創業以来140年以上続くオランダの老舗ビール会社・ハイネケン。
その3代目会長が誘拐され、当時としては史上最高額の身代金が奪われたという事件がありました。
あのとき一体何が起こったのか。
1983年に起きた事件の実話を描いた映画【ハイネケン誘拐の代償】の世界へとご案内いたします。
この記事でわかること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・動画配信サービス・DVD情報
【ハイネケン誘拐の代償】1983年に起きた実話
外国産の瓶ビールって、なんかオシャレだよねー♪
…特にコロナビールにライムぶち込んで飲むと最高だよな。
……。ハイネケンも飲んでよ。
近所のスーパーや激安量販店など、お酒を扱うお店にはちょいちょい外国銘柄のビールが置いてありますね。
私は見かけたら必ずチョイスするのがコロナビールなんですが、今作はオランダ・アムステルダム発祥のビール・ハイネケンのお話。
…といってもビールがどうのこうのではなく、本当にあった物騒なお話です。
- 1983年11月。身代金目的の誘拐拉致・監禁事件が
- 誘拐されたのは、3代目会長フレディ・ハイネケンと専属運転手の2人
- 身代金要求額は3500万ギルダー(日本円にして、およそ23億円)
- いち個人の身代金額としては、当時史上最高額
- 2人は無事解放されたものの、身代金の一部は今なお所在不明
- 犯行グループは、幼馴染みや兄弟を含む5人組(←事件後、全員お縄頂戴済み)
…と、世の中を震撼させるこんな事件がありました。
そしてこの事件の真相について、犯罪ジャーナリストのピーター・R・デ・ブリーズが犯行グループのひとりに直撃インタビュー。
その内容を書籍化した彼の著作《The Kidnapping of Alfred Heineken》を元に、犯行グループと誘拐されたハイネケンの詳細なやり取りを描いた映画が【ハイネケン誘拐の代償】 です。
フレディ・ハイネケン氏の人物像や、犯人のその後についての雑学はこちら↓
映画【ハイネケン誘拐の代償】基本情報
ハイネケン誘拐の代償 | 2015年 ベルギー・イギリス・オランダ合作映画 |
ジャンル | 歴史・ヒューマンドラマ |
監督 | ダニエル・アルフレッドソン |
脚本 | ウィリアム・ブルックフィールド |
上映時間 | 95分 |
出演 | アンソニー・ホプキンス、ジム・スタージェス、サム・ワーシントン他 |
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【ハイネケン誘拐の代償】あらすじ
物語の舞台はオランダ・アムステルダム。
この街で生まれ育った4人の青年たちは、国内経済の大不況の煽りをモロに受け、将来を悲観する日々を余儀なくされていました。
- オランダは1970年前後に、天然ガス資源で潤う好景気時代があった
- そんなバブリーな時代に思春期を過ごした幼なじみ集団コル、ヴィレム、カット、スパイクスは、成人して共同経営の建設会社を設立
- …が、1980年代にオランダは戦後最大の不況に見舞われた
- おかげで4人の会社は倒産の危機に
バブル期の資産は残ってないの?
