S・キング原作と言われる映画の中には、「へー。こんな世界観のもあるんだ」と思う作品もあったりします。
…といっても原作そのままではなく、けっこう脚色されちゃったりしてますが。
ホラーというより未来の世界、S・キング原作映画の中からSF系作品をピックアップしてお届けします。
ダークタワー(2018)
S・キングは長編も短編も執筆する巨匠です。
中でもかなり作り込まれた長編ダークファンタジー小説が、7部構成になっている《ダークタワー》という作品。
ハリポタみたいなシリーズものではなく、1部ごとに独立した物語になっているのが特徴でしょうか。
その7部作のひとつ《最後のガンスリンガー》物語を、さらにザックリ凝縮してSFバトル部分のみを映像化した作品が【ダーク・タワー】です。
映画【ダーク・タワー】のあらすじ
世界と宇宙を繋ぎとめ、秩序と混沌のバランスを保つ象徴的な建造物だった暗黒の塔・ダークタワー。
しかしいつしか時代の流れとともに塔の崩壊が始まってしまい、世界は荒廃と滅亡の危機に瀕してしまいます。
ダークタワーの崩壊は、世界の終わりを意味する事態。
そして「ガンスリンガー」と呼ばれる塔の守り役も、生き残りは最後のひとりに。
荒廃に乗じて世界を滅ぼし、野望と共に新たなる世界を作ろうとする巨悪な敵を相手に、ダークタワーの存在を巡って死闘を繰り広げる物語。
映画【ダーク・タワー】の見どころ
圧倒的なクールさ。
この作品の見どころは、動と静を巧みに使い分けた映像美とガンアクションにあります。
- 時代的には幻想的な近未来
- なおかつ西部開拓時代の西部劇っぽさが融合してる
- 邪悪な黒い男VS黒ずくめのガンスリンガーの対決がカッコいい
- 何よりガンスリンガーの銃に弾を装填する技に釘付け
- ガンスリンガー役にイドリス・エルバ、敵役にマシュー・マコノヒーと俳優陣も魅力的
少しだけ物足りなさを感じるとしたら、この世界観の背景が掴みにくいところですかね。
ダークタワーの重要性やガンスリンガーの存在、邪悪な敵との繋がりという丁寧な説明はなく、ドンパチがメイン。
キングの原作ではそのあたりもきっちり書き込まれているので、観終わったあと原作を読みたくなります。
キングファンというより、ガンアクションファンの方におすすめのSF作品です。
バトルランナー(1987)
映画【バトルランナー】は、案外キング原作とは気付かれないほどキングっぽさがありません。
それもそのはず、原作者は「スティーブン・キング」ではなく「リチャード・バックマン」です。
いや、キングちゃうやん!というと、実はキングの別ペンネーム小説の映像化作品にあたります。
そんなプチ情報に加えてシュワちゃん主演、期待が膨らむSFアクション大作です。
映画【バトルランナー】のあらすじ
世界は経済が破綻し、食料も資源も底をついた2017年。
ひと財産築いた大富豪も、懐を肥やす政治家もいない国家が舞台です。
一般市民か犯罪者か、というほど極端な情勢の中、独裁的に国家を牛耳るのはもはや警察のみ。
こんな荒廃した世の中では大した娯楽も許されず、人々の唯一の楽しみといったらリアルバラエティ番組くらいしかありませんでした。
その番組こそが「バトルランナー」
ランナーと呼ばれる犯罪者VSストーカーと呼ばれる警察官の鬼ごっこを生中継するだけの番組です。
しかし内容は過酷なもの。ランナー(犯罪者)が命を落とすとゲームオーバー。
ただしストーカー(警察官)から見事逃げ切れば無罪放免、しかも莫大な賞金もいただけちゃうというオマケ付き。
そんな唯一にして超人気娯楽番組に、ランナー(犯罪者)として出演することになったひとりの警察官がおりました。
彼は何の因果かちょっとハメられ、無罪なのに犯罪者に。
容赦なくあの手この手で抹殺せんと追っかけてくるストーカー(警察官)を、走って逃げて、ギッタンギッタンにしていく爽快バトル物語です。
T2のあの名セリフが!?シュワちゃん主演の映画【バトルランナー】↓
監督:ポール・マイケル・グレイザー
キャスト:アーノルド・シュワルツェネッガー、アンバー・メンデス他
映画【バトルランナー】の見どころ
さすが別ペンネーム。だからいつものキング節とは違うのね、というと、そこは若干大人の事情。
当時、米国出版業界では「1作家1年に1冊まで」こんな暗黙の了解がありました。
そこで他の作家たちも別ペンネームで1年で2冊出版していたので、キングもせっせとリチャード・バックマン名義で《バトルランナー》を執筆することに。
結局はちょっと脚色されて、見どころは完全にシュワちゃんに持っていかれてますけどね。
- 正義感が強すぎて陥れられた主人公の警察官役がシュワちゃん
- 映画《ターミネーター》の2年後に公開された期待作
- 実はこっちが先となるあの名セリフ。なんとターミネーターじゃないシュワちゃんの「I’ll be back」発言を拝める
- まだCGがそこまで主流じゃないので、爆破や炎上シーンの炎はホンモノ
- …とはいえ、アクションはちょっとショボい
一躍有名ハリウッドスターになったシュワちゃん。
別ペンネーム小説が原作とはいえ、S・キング作品に出演していたんですね。
ただ、原作では時代設定がもっと後の2025年だったり、「バトルランナー」番組への出演の経緯は若干異なります。
キング作品というよりも、シュワちゃん主演・迫力に欠けるアクションを観たい方におすすめの作品です。
バーチャルウォーズ(1992)
1992年制作、近未来SFゲーム感覚のホラー作品が映画【バーチャル・ウォーズ】
Netflixで同じタイトル《バーチャル・ウォーズ》という2016年作品がありますが、全くの無関係です。
ついでにいうと、キング原作映画として制作されたはずのこの作品も、結果的には原作とほぼ関係なし。
