巷どころか全世界規模で世間を震撼させている映画《ジョーカー》
ブームに乗って観たいけど、過去のジョーカー出演作品も観ておいた方が良いのかな…
ということで、過去作品を観てなくても大丈夫!を解説すべく、チョロっとうんちくも交えてジョーカー関連作品をお届けします。
ジョーカーって何者?
ジョーカーは、1940年頃から発行されているご長寿アメコミ「バットマン」の敵・悪役です。
英語圏では悪役=ヴィラン(villain)と表現し、中でも超能力や科学を駆使して悪事を働く犯罪者は「スーパーヴィラン」と呼ばれます。
悪役といったらプロレスとかではヒール呼ばわりするので、ヴィランって何やねん!と思ったんですが、単に英語というオチですね(笑)
- ジョーカーは「スーパーヴィラン」に分類される極悪人
- よく笑う道化のようなジョーカーもいれば、復讐に燃え狂気に満ちたジョーカーもいる
- さらに特殊能力はあったりなかったりもする
- ただし、悪賢さはピカイチ。特殊じゃなくても明晰な頭脳派
コミックス版で描かれるジョーカーって、いろいろいるんだね。
一概に「ジョーカー」で一括りにはならんようだな。
そう、コミックス生まれのジョーカーには、実にたくさんの個性が。
のちにバットマンがアニメ化されると、あっちもジョーカー・こっちもジョーカーと接点のないジョーカーがワラワラしています。
例えば日本のご長寿コミックス「ルパン3世」では、大泥棒ルパン一味はキャラクター性が一貫していますが、アメコミではそうではない模様。
そんな摑みどころナッシングなジョーカーも、初めて実写として登場するように。
ただ、初めての実写映像化は映画作品ではありません 。
ジョーカー初登場の映像作品はコレ
初めてジョーカーのお姿を実写として拝めるのは、TVドラマ化されたバットマンシリーズ。
そして初めてジョーカーを演じたのはシーザー・ロメロ です。
- 俳優が演じるジョーカーの初登場は1960年代
- 顔面白塗り・緑の髪・肩パット入りの紫のスーツ・赤く塗りつぶされた唇が特徴的
- ただしピエロっぽいだけで、赤鼻でもなければ目元もアイラインが濃い程度
- 高笑いする愉快でコミカルな盗っ人というキャラ
古いTVドラマシリーズですが、モノクロではなくカラー。
このTV版のイメージが、のちのジョーカーのイメージに繋がっています。
といっても見た目的な部分だけですけどね。
ここからトレードカラーが紫や緑になったんだ。
高笑いするところは、他の映画作品の影響だそうだ。
実写化するにあたり、ジョーカー像の参考になったのが1929年の白黒サイレント映画『笑う男』。戦前の作品です。
ボサボサ頭に大きな口・狂気に満ちた表情は、コンラート・ファイトが演じた『笑う男』の登場人物グウィンプレンが元になっています↓
これまたインパクトありありなビジュアルですね。
この『笑う男』に、さらにTVシリーズ制作サイドやシーザー・ロメロの思い描くジョーカー像が反映され、笑いながら悪事を働く…というキャラクターに。
以降、派手なカラーと笑いという部分だけは、どの作品でも共通するジョーカー像となっていきます。
ちょっと動画が5分と長いんですが、2:15あたりでジョーカーがお目見えするTVシリーズ版バットマンの一部映像をどうぞ↓
ジョーカー登場の映画は6作品
DCコミックス・TVシリーズでどんどん人気がうなぎ登った「バットマン」は、いよいよ劇場版映画としても制作されるようになりました。
バットマンにやられても不死鳥のごとく蘇るジョーカーは、映画でも数作品に渡り登場しています。
作品ごとのジョーカーの特徴や繋がりを検証しつつ、過去のジョーカー出演作品をピックアップ。
バットマン(1989年)
初めてジョーカーが出演した映画は、初めてバットマンを実写化した映画《バットマン》です。
