日本を代表する推理小説家・横溝正史。
昭和モダンな本格ミステリーは奥が深く、多くの作品が漫画化や映像化されています。
中でも人気なのが、これまで総勢28名もの俳優たちによって映画やドラマ化された探偵小説・金田一耕助シリーズ。
監督・市川崑、主演・石坂浩二による金田一映画についてお届けします。
この記事で分かること
- 石坂浩二主演の金田一映画6本
- あらすじ概要・予告動画
- DVDブルーレイ&原作本情報
犬神家の一族 (1976)
映画【犬神家の一族 (1976)】は、石坂浩二主演シリーズ第1弾。
文庫発行が主だった角川書店が、自ら映画製作に乗り出した記念すべき角川映画1作目です。
- 一代で財閥を築いた犬神佐兵衛が他界
- 残されたのは莫大な財産と一通の遺言書
- 内容確認は長女の息子・佐清が戦地から戻ってから
- 骨肉の争いを予感した犬神家の顧問弁護士が金田一を招待
- …と、そこへ白マスクで素顔も分からぬ佐清が帰還
- 遺言書には同居中の娘・珠世に全財産を譲る、と
- 遺産目当ての婿争いが勃発。殺人事件にまで発展
- そもそも佐清は本物なのか？全ての真相を金田一が暴くことに
大財閥の遺産相続争いを、たくさんの登場人物を絡ませて描いた複雑かつ繊細なお話です。
実は石坂浩二氏以外にも、錚々たる俳優陣によって何度も映像化されています。
『犬神家の一族』↓
| 金田一耕助役の俳優 | 作品名 |
| 片岡千恵蔵 | 映画 犬神家の謎 悪魔は踊る (1954) |
| 石坂浩二 | 映画 犬神家の一族 (1976) |
| 古谷一行 | 連続ドラマ 犬神家の一族 シーズン1 (1977) |
| 中井貴一 | 2時間ドラマ 犬神家の一族(1990) |
| 片岡鶴太郎 | 連ドラの1つ 犬神家の一族(1994) |
| 稲垣吾郎 | 連ドラの１つ 犬神家の一族 (2004) |
| 加藤シゲアキ | 2時間ドラマ 犬神家の一族 (2018) |
※石坂版・古谷版以外は、動画配信がありません(2021年9月現在)
同じ原作本が、ここまで何度も映像化された作品は他にないかと思います。
物語のキーマンとなる人物・佐清は特に人気が高く、マスクもグッズで売られているほど。
これであなたもスケキヨに(笑)
白マスク・湖から足…といった、強烈なインパクトを放つシーンはトラウマ級。
キャラや演出もさることながら、明快なストーリー・理論的な推理を展開する石坂浩二氏の演技が見どころです。
金田一シリーズを初めて観る方にもオススメ、一度観たら余韻が残る、一度は観てほしい傑作。
映画【犬神家の一族 (1976)】
監督 : 市川崑
出演 : 石坂浩二、島田陽子、あおい輝彦、高峰三枝子、草笛光子、大滝秀治ほか
上映時間 : 146分
原作本はこちら↓
悪魔の手毬唄 (1977)
映画【悪魔の手毬唄】は、石坂浩二主演シリーズ第2弾。
過去と現在が交錯する、男の性と女の情が生んだ悲しき事件のお話です。
- 岡山と兵庫の県境にある鬼首村が舞台
- 古い因習が今も根付き、 2つの名家が対立中
- それは没落した由良家と酒造で財を成す仁礼家
- 金田一は旧知の仲の刑事に呼ばれ、鬼首村へ
- 20年前の事件を探るうち、由良家・仁礼家の子女が相次いで殺された
- 知る人ぞ知る、村の古い手毬唄に見立てた殺人事件らしい
- しかも第3の犠牲者も出てしまい、20年前の事件と関わりが
- 金田一は、手毬唄の秘密と過去と現在を追うことに
2つの名家のいがみ合い、若者の色恋沙汰と奇妙な殺害方法、そして20年前に夫を殺された温泉女将と行方不明なその犯人。
一見関わりの薄い出来事が徐々に繋がる不気味さと、驚愕の真相が見どころです。