…すでに現金化して、今はビル1棟しか残ってないらしい。
会社立て直しのため、抱える社員のため。
車やボート、馬なんかを売っぱらっては経営補填に充ててきたけれど、会社はすでに火の車。
そこで彼らは4人揃って銀行に融資相談に赴くも、あえなく撃沈してしまいます。
- 唯一担保になりそうな建物資産に問題が
- 戦後大量になだれ込んだ不法移民どもが建物を占拠し、勝手に棲息中
- 追い出したくともオランダ政府が彼ら移民を法的に保護
- …ということで、建物に変なオマケがついてるから資産価値ナッシング
政府が保護って言っても、勝手に住みついてたらさすがに違法じゃん。
…そんなめんどくさい建物だから、なおさら銀行が融資渋ったんだろうね。
すんなり融資を受けられなかったのは、我が物顔で住んでいる移民どものせい。
苛立ちを募らせたコルたちは、奴らを追い出して資産価値を取り戻そうと躍起になります。
- ところがちょっと荒々しく、暴行しまくる強硬手段に出た
- 逆に移民どもに通報され、しばし留置所に押し込まれた
- 結局移民追い出し作戦は失敗し、融資もお流れ・資金繰りの目処も立たず
- 経営立て直しは絶望的。倒産するしかなくなった
まだ若いんだし、いくらでもやり直せ…
…ないんだよ。労働者賃金が上がりすぎて、再就職も難しいんだ。
雇いたくとも雇えない、働きたくとも働けない。
そんなご時世で職を失えば、この先どうやって生活していけばいいのか路頭に迷うのも仕方ありません。
そこでコルが新たなビジネスと銘打って、みんなにある提案を持ちかけることに。
- 仕事はこの先の人生が大きく変わる、組織的なもの
- 今の自分たちに残されている『自由』をかけて、利益を得る内容
- …とどのつまり、犯罪でひと山当てようって魂胆
- 一度でガッポリ大金が手に入る身代金目的の誘拐を
- 成功した暁には「誘拐」の司法がないフランスに逃亡すれば無問題
- ということで、アムステルダムNo.1の大金持ちに狙いを定めることに
いやいやいや。アムステルダムで1番どころか…。
世界有数の大企業ハイネケン会長にターゲットロックオンしたな。
彼らにとっては会社経営の立て直しも再就職も、もはやカケ。
そしてデッカい犯罪をしでかして大金持ちになることも、同じカケに過ぎないという考えに至ってしまいます。
骨身を削って泥臭く働くのはもうごめん…と意見が一致したコル、ヴィレム、カット、スパイクスの4人組。
さらにコルの弟も巻き込んで、5人で一攫千金を狙うことにいたしました。
夢見る犯罪・崩れゆく犯罪
やるからには徹底的に、念入りに。
コルたちはまず、誘拐したならどこに拉致ろうか、身代金をいくらに設定しようかなどの打ち合わせを始めます。
- 監禁場所は会社の倉庫に決定
- ご近所にバレないよう、さらに倉庫内部に防音個室を設置
- 相手が相手だから、身代金は6000万ギルダー(約40億円)ほどいただこう
- …と思ったけど、運べる札の重量を計算したら3500万ギルダー(約23億円)が限界
なに。金額減らすほど、お札ってそんな重いの?
日本円の場合だが、1億円の重さは10kgある。
もし万が一成功して逃走した場合、肌身離さず大金を持って移動しなければなりません。
おそらく抱えて逃げれる重量は40〜50kgが限界かと。
…ということで、ひとりあたま5億円分ほどという分け前の計算から身代金額を試算。ここからさらに計画を煮詰めていきました。
- マフィアや犯罪組織の仕業に見せかけて、捜査の目を背けることに
- 大掛かりな犯罪組織なら、きっと軍事用の武器や無線機を使う
- さらに入念にターゲットの動きを監視して、何ヶ月もかけて準備もする
- ってことはまず、色々揃えるために軍資金が必要
- 金をかけなくてもやれるが、それはザコのやること
- 金持ちになるためには、初めの投資が肝心
なんかこれからやることは犯罪なのに。
…完全にビジネスライクな発想なんだよな。
初期投資が何よりビジネス成功の近道。
せっかく持ち合わせたそんな経営者気質を、5人組は誤った方向で始動させてしまいます。
『成功したら大金持ち』
浮かれポンチもいいところ。本気でこう思っているこのバカどもは、この時はまだ知りません。
狙った獲物・3代目会長フレディ・ハイネケンの真のビジネス手腕の恐ろしさ、代償の大きさを。
彼らに残されたもの
資金調達のために初めての犯罪・銀行強盗に手を染めた5人組。
そりゃもう楽しげに、まるで子供が秘密基地を作るみたいにはしゃぎながら、着々と準備を整えていきました。
- 目出し帽に手錠に鎖に変声器、その他小物もばっちり用意
- 監禁部屋は、まるでアンネ・フランクの隠れ家のようにすぐには見つけられない仕組みに変更
- 数日間、じっくりハイネケン会長の監視も行い、いざ誘拐へ
- 会長だけでなく、不測の事態に備えて専属運転手もついでに拉致
おー。仲良し幼なじみだけあって、チームワーク完璧♪
…あっさり誘拐大成功だな。
こうしてハイネケン氏と運転手、拐ってきた2人を別々の監禁部屋に押し込んで、さて、ここからが本番です。
- ハイネケン会長が拐われたとあらば、身代金も5日程度で受け渡しに応じるだろう
- その間、交代で2人を監視&食事を与えるだけで充分
- あとは普段通りの生活と、たまにアリバイ作りでバーで酒盛りすればいい
なんかもう楽勝?