いちおう元になったのは、キング原作小説《芝刈り機の男》という短編なんですけどね。
大幅にストーリーが書き換えられ、キングのご機嫌を損ねた作品でもあります。
映画【バーチャル・ウォーズ】のあらすじ
舞台は2001年の近未来。
物静かで真面目、温厚で優しい青年は、面倒を見てくれる牧師からひどい虐待を受ける日々を送っています。
なぜなら彼には少し知的障害があったから。
それでもせっせとあちこちの庭の芝刈りを手伝い、そんな青年のことが気がかりな一人の博士が、とある実験を行うことに。
博士はバーチャルリアリティーの世界が未来を切り開く鍵になる…と熱心に研究しており、青年をその被験者として選んだのです。
初めのうちこそゲームとしてバーチャル体験をさせられた青年は、これがきっかけとなり脳が活性化。
みるみる知的障害は回復し、さらには恐ろしい力・超能力まで身につけることになっていきます。
力を得て頭脳も開花した青年が自分を虐待してきた人物に復讐し、果ては世界征服も目論むという壮大なSF物語。
まだポケベル時代のCGが観れる映画【バーチャル・ウォーズ】↓
監督:ブレッド・レナード
キャスト:ピアース・ブロスナン、ジェフ・フェイヒ他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません。
映画【バーチャル・ウォーズ】の見どころ
この作品が公開された年・1992年は、まだ今のようにパソコンやスマホを誰でも扱う時代ではありませんでした。
電話はもちろん有線の固定電話、ちょっと連絡取りたいときはポケベルが流行った頃。
そんな時代に考案されたCGバーチャルな世界観が最大の見どころかと思います。
- CGはショボいが、実写とバーチャルCGを切り替えた映像展開が面白い
- 主演が007のボンド役ピアース・ブロスナンなので目の保養になる
- …が、この壮大なストーリーは原作には全くない展開
- ある意味キングの名を語る詐欺映画…とはいえストーリーは良く出来ている
- だからなのか、クレジットから原作キングの表示削除というトラブルあり
- さらに現在、動画配信なし
- ついでに言うと、ブルーレイはおろかDVD化もされていない
……申し訳ございません。
VHSビデオテープしか手に入らないような作品をチョイスしてしまいました(笑)
一体どうやって鑑賞するのさ、というとレンタルのみかもしれません。しかもビデオデッキ持ってないと観れないという。
原作から大きく外れてほぼキングとは無関係な作品であることに加え、気になっても気軽に鑑賞出来ない作品となっております。
ドリームキャッチャー(2003)
S・キング原作映画で有名な「IT/"それ"が見えたら、終わり。」に近しい雰囲気のあるSFホラー作品が【ドリームキャッチャー】
子供時代の友情が、大人になって大きな敵と対峙することに繋がっていきます。
いわば成長譚とパニックホラーとモンスターとSFと、満腹に盛り込んだ作品です。
映画【ドリームキャッチャー】のあらすじ
子供の頃。
4人の少年達には、不思議な力を持った知的障害の友人がおりました。
からかわれ、いじめられていたその子を助け、仲良くなっていく中で4人の少年達は彼の不思議な力を分け与えられることに。
秘密の能力を宿したことで、一層深まる絆と友情。
あれから20年経った今でも、青年となった4人は毎年雪山にハンティングに出かけるという恒例行事の繋がりがありました。
しかしその年に限っては、事故に遭ったりすこぶる体調を崩したり…と少し異変が。
そんな中、雪山で遭難した男性を救助したことが引き金となったのか、彼らの身に恐怖が訪れてしまいます。
ひとりはトイレでヘビのような怪物に襲われ変わり果てた姿に。
またひとりは突如現れた宇宙人に身体を乗っ取られることに。
実は軍も隠密に関わっていた地球外生命体との争いに巻き込まれ、彼らが不思議な力を持った意味は、この時のためだったのかもしれません。
4人のうちの生き残った人物と、かつて不思議な力を分け与えてくれた友人と、そこに軍も加わってモンスターパニック&宇宙人侵略をどうにかするSF大作です。
映画【ドリームキャッチャー】の見どころ
この作品は、キングの同名小説の映像化作品。
とりわけキング本人が「映画化された自身のホラー小説の中で最高の出来」と賞賛したらしい秀作というところが見どころのひとつかと。
- 怪物や宇宙人といったクリーチャーホラー系だが、若者の成長が注目ポイント
- 怪物にやられてギャー!グロい!というより汚物まみれのエグい描写
- 登場人物は至って真剣にピンチなんだろうが、オナラ・ゲップ・汚物シーンはちょっと笑える
いつもは聡明でいい人役が多いモーガン・フリーマンが、悪人ヅラに徹したところも見どころ、という口コミもありました。
色々設定を詰め込み過ぎな割には、混乱しないストーリー展開が見事かと。
化け物もSFも友情もホラーもまるっとまとめて観たい方におすすめの作品です。
…ということで、特にSF感の強いキング原作映画を4作品お届けしました。
ちょっとホラーテイスト有りというより普通にSFアクションバトルっぽくて、あんまりキング原作って気付きにくいですね。
まぁガラッと脚本書きかえられちゃったりしてるので、原作というより原案に近いかもしれません。
巷でS・キングの映画が有名になっても、怖いから観れない…そんなあなたもSFならイケる!というお役に立てれば恐悦至極にございます。
その他のS・キング原作映画もジャンル分けしてお届け中。
気分に合わせてチョイスする際にお役立ていただけたらと思います。
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