒歴史を生み出すことになっていきます。
映画【デトロイト】明かされる真実
デトロイトの街は、黒人による略奪破壊行為に加えて州警察や州兵、陸軍の応戦で市街戦さながらの壊滅状態。
昼夜問わず銃声が鳴り響き、夜間外出禁止令も発令されました。
そして悪夢の一夜となる1967年7月25日。
今宵ライブ敢行予定だったザ・ドラマティクスというバンドメンバーも、晴れ舞台を披露することなく宿泊施設に戻ることに。
- ザ・ドラマティクスのリードボーカルは黒人男性のラリー・リード
- 宿泊先は安さがウリのアルジェ・モーテル
- アルジェ・モーテルは暴動の発端となった12番街の東1.6kmにある
- ラリーやバンドメンバーの他にも黒人宿泊客やナンパされた白人女子も滞在
- 警官たちは、この付近に狙撃犯が潜んでいるという情報をキャッチ
- アルジェ・モーテル周辺は厳戒態勢に
外の警官たち、ずっとピリピリしてて大変だね。
そう思って、アルジェ・モーテル付近の店の警備員がコーヒー差し入れしてたよ。
コーヒーの差し入れというなんとも気が利く警備員の名はメルヴィン・ディスミュークス。30代くらいの黒人男性です。
もはや白人VS黒人の戦いといってもいいこの状況下で、緊張高まる白人警官に近付くとは。
なんとも肝が座ったお方です。
- 白人警官はなにも黒人全員を目の敵にしてるわけでもない
- 「砂糖ないの?」「すまんね、そこは我慢して」などちょっと和みムードに
- …とそこで一発の銃声が
せっかくのコーヒーブレイク、束の間の憩いの時間に懸念していた事態が発生。
各警官一斉に「狙撃犯襲来!」と配置に付き、銃声の発信元を探ることになりました。
わわっ。どっから銃撃!?
…どうやらアルジェ・モーテルかららしい。
これがまた厄介なことに、アルジェ・モーテル宿泊客の一人がふざけてスターターピストルなる実弾ナシの音だけ出る銃を発砲。
このクソヤバい暴動の最中に何やらかしてるの、という痴れ者がいたんです。
アルジェ・モーテルでの悲劇の始まり
スターターピストル。それは運動会の徒競走でヨーイどん!のときに「パンッ」と鳴るあれのことです。
銃社会ではない日本では、本物の銃と運動会の「パンッ」との違いなんぞ知る由もありません。
が、銃社会アメリカでも狙撃犯の銃声と勘違いするほどなので、あんな音が轟いたんでしょう。
誰だ、そんなオモチャ持ち込んだのは。
ティーンエイジャーの黒人くんだ。
なぜそんなものを、っていうかなぜ今撃つ、とツッコミしたくなる行動に出たのは当時17才のカール・クーパー。
恐れを知らず、今を全力で楽しむお年頃のクーパー君のおかげで戦慄の夜の幕が上がります。
- 劇中ではおふざけで仲間に向かってパンッしたことになっている
- 実際には外に群がる警官に向かって、威嚇のためにパンッしたという話もある
- とにかくカール君のせいでアルジェ・モーテルは蜂の巣に
- さらに警官隊が突入し、宿泊客全員が拘束・尋問・拷問を受ける羽目に
そしてこのとき尋問・自白強要・ほぼ拷問を行ったのが…自意識過剰・正義の味方気取りのフィリップ警官。
そりゃぁもうノリにノってゲーム感覚、もちろんドヤ顔も忘れず、皆さんに恐怖と戦慄の一夜をプロデュースしていくんです。
正義という名の恐怖
黒人街の安い宿泊施設アルジェ・モーテルは、一瞬にして怒号飛び交う恐怖の館へと変貌。
突入した警官隊は、まず出会い頭に逃亡しようとしていた若者を射殺します。
未来永劫続くかのような煉獄の苦しみの始まりです。
- 最初に犠牲になったのは、スターターピストル所持者だったカール君
- 残りの宿泊客はもれなく部屋から引き摺り出され、廊下に整列
- 「誰が撃った」「銃所持者は誰だ」と尋問が始まる
- 誰もが「知らない」と証言するので個別に脅しをかけた
- 1人ずつ個室に連れ込み銃を向け、自白を強要
- さらに当たらぬよう発砲し、尋問中に射殺されたかのように偽装
- 廊下に残され拘束されている者は、個室から響く銃声によって恐怖を植え付けられた
この一連の不当拘束・尋問の指揮を執ったフィリップ警官は、さらに「吐かないと同じ目に遭うぞ」「このこと(自白強要)をバラしたらどうなるかわかるよな?」と恐喝。
最高に極悪人ヅラでニカッと笑いながら楽しそうに拷問するフィリップ警官の表情は、悪夢に出そうなくらいゾワゾワする恐ろしさです。
そして理不尽な恫喝はこれで終わりではありません。
様子を覗きに来てしまった警備員ディスミュークスにも飛び火し、狙撃犯扱いまでされてしまうんです。
いやいやいや、銃声があった時コーヒー振舞ってたじゃん。