いや、誘拐したハイネケン氏のせいで、少しずつ羽車が狂い始めちゃうんだ。
そもそもとばっちりで拐われた運転手さん、そりゃもう死ぬる思いで怯えまくってます。
が、肝心のハイネケン氏はさして動じることもなく、むしろ図々しい老害っぷりを発揮。
- バスローブにスリッパに鏡に櫛に、快適な監禁生活アイテムを要求
- ついでに食事も毎回ハムサンドは飽きるから、中華デリをリクエスト
- 特に今食べたいのは、辛さマシマシの「バン・バン・ジーー」
- あと、監禁部屋に流れる音楽センスにダメ出し
- さらに暇だから本の差し入れもお願い
さすが大物(笑)
…しかもこれ、犯行グループの心理をかき乱す作戦なんだぜ。
ただの戯言のように見えますが、実は相手の行動を深読み中。
犯人がどんな類いの人物なのか、大きな犯罪組織が加担しているのか、目的は金だけなのか。
命も奪うつもりなのか、短絡的な犯行なのかをつぶさに観察しているんです。
- 差し入れの要求に応じるようなら、真の極悪集団ではない
- 金が欲しいだけなら、ビジネスライクの交渉次第でどうにでもなる
- これだけ手際よく誘拐・拉致・監禁を行ったからには、それぞれ信頼関係があるだろう
- それでも中には金に目が眩んで、信頼関係を乱すヤツもいるはず
- 無駄口たたきつつ、いっちょ揺さぶりかけて和を乱すか
やっぱ…さすが大物。見るところが違うねー。
…ビジネスで富を得る正しい方法を知っているから見えてくる視点、てところか。
こんな会長に翻弄され、さらに事態が悪化する出来事も生じてしまいます。
- 1週間経っても2週間経っても、ハイネケン社が要求に応じる気配ナシ
- ニュースでは大掛かりな組織が絡む大事件!と報じられるも、他に何の進展ナシ
- 次第に仲間内で疲労感が増し、不協和音が
- ハイネケン氏も、要求に応じない社の連中に苛立ち
- 社の連中もお前らも、ビジネスライクな取り引き下手すぎてみんなクビだ!と怒り始めた
どうなっちゃうの、これ(汗)
…うん、まぁリーダーであるコルも参ってきた。
ハイネケン氏の提案に揺らぐ者・ハイネケン氏を思いやる者・もうこの件から降りたいと言い出す者。
意見が分かれ始め、計画失敗の予感が漂います。
- ところが誘拐から3週間後、事態は一気に好転
- ようやく要求に応じて身代金3500万ギルダーの受け渡しが行われた
- 5人組は、大金ゲットのために再び一致団結
- 受け渡しは成功し、一部を地中に埋めて予定通りパリへ逃亡
- …のはずが、仲間内の不協和音は広がるばかり
…金の切れ目が縁の切れ目?
…みたいな感じだな。金を得た代わりに友情を失っちまった。
実はハイネケン氏はこうなることが分かっていました。
「金」という裕福を得るか「友情」という裕福を得るか、2つにひとつしか道がないことを。
どちらをも得ようという甘い考えの5人組に大きな代償を払わせるため、無駄口を叩いて彼らの心理をかき乱していたんです。
結果として、5人はそれぞれ金も友情も自由すら奪われることになり…というのが大まかなあらすじになります。
【ハイネケン誘拐の代償】主な登場人物
世界190カ国の国や地域で、毎日2500万本も売れまくってるらしいハイネケンビール。
そんな超有名企業のCEOが誘拐された事件は当時、どこぞのマフィアか手練れの犯罪組織が絡んでいると思われていました。
大それた誘拐事件の渦中にいた登場人物たちをご紹介いたしましょう。
フレディ・ハイネケンは、巨大ビールメーカーの3代目会長。
ただの同族経営の御曹司ではなく、祖父が立ちあげたハイネケン社のCEOに就任するまで、相当な努力を積み上げてきた苦労人です。
演じたアンソニー・ホプキンスは、映画《羊たちの沈黙》でも相手の心理を翻弄するハンニバル・レクターを演じた大御所。
犯人グループ全員の心理を見極め追い込んでいくハイネケンの老獪っぷりを、圧巻の演技で魅せてくれます。
アンソニー・ホプキンス主演《羊たちの沈黙》の大まかなあらすじやその他キャストについてはこちらをどうぞ↓
コルは誘拐実行犯のリーダー格。事件当時26歳、犯行グループの中では年下の青年です。