私が愛してやまないティム・バートン監督が手掛けた作品。
そしてティム・バートン監督だからなのか、主役のバットマンよりも異形の存在・ジョーカーがひときわ目立つ仕上がりになっています。
- バットマン役には、以前のティム・バートン監督作品でタッグを組んだ俳優マイケル・キートン
- ジョーカー役にはジャック・ニコルソン
- TVシリーズのジョーカーを模したキャラクター設定になっている
- ジョーカーは特別な力があるわけでもなく、ただのマフィアの下っ端の悪党
- バットマンとの闘いで容姿が変化。白い顔・緑の髪・裂けた口元になった
ある意味この作品でも、ジョーカー誕生秘話的なものが描かれてるっちゃ、描かれています。
が、それはもともと小悪党だったチンピラが、不満と復讐のためにジョーカーと名乗るようになった…といったところ。
ジョーカー役のジャック・ニコルソンの笑顔が…。
強烈だよな。バットマンの映画というより、ジョーカーの映画とも言えるかも。
不吉な存在感を振りまくジョーカーを堪能できる上、さらにこんな部分も見どころ。バットモービルなるえらいカッコいい車が登場します↓
流線型のフォルムにつや消し漆黒ブラックという、斬新な車体に魅了される観客も続出しました。
かくいう私も、バットマンよりバットモービル観たさで鑑賞した過去があります(笑)
映画《バットマン》のストーリー
犯罪が蔓延する都市ゴッサム・シティで、悪人成敗に明け暮れるバットマン。
彼の存在は都市伝説化し、スクープを狙う女性カメラマンは大富豪のお坊ちゃまがバットマンとは知らずに恋に落ちます。
そしてちょっとイチャコラしている間に、街はカオスに陥ることに。
それはかつて、バットマンに痛いお仕置きを喰らって醜い容姿に変貌したジョーカーを名乗る男の仕業。
精神を病み、笑いながら極悪犯罪を繰り返すジョーカーと、悪を成敗するために立ち向かうバットマン。
直接対決の行方や、ロマンスの行方も描いた作品です。
ティム・バートン監督作品《バットマン》には続編もありますが、ジョーカーが登場するのは初作のみ。
一旦ジョーカーは映画からはご退場 となります。
バットマン ビギンズ(2005年)
再びジョーカーが劇場版映画に登場するのは、バットマン映画としては累計5作品目にあたる映画《バットマン・ビギンズ》です。
ティム・バートン監督の初作《バットマン》からようやく返り咲きますが、ジョーカーに繋がりはありません。
さらに結論からチャッチャと述べると、この作品で俳優が演じるジョーカーは登場いたしません。
- 監督はクリストファー・ノーラン監督へと変更
- 主演のバットマンもマイケル・キートンからクリスチャン・ベールへ
- 新たなバットマン3部作「ダークナイト・トリロジー(Dark Knight Trilogy)」としてのリブート作品第1作目
- ジョーカーの存在は匂わせ程度。『トランプのジョーカー』が出てくるのみ
- 作品の見どころは、バットマンの誕生秘話といったところ
これまで映画化されたバットマンは、すでにバットマンとして活躍していたヒーローの物語。
なぜバットマンという存在として悪と対峙するようになったのかを描いたのが《バットマン・ビギンズ》です。
そして物語は《ダークナイト》《ダークナイト・ライジング》へと続き、登場するジョーカーには同一キャラクターとしての繋がりがあります。
その伏線的な要素として、《バットマン・ビギンズ》ではチラッと出演という形ですね。
といことで再登場のジョーカーは、後にも先にもダークナイト・トリロジー3部作以外の繋がりはありません。
映画《バットマン・ビギンズ》のストーリー
子供の頃の体験からコウモリ恐怖症になった、とある大富豪のお坊っちゃま。
ある晩強盗に襲われ、殺害された両親の復讐を心に誓います。しかし幼馴染の司法検事補佐からは叱責され、復讐は未遂に。