ラストシーンは清々しくあるものの、悲しい真実と無念がいたたまれない作品。
映画【悪魔の手毬唄】
監督 : 市川崑
出演 : 石坂浩二、岸恵子、仁科明子、北公次、若山富三郎、加藤武ほか
上映時間 : 144分
原作本はこちら↓
獄門島 (1977)
映画【獄門島】は、石坂浩二主演シリーズ第3弾。
人物像や犯人像が原作と大きく異なるにも関わらず、ストーリーにまとまりがある不思議な秀作です。
- 終戦直後。引き揚げ船で亡くなった兵士が
- 彼の名は鬼頭千万太。戦友に遺言をことづけた
- その遺言を預かった金田一は、彼の故郷・獄門島へ
- 実は千万太は獄門島を牛耳る本鬼頭の跡取り
- 「自分が島に戻らなければ妹たちが殺される」と
- 実際、妹3人は相次いで無残な死を遂げた
- 金田一が暴く、俳句に見立てた殺人の目的と犯人とは
封建的な因習が残る孤島を舞台に、跡目相続や因果な復讐、確固たる意思が絡みに絡んでいきます。
本鬼頭のほかに本鬼頭分家・分鬼頭という一族の派があり、さらに登場人物も多いので人物相関図がけっこう複雑です。
ただ、ゆっくりとした展開の中でしっかり関係性と事件性が明らかになっていきます。
見どころは、一筋縄ではいかない人間関係と俳優陣の個性豊かな演技。
今や赤い彗星シャアの声の人、池田秀一氏が若い僧侶役で出演しているお宝映像でもあります。
ときにコミカル、ときにグロえげつなく、最後はしっとり切ない悲しみが込み上げる作品。
映画【獄門島】
監督 : 市川崑
出演 : 石坂浩二、司葉子、大原麗子、草笛光子、太地貴和子、浅野ゆうこ、佐分利信ほか
上映時間 : 141分
原作本『獄門島』はこちら↓
女王蜂 (1978)
映画【女王蜂】は、石坂浩二主演シリーズ第4弾。
冒頭から結構なグロありき、驚くほどタイトルがマッチした意外性のある殺人ミステリーです。
- 伊豆天城の月琴の里に日下部と速水という男子大学生がやってきた
- 彼らは源頼朝ゆかりの良家の子女、大道寺琴絵に一目惚れ
- 琴絵は日下部と恋仲になり、懐妊するも別れ話が
- 直後に日下部が事故死。速水は数年後、琴絵の夫として大道寺家に婿入り
- 日下部と琴絵の間にもうけた娘・智子に愛情を注いで育てた
- 智子が19歳になり、複数現れた婿候補が次々惨殺される事件が発生
- さらに脅迫状が何通も届き、ある人物の依頼で金田一が大道寺家へ
- 智子の周囲で起こる不可解な事件の謎を解くことに
女王蜂に群がる働き蜂が次々命を落とすように、智子の周りに群がる殿方が次々と命を落としていく。
…という世界観が面白く、結末が読めない展開には驚かされること間違いなし。
金田一シリーズ前3作にそれぞれ出演した大女優、高峰三枝子さん・岸恵子さん・司葉子さんの豪華共演が見どころです。
事件の渦中にいる智子役は、中井貴一氏の姉・中井喜恵さん。
大女優・名俳優の中でひとりド新人、堂々たる演技の初々しさにもご注目を。
ドロドロの醜悪だけでなく、金田一のお茶目さも存分に堪能できる逸品。
映画【女王蜂】
監督 : 市川崑
出演 : 石坂浩二、高峰三枝子、司葉子、岸恵子、中井貴恵、冲雅也、仲代達也ほか
上映時間 : 139分
原作本はこちら↓
病院坂の首縊りの家(1979)
映画【病院坂の首縊りの家】は、石坂浩二主演シリーズ第5弾。
金田一耕助、最後にして最高に難解な事件に挑む、グロくてショッキングな最終作です。
- 金田一は、奈良県吉野にある本條写真館に私用で訪問
- すると主人の徳兵衛が「殺されそうになったから調査してほしい」と
- その日、ある女性が兄の結婚写真の出張撮影を申し込んできた
- 場所は季節外れの風鈴が飾られた、いわくつきの廃病院