今作で明かされたハイネケン誘拐事件のあらまし・詳細な裏側は、このコルへのインタビューが元になっています。
会社経営者として、愛する妻を持つひとりの男性として、そして産まれてくる我が子の父親として。
不況に陥ったオランダで裕福になるためには大金持ちから金を巻き上げればいい…と誘拐事件を考え出した痴れ者ですが、これが初犯となる人物です。
ヴィレムは誘拐実行犯の主犯格。リーダーであるコルの幼なじみ・親友・義理の兄という間柄です。
事件当時は27歳。コルとヴィレムが中心となって誘拐事件を仕切りましたが、これまで犯罪歴はありません。
ヴィレムの父親は元ハイネケン社の元労働者。解雇されたにも関わらず、父親はハイネケン氏を信奉していて、ヴィレムはそんな父親が大嫌い。
そんな家庭環境もあり、フレディ・ハイネケンに対しても若干逆恨みのような感情を持っています。
カットは誘拐実行犯の最年長。妻子をこよなく愛する真面目な31歳の青年です。
働けど働けど、我が人生楽にならざり…ということで、コルの誘いに乗って一緒に誘拐事件を起こします。
決して誰かを傷つけて命を奪わないこと。
こんな信条を掲げて犯行に加担したカットにも犯罪歴はなく、1番ハイネケン氏の様子を心配する人格者でもあります。
スパイクスは誘拐実行犯の中で最も心配性な30歳の青年。
汗水流して稼いでも先行きが不安なため、コルの案に乗っかってきたました。
一攫千金にノリノリですが、スパイクスにも犯罪歴はありません。
とにかく神経質、切羽詰まるとテンパる情緒不安定な一面があります。
ブレイクスは、誘拐実行犯リーダー・コルの実弟。まだ20歳かそこらの年齢で、敬愛している兄の犯罪の片棒を担いだおとなしい若者です。
兄の指示通りに犯行声明文を警察のポストに投函する役割を任された、無口で存在感の薄い人物でもあります。
…とこの他には主犯格リーダー・コルの妻や、会長とともに誘拐された運転手・アブが登場。
警察やマスコミ、司法がどう動いたのかなど、捜査の経緯や逮捕の際の派手なドンパチの演出はなく、そのあたりの登場人物はエキストラ程度の出演です。
あくまで「誘拐されたもの」「誘拐したもの」とのやり取りがメイン。
普通ならそう知り得ない、事件の裏側・歴史の真相にのみ焦点をあてた興味深い作品になっています。
【ハイネケン誘拐の代償】まとめ
不景気に見舞われ、不法移民で溢れかえったオランダ・アムステルダム。
この街で大きな成功をおさめた世界有数のビール会社・ハイネケンの会長が誘拐され、巨額の身代金が奪われたという事件は、当時世界各地で大々的に報道されました。
- 1983年アムステルダムにおいて、3代目会長フレディ・ハイネケンと運転手が誘拐された
- 犯行グループは全員が初犯、犯罪ド素人の青年5人組
- 綿密に誘拐計画を立て、身代金3500万ギルダーの受け取りに成功
- ただし、誘拐したフレディ・ハイネケン氏に翻弄され、仲間割れ
- あえなく御用になるも、一部の身代金は未だ発見されず
ごく普通の労働者・ごく普通にビジネスに励んでいた青年たち。
彼らは成功するためには先行投資が必要なことも、あくせく地道に取り組まなければならないことも知っていました。
にも関わらず、手っ取り早く楽に裕福になるための『ビジネス』として、とんでもない犯罪に手を染めることに。
仲間同士の信頼と信用があったからこそ身代金強奪は成功しますが、代わりに仲間の信頼もこの先の人生も失いました。
『裕福には2つある。多くの友人を持つか、大金を手にするか。両方はありえない』
ビジネスの方向性・本質を正しく理解しているハイネケン氏は劇中、五人の若輩者をこんな言葉で諭していました。
ビジネスとは名ばかりで、方向性も本質も見誤った5人組の末路は因果応報としか言いようがありません。
映画【ハイネケン誘拐の代償】は、何事も本質を見誤るとその代償は高くつく…ということを考えさせられる作品 でした。
映画【ハイネケン誘拐の代償】はこちらで配信中↓
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