ところが両親を殺害した犯人は別の手で葬られ、彼が住むゴッサム・シティは法の秩序など通用しません。
不正も悪事も見過ごされ、蔓延する凶悪犯罪。
やがてお坊っちゃまは、超常的な能力がなければこの街を正せないことを悟ります。
そうして影の軍団の元で修行を積み、特殊スーツを製作。悪人が恐れる存在になるべく、己が恐れるコウモリをモチーフにしたバットマンになることを決意。
しかし街を正そうにもゴッサム・シティの腐敗の闇は深く、ひとつの事件を解決した後に「トランプのジョーカー」を残す新たな凶悪犯罪者の影が。
そして物語は継続し、ジョーカーの登場は次作《ダークナイト》に持ち越し となっております。
ダークナイト(2008年)
ダークナイト・トリロジー3部作の中で最高傑作と言われ、観るものの心に深くジョーカーを植え付けることとなった作品が《ダークナイト》です。
- ジョーカーを演じたのは、これが遺作となったヒース・レジャー
- バットマン役は引き続きクリスチャン・ベール
- バットマンの最強・最恐・最凶の敵としてジョーカーが登場
- ピエロメイクといったジョーカーのイメージを残しつつ、全く斬新で凶悪すぎるキャラ
《ダークナイト》って、普段ヒーローもの観ない人からも大絶賛なんだよね?
前作《バットマン・ビギンズ》で確立された世界観の表現が凄いんだよ。
3部作の初めに描かれたゴッサム・シティは、過去のどの作品とも共通する凶悪犯罪の街。
この作品では、さらに秩序とカオス、正義と復讐という明確に相反する体裁があります。
- ヒーローであるバットマンは秩序&正義の存在
- ジョーカーはカオス&復讐の存在
- …が、バットマンには「両親を殺した犯人に復讐したかった」という危うさが(前作で描写あり)
心に潜む混沌を執拗に突つき、正義心を引っくり返す狂気を孕んでいるのがジョーカー。
ただ悪人というだけではなく、全てを染めて狂気に堕とすという重いキャラクター になっています。
映画《ダークナイト》のストーリー
ゴッサム・シティでピエロの仮面を被った犯罪集団が銀行を襲撃。マフィアの資金を横取りするも、内輪揉めを起こしてたった1人、ジョーカーだけが生き残ります。
ジョーカーは目障りなバットマン殺害計画を立て、マフィアとも資金を巡って示談。
しかしマフィアとの交渉は決裂し、ジョーカーは様々な策で組織を乗っ取り牛耳ることに。
さらにはバットマンを陥れるべく、多くの人命を奪い続ける行動に出ます。
法を遵守する正義の立場にいた、バットマンの幼馴染である地方検事もジョーカーの策略に嵌り、善が悪へと変貌。
やがて「悪人といえど殺さずに成敗」という理念のバットマンの心にも、悪へと傾きそうになる揺らぎが。
単なるヒーローが悪をやっつけるだけではない、聖人になりきれないバットマンと狂人そのもののジョーカーとの攻防を描いた作品 です。
ダークナイト ライジング(2012年)
ダークナイト・トリロジー3部作の最終章では、ジョーカーのその後の描写がありません。
急逝したヒース・レジャーへの敬意とクリストファー・ノーラン監督の想いから、他の代役を立てることなく、別の角度から3部作が完結しています。
- 前作《ダークナイト》のエンディングは、ジョーカーは処刑されたとも精神病院送りで収監されたとも取れる描写
- ジョーカーがどうなったのかは、観客に委ねられることに
- 《ダークナイト ライジング》では、バットマンはジョーカーとは別の悪と対峙
ということで、バットマンVSジョーカーの敵対関係は明確な決着をつけることなくこれにて終結。
いちおう3部作を通して最も重く最も凶悪だったジョーカー像は、独立したダークナイト・トリロジーシリーズでのみ登場・完結していることになります。
映画《ダークナイト ライジング》のストーリー
ゴッサム・シティの正義の希望、象徴を狂気に堕としたジョーカーとの闘いから8年。
