数々のヒット作映画の原作に用いられる、モダンホラー小説の巨匠スティーブン・キング。
独断と偏見でジャンル分けし、化け物やクリーチャーが出てくるキング原作映画作品をピックアップしてお届けします。
マングラー(1995)
まず1発目の映画は、こんな最期は絶対嫌だ!というグロ系ホラーの真骨頂【マングラー】
S・キング原作の短編小説『人間圧搾機』の映像化作品にあたります。
タイトルの意味としては、クリーニング工場にある大きなシワ伸ばし機械の名前といったところ。
機械に悪魔の魂が…という、ちょっとオカルトチックな化け物系です。
映画【マングラー】のあらすじ
物語の舞台はブルーリボン洗濯工場。
ここは、洗ってシワも伸ばして綺麗にたたんで…と、いくつもの工程でシーツを洗濯するクリーニング工場です。
ある日工場勤めの従業員が、誤って出血を伴う怪我をしてしまいます。
その血がたまたまシーツのプレス機に飛び散り、機械がその味を覚えて大暴走。
シーツなんぞではなく、人間を巻き込んでそりゃもうグッチャグチャにコマ切れミンチにし始めます。
それもこれも、実はこのプレス機に宿っていた悪魔の仕業。
ひとり、またひとりと従業員が肉片と化し、終いにはプレス機が歩き出してやりたい放題の殺戮を繰り返すように。
この暴走を止めるべく、事態収拾に乗り出した刑事とオカルトオタクな義弟がなんとか悪魔祓いしようと奔走する物語。
映画【マングラー】の見どころ
あとひと押しの強烈さがあったなら、グロ系ホラー映画でもっと有名になったかもしれません。
機械の暴走っぷりが見どころですが、ちょっと中途半端な気がします。
- シーツのプレス機で人間がプレスという設定は怖すぎる
- 肉塊になっちゃうグロさはあるが、ちょっと控えめ3人ほど
- 化け物のプレス機「マングラー」がそのうち歩き始めるという無謀な見せ場は面白い
- …といっても工場内。どうせなら街に繰り出して欲しかった(笑)
- マングラーに取り憑いた悪魔を祓うシーンはやっつけ仕事(←けっこう雑)
グロさだけではなく、ロバート・イングランド(映画エルム街の悪夢のフレディ役のホラー俳優)の怪演も光り、怪しげな雰囲気は漂いまくってるんですけどね。
スチームパンクな映像がそそられるので、グロ好き・工場フェチの方におすすめしたい作品です。
クジョー(1983)
映画【クジョー】は、動物ものの怪物ホラー。
といっても、そのまんま普通に犬が化け物扱いで登場します。
犬好きを恐怖のどん底へ、深い不快な悲しみに陥れる鬼畜な作品です。
映画【クジョー】のあらすじ
舞台は荒野も広がる自然豊かな海辺の街キャッスル・ロック。
この街の自動車工場の飼い犬クジョーは、ある日ウサギを追いかけて遊んでいるうちにコウモリに噛まれて狂犬病を発症してしまいます。
飼い主はおろか飼い主の友人もクジョーに喰い殺され、そうとは知らず自動車修理に訪れた母子もピンチに。
エンストして動かなくなった車内でクジョーの執拗な攻撃に耐えるものの、息子は脱水症状で別の命の危機にも瀕してしまいます。
大型犬セントバーナードのクジョーが、血まみれヨダレまみれで凶暴性をあらわにしていく姿がトラウマになる物語。
犬好きの方にはショックが大きい!?映画【クジョー】
監督:ルイス・ティーグ
キャスト:ディー・ウォーレス、ダニー・ピンタウロ、ダニエル・ヒュー・ケリー他
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映画【クジョー】の見どころ
作りもの、創作上のクリーチャーによる恐怖ではないところ、現実味ありげな設定のストーリーが見どころでしょうか。
- もし愛犬が狂犬病に罹ってこんな風になっちゃったら…と想像したらそら恐ろしい
- ノスタルジックで牧歌的な景色とは正反対の血祭り描写が印象的
- ジワジワと確実に獲物を狙うクジョーと、追い詰められる親子の緊迫感
- クジョーを演じたワンコの表情、演技がすごい
襲われれる人々の大げさすぎるリアクションが、鑑賞中の緊張感をフッと緩めるスパイスにもなっています。
…が、これは犬好きや飼っている方には、おすすめしたくない作品。
犬が悪役過ぎて、気分が相当滅入るかもしれません。
ちなみに私は子供の頃に大型犬にのしかかられて以来、戌年生まれですが完全に猫派になりました。
あの時のトラウマが蘇り、一層の怖さが。
「REONさんの観なきゃ良かった作品」にノミネートさせていただきたく思います(他にもあるかは不明です笑)
地獄のデビルトラック(1986)
映画【地獄のデビルトラック】は、キングの短編小説をキング自ら仕切った初監督作品。
なかなか厳つく恐ろしげなタイトルがついてますが、中身は驚くほどやらかした感しかないB級モンスタースリラーです。
映画【地獄のデビルトラック】のあらすじ