…まぁ色々警察の不適切な対応隠蔽のために、でっち上げられたってとこだな。
散々脅し、殴り、犠牲者も出してしまったにフィリップ警官とその一味。
結局、銃の発見には至りませんでした。
そこで、アルジェ・モーテルに向けての一斉射撃や、宿泊客への尋問を正当化する必要がでてきたんです。
- それっぽい狙撃犯に最適だったのが、警官以外で唯一銃を所持していた警備員ディスミュークス
- ついでに言うと、ディスミュークスは黒人なのでうってつけだった
- ちなみにこんな隠蔽策は警察署も司法機関も公認・グル
- 自白した宿泊客ならびにディスミュークスら黒人は有罪判決
- のちにフィリップ警官らの不当弾圧が明るみになるが、白人警官らは無罪に
こうして暴動に便乗したとしか言えない白人警官による黒人への理不尽な弾圧・おかしな判決は曖昧なまま、デトロイト暴動も次第に終息。
歴史に埋もれそうになっていたアルジェ・モーテル事件のあらましは、可能な限り明確に何が起こったかを徹底的に洗い直してみたらこうだった …というのが大まかなあらすじになります。
映画【デトロイト】不当弾圧の渦中にいた登場人物たち
今作【デトロイト】の元となったデトロイト暴動は、今からおよそ50年前の出来事です。
あのとき事件に巻き込まれた者、事件の当事者の方々の中には、ご存命の人物もいらっしゃいます。
事件後も長年この不当な捜査に苛まれ、人生が狂ってしまった登場人物の中で、強烈な印象を残したお三方をピックアップしてご紹介いたしましょう。
メルヴィン・ディスミュークスは事件のあったアルジェ・モーテルの斜向かいの店舗の警備員。
全くの偶然ととばっちりで事件に巻き込まれた人物です。
自分から現場に踏み込み、この戦慄の一夜を乗り越えるために拘束された宿泊客を懸命に勇気付け続けた良い人でもあります。
黒人ゆえに有罪になり、以後冤罪が判明した後も警察の報復を恐れてデトロイトを離れました。
フィリップ・クラウスは「フィル」の愛称で呼ばれるデトロイト警察の警官。
くらえ!正義の鉄槌!という彼の思想は確かに正論です。
ただ、確かに間違ってはいないけれど、行使の仕方が常軌を逸しています。
どこを取っても自分の行動には非がないと思い込んでる狂気がそら恐ろしく、思考も未熟ならば行動も浅はか。
そんなフィリップを演じたウィル・ポールターは高い演技力が大絶賛されました。
…されましたが、本人は何テイクも撮らされた尋問・拷問シーンで半べそかいたらしい善人です。
ラリー・リードは誰も訪れない舞台ですら歌いたがったバンドボーカル。この事件の恐怖は、彼のバンドマン人生を終わらせるきっかけになりました。
後に聖歌を歌う歌手になり、今作でラリーを演じたアルジー・スミスと夢の共演を果たしています。
高らかに響きながらもどこか切ないこの曲は、劇中挿入歌にもなっている楽曲です。
Algee Smith&Larry Reed 「GROW」(from DETROIT)」↓
…とこの他に、フィリップ警官とアルジェ・モーテルに踏み込んだ同僚、痛い目・怖い目に遭わされた黒人の若者や捜査のために身包み剥がされ屈辱を味わった白人女子も登場。
白人警官が黒人を虐げる事件は50年以上経った今でもいくつか横行していて、アメリカが背負った負の遺産の業の深さを感じます。
まとめ
アメリカ史上、最も最悪の醜態を晒すことになったデトロイト暴動。
警官による不当な弾圧と虐殺が隠蔽され、その真実を明らかにすべく、セミドキュメント形式で制作された映画が【デトロイト】です。
- 悲劇はアメリカ北部・ミシガン州デトロイトの12番街から始まった
- 黒人による暴動は急速に広がり、収拾不可能なほど拡大
- 長年抱いてきた黒人差別や偏見がさらなる事態を招いた
- アルジェ・モーテルでは宿泊客の黒人が不当逮捕・拷問・虐殺も
- 警察や裁判所は事実を隠蔽。それを明るみにした作品
このデトロイト暴動が起きた当時の様子は、アメリカ国内だけでなく世界中で、日本でも報道されニュースにもなりました。
私はまだ産まれる前に起きた惨事ですが、似たような黒人への暴行事件は近年でも見たような気がします。
隔離されたも同然のアルジェ・モーテル内でほぼ内密に行われた、凄惨な捜査・過酷な心理・事件後の狡猾な隠蔽体質。
映画【デトロイト】は、埋もれかけていた悪しき習慣に再び注目し、同じ過ちを繰り返さないための警鐘を鳴らしている作品 でした。
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