- 撮影は無事終了するも、依頼女性から再度撮影依頼が
- 写真館の若主人が廃病院を訪れたところ、とんでもないものを発見
- 先ほど撮影した花婿の生首が風鈴のごとく吊るされていた
- 警察の捜査が続く中、さらなる犠牲者が続出
- 金田一は写真館の下働き・黙太郎の協力のもと、絡み合う秘密と悲劇を知ることに
血縁が因習が…というこれまでの作品とイメージが異なり、近親相姦のタブーに触れた問題作です。
その一方で、金田一シリーズ集大成にふさわしいパロディも盛りだくさん。
当時アイドルだった桜田淳子さんの怪演、永遠のイケメン草刈正雄氏の光る演技が見どころのひとつ。
さらに原作者・横溝正史先生も、推理小説家役で出演しています。
俳優陣の振り切った演技は豪快、事件はとことん難解、人物相関図が複雑すぎて話についていけないかも知れません(笑)
実は原作はもっと複雑怪奇、第2部があるのに全カットという荒業を以ってしても混乱必至な仕上がりです。
…が、何度も観たくなる不思議な魅力があります。
独特の映像カラー・物々しい雰囲気がひと味違う、金田一シリーズの最高傑作。
映画【病院坂の首縊りの家】
監督 : 市川崑
出演 : 石坂浩二、佐久間良子、桜田淳子、草刈正雄、横溝正史ほか
上映時間 : 139分
原作本、上下巻はこちら↓
犬神家の一族 (2006)
映画【犬神家の一族 (2006)】は、石坂浩二主演シリーズの平成版。
市川崑監督の遺作となったリメイク作品です。
- 一代で成り上がった犬神佐兵衛が莫大な財産を残して死去
- 遺産分配についての遺書は、一族が揃ったときに公表すること
- この相続を危惧した犬神家の顧問弁護が金田一を招待
- ちょうどその頃、長女の息子・佐清が白いマスク姿で戦地から帰還
- いよいよ遺言書を開封。そこには同居中の娘・珠世に全財産を相続させる、と
- 佐兵衛の娘たちは遺産目当てで我が子と珠世の婚姻を計画
- …するも次々と殺害され、佐清の正体にも不信感が
- 金田一は、遺産と珠世をめぐる殺人の裏にたどりついた
リメイクといっても原作小説は同じ、1976年の旧作と脚本もほぼ同じ。
違いは、佐清と珠世の関係がより親密、そしてラストシーンが異なる点です。
《リング》《呪怨》でお馴染みの一瀬隆重プロデューサーがリメイクを持ちかけ、松嶋菜々子さんのキャスティングをゴリ押し。
市川崑監督は、石坂浩二氏を金田一役にすることを条件に制作が実現した、という裏話があります。
30年前の映画版と同監督・同主演コンビに加え、豪華キャストの共演が見どころ。
横溝作品の中でも知名度抜群、なんなら原作も読んでいただきたい傑作中の傑作。
映画【犬神家の一族 (2006)】
監督 : 市川崑
出演 : 石坂浩二、松嶋菜々子、尾上菊之助、松坂慶子、萬田久子、仲代達也、中村敦夫ほか
上映時間 : 136分
原作本はこちら↓
…ということで、横溝正史原作の金田一シリーズ・石坂浩二主演映画をお届けしました。
シリーズと言ってもそれぞれ独立したお話になっているので、どれから観てもOKです。
ちょっと小汚いけど賢い金田一耕助・ユーモラスな脇役たち・切なくなる結末など、謎解き以外にも面白ポイントが目白押し。
あぁ、そうそう。
金田一耕助がいつも携帯しているトランクは、石坂浩二氏の私物だそうで。
アンティークな小物も素朴な景色の古さも、良い映像演出になっています。
日本推理小説の傑作、邦画ミステリーの最高峰に触れるきっかけになれば、恐悦至極にございます。
総勢28名の金田一俳優を一気にご紹介。
完全網羅したまとめ記事も、あわせてどうぞ↓
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