ある日突然機械が凶暴化。
どうやら地球に接近した彗星の影響が出てしまった模様です。
もれなく大型トラック運ちゃんばかりが集う、小さな町の小さなダイナーでも、日常使いの便利な機械が殺人マシーンとなって襲いかかります。
ジュークボックスやコインゲーム機からは異様な電磁波とコインが放出され、がめつい運ちゃんはお金を拾うついでに感電死。
ダイナーのウエイトレスのお姉ちゃんは、電動パン切り包丁の猛アピールで手を切りそうに。
そしてこの機械どもの凶暴化は、なにもこのダイナーに限ったことではありませんでした。
町のいたるところで被害者が続出。
まるで意思を持ったかのように、トラックまでもが無人で暴走を始めます。
「ニンゲン、ハッケン!」と巨体を唸らせ、町を恐怖のどん底に・観客を笑いのるつぼに陥れる、おかしな方向にいっちゃった化け物語です。
メガホン握ったのはS・キング。映画【地獄のデビルトラック】↓
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映画【地獄のデビルトラック】の見どころ
この作品の最大の見どころは、S・キング自らメガホンをとったところ。
もう完全にやりたい放題、好きなように自身の世界観を盛り込んでいます。
それがまた怖さより笑いをもたらすシーンのオンパレードで、最後まで飽きないくだらなさがポイント。
- 電動ナイフからデカいブルトーザーまで。機械系が狂って襲うわりに逃げる手立てが自動車(←いや、それも機械だよね)
- 凶暴化したATMは、客に向かって「お前はクソ野郎」発言
- 給油機から飛び散ったオイルでやられるトラック運ちゃん。「目がぁーー」とラピュタのムスカ状態
- 自動販売機から飛び出す缶ジュースであえなくお陀仏(←股間と頭部直撃による)
- 無人暴走し始めるトラック軍団には、個々ではなく指揮官がいるらしい
- 仕切る指揮官トラックの車体には、極悪面の機関車トーマスみたいな顔がついてる
- メガホンとったキング自身、失敗作と認めてる(←おいw)
怖いシーンはもちろんあります。凶暴な機械で惨殺されるので、血まみれスプラッターにはなります。
…が、ツッコミたくてたまらなくなるかと。
バカバカしくもくだらない、B級ホラー全開のキング映画を観たい方におすすめの作品です。
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地下室の悪夢(1990)
映画【地下室の悪夢】は、キングの短編小説をまるっとまとめた初のオムニバス本『ナイトシフト(深夜勤務)』シリーズに収められた同名小説の映像化作品。
よくアメリカのご家庭には物置き地下室が完備されてますが、この作品の地下室はもっと広くてヤバい工場の地下。
そこに潜む巨大クリーチャーの容姿や惨虐さに「ギャー!」とか「わーーー!」ってなるモンスターパニック系です。
映画【地下室の悪夢】のあらすじ
舞台はとある縫製工場。
ここで夜勤の職にありついたひとりの男性は、地味にボチボチこなせばいい工場仕事にそこそこ満足しておりました。
ただやっぱり不満もあって、なにが嫌って縫製工場内の無駄な熱気・ジメりすぎる湿気・鼻がもげる臭気。
そして1番嫌なのが、ちょろちょろチューチュー鳴きながら大量に住み着いているネズミの存在。
そんなある日、あまりに多すぎ・しかも猫くらいデカい・不潔なチューチューをなんとかすべく、数名の従業員が駆逐業務に就くことに。
ネズミの出入り口も発見し、いざネズミ退治を…と思ったら、工場地下には複雑に入り組んだ薄暗くさらにジメジメクッサい地下空間が。
凶暴そうな猫サイズの大量のネズミと追いかけっこと見せかけて、とんでもないサイズの巨大人喰いコウモリに襲われまくる物語です。
ネズミじゃないのよ化け物は。映画【地下室の悪夢】↓
監督:ラルフ・S・シングルトン
キャスト:デヴィッド・アンドリュース、ケリー・ウルフ、スティーブン・マック他
※現在動画配信サービスでの取り扱いがありません。
映画【地下室の悪夢】の見どころ
本って、細かな情景描写も丁寧に書き込まれてて、それを妄想する楽しみがありますよね。
この作品の見どころは、地味で短いストーリーを「読む」んじゃなく「観れる」ところかと思います。
- 原作文章のイメージそのまま映像化されてる感じ
- オドロオドロしい暗さと、見てもわかる臭そうな雰囲気がいい
- ぐっちゃり複雑に入り組んだ、迷宮みたいな化け物の巣の描写に見入ってしまう
- 主役以外の地下室行きメンバーが、濃いキャラ揃い
ストーリー的にはひどく単純な作品です。
いかにもな場所・いかにもな化け物・絶対やられるとわかる犠牲者たち。
そこに一見すると要らない要素にも思える大量のネズミを登場させることで、プチどんでん返しな展開に。
ものすごくハラハラするわけでもなく、ものすごくつまらないわけでもないというバランスの良さが魅力でしょうか(←いちおう褒めてます笑)
中途半端などんでん返しパニックを観たい方におすすめの作品です。
死霊伝説(1979)
映画【死霊伝説】は、最近久々に十二国記シリーズ続刊を出版した小野不由美さんの小説『屍鬼』に大きな影響を与えた1作。
キングの長編小説「呪われた町」の映像化作品です。
セイラムズ・ロットという原題の意味は、メイン州のセイラム(地名)と、ロット(ちょっとした地区)という分かりやすいタイトルになっています。
ザックリ言うと、まぁ普通に吸血鬼モノですね。
映画【死霊伝説】のあらすじ
物語の舞台はアメリカ・メイン州にある小さな田舎町セイラム。
普段から物静かで、のんびりと穏やかな時間が流れるこの街は今、街全体を覆い尽くす勢いの恐怖が広がっていました。
どこへ消えたとも知れぬ行方不明になる隣人。
原因不明の体調不良で命を落とす家族。
じわじわと忍び寄る不可解な死の背景には、この土地でひっそりと確実に仲間を増やそうとする吸血鬼の影が。
青白い屍人のように様変わりし、住人の多くが妖しく光る眼差しの吸血鬼へと変貌するクリーチャーホラー物語です。
映画【死霊伝説】の見どころ
そもそも元になったキング小説自体、けっこうな長編のこの作品。
どこまで映像化し、どこを端折るかで仕上がりが大きく変わりますが、原作の良さは充分活かされているような気がします。
- ちょっと映画作品は3時間超えの長尺
- 吸血鬼が用意周到にバレないようにジワジワ仲間を集う様が丁寧に描かれている
- お約束通り、吸血鬼の弱点は「十字架・聖水・木の杭」と、安心の展開
- 古く粗い映像が、今観るとかえっていぶし銀のように怖さの演出のひとつになっている
私は昔からひどい貧血持ち。
なので、この作品の「吸血鬼になり始めの症状=悪性貧血」を観て、いよいよ吸血鬼になるのか…とアホな感想を抱いた遠い過去があります(笑)
王道だけれど、今観るからこそ新鮮に感じる安心のクリーチャーホラーを堪能したい方におすすめの作品です。
スリープウォーカーズ(1992)
映画【スリープウォーカーズ】は、端的に言うとごっついB級ホラー作品。
腕がもげる・指が喰いちぎられる・血がブッシャーー…と充分なスプラッターシーンはあるものの、ツッコミどころありまくりです。
映画【スリープウォーカーズ】のあらすじ
カリフォルニア州の小さな街で、ある奇怪な行方不明事件が続発。
被害者は決まって美しい母娘で、特に娘は無人の家屋で干からびたミイラ状態で発見。
そんな事件がパタリと止んで、現場から遠く離れたインディアナ州にひと組の親子が越してきます。
母親にしては若く美しい女性、成績も優秀でイケメンな高校生の息子。
しかしこの親子こそがカリフォルニア州の事件の深く関わる人物であり、人ならざる吸血鬼だったのです。
若い女子の生き血を啜り…ではなく、処女の精気が生きる糧。
化け物親子にロックオンされた女子が、化け物の天敵・猫とともに壮絶なバトルを展開する物語です。
スプラッターと猫と化け物と…トウモロコシ!?映画【スリープウォーカーズ】↓
監督:ミック・ギャリス
キャスト:ブライアン・クラウス、メッチェン・エイミック、アリス・クリーグ他
※現在Amazonプライムビデオ以外での動画配信はありません。
映画【スリープウォーカーズ】の見どころ
チラ見程度では分からない、おかしな要素とおかしな展開がてんこ盛り。
かなり独特の化け物像や、実はS・キングも墓守り役でキャスト出演していたり、サービス精神旺盛なところが見どころかもしれません。
- 化け物親子の正体は、猫と爬虫類とエイリアンをミックスさせたお姿
- 正体の一部が猫なのに、猫に弱い(引っかかれると発火してお陀仏)
- 普通に刺したり撃ったりでもちょっと致命傷
- イケメン高校生の化け物が、けっこうなマザコン
- お食事の好みがこだわりすぎ(性格良し&純粋可憐な若くて美しい処女限定)
- 化け物は自分も物も透明にする特殊能力持ち
- …が、透明にした車が再び現れる時、別の車になってたりする
- さらに特殊能力は、食いかけのトウモロコシで人間を刺殺することも可能
- とにかく猫がワラワラ登場し、化け物退治するエンディングはひたすら可愛いい
おいおい、これでいいのか巨匠…と、怖いというよりつい笑いがこみ上げます(笑)
ありきたりホラーに飽きた方の暇つぶしにおすすめの作品です。
…ということで、沢山あるS・キング原作映画の中から『化け物・クリーチャー系部門』をお届けしました。
こんな作品もあったんだ、という参考になれば恐悦至極にございます。
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