バットマンはあのとき正義から反転してしまった悪を全て背負い、街の闇の守護者として生きる日々を過ごします。
そしてあの事件がきっかけで成立した新たな法案のおかげで、ゴッサム・シティからは凶悪犯罪が一掃。
バットマンはバットマンとしての活躍だけでなく、資産家としての顔も引退することに。
しかし彼の資産や産業を狙う傭兵集団が現れ、核融合炉強奪という事件が。
さらに中性子爆弾へと変換されてしまい、巨大な犯罪が再びゴッサム・シティの街に影を落とします。
陰謀は静かに計画的に張り巡らされ、やがて街は無政府状態へ。
再起したバットマンは、数名の信じられる者とともにゴッサム・シティ壊滅の危機に立ち向かう …というお話です。
ジョーカーがどこかに、せめて名前だけでも登場しないのかなという淡い期待をつい抱きますが、登場することなくシリーズ完結。
またもや一旦ジョーカーは見納め 、ということになります。
スーサイド・スクワット(2016年)
この作品は確かにジョーカーは出てきますが、どちらかと言うと悪役をゴチャっと登場させたアメコミの実写映画化作品。
これまでのバットマンVS悪役ジョーカーという設定ではありません。
悪役による悪役のための、悪役ばっかりを堪能する悪役好きに捧げるアナザーストーリーってところでしょうか。
- ジョーカー役はジャレット・レト
- 歴代ジョーカーよりも若手。年齢不詳という設定
- 全身タトゥーのギャングのボスであり、クラブを経営するなど遣り手
- ちょっとぶっ飛んだツンデレ・ハーレイと恋愛関係にある
- 狂気はあるが、重くもコミカルすぎでもない
重々しくも悲しみや狂気を背負ったダークナイトシリーズから一変、登場するのは全くキャラ変したジョーカー。
しかも大幅に出番はカットされ、その他の悪役の方がメインキャラです。
特にジョーカーに恋するハーレイクインがほぼ主役、ジョーカーは複数のスーパーヴィランに埋もれる形での参戦となっております。
ということで、ジョーカーが登場する映画の中では、どの作品とも関連性が薄い作品 です。
映画《スーサイド・スクワット》のストーリー
ヒーローの手では犯罪を収束できなくなってしまった終末世界。
政府は、収監され溢れかえる凶悪犯罪者の中から特に凶悪・優れた能力の者を選りすぐり、対犯罪者部隊「スーサイド・スクワット」を設立します。
狂人ジョーカーとラブラブの関係にある元精神科医、今はクレイジーな収監者ハーレイと、もメンバーの一員。
恩赦を与えてもらえる反面、使い捨て傭兵となったかつてのスーパーヴィランたちは、やがて仲間意識も芽生え、悪が悪をぶちのめす世界に。
しかし所詮スーサイド・スクワットの面々は極悪人。
なかなか上手い戦略だったものの、誤算も生じて政府にもハーレイにもいろいろとピンチが。
愛するハーレイのためにジョーカーがチョロチョロし、とにかく派手なドンパチやら悪党どものやりたい放題を堪能するお話 です。
ジョーカー(2019年)
こうしてDCコミックス以来、人気ヴィランとなったジョーカーは、とうとう主役の座を射止めました。
それがホアキン・フェニックス主演の映画【ジョーカー】
ジョーカーとは何なのか。ジョーカーがなぜ誕生したか。ジョーカーの狂気はどこから来たのか。
バットマンはもとより、ヒーローとの絡みは全くありません。
さらに、これまで何作にも渡って登場してきたジョーカーの誕生秘話でもありません。
全く新たな人物、悪人でも凶悪犯罪者でもなく一般市民だった男がジョーカーになってしまった経緯 が描かれています。
映画《ジョーカー》のストーリー
いつかコメディアンになる夢を持ち、今はピエロの姿で大道芸人として働くアーサー。
しかし財政難に喘ぐゴッサム・シティでの生活は苦しく、さらに彼には人とは異なる障害が。
突然笑い出してしまうトゥレット症候群という神経精神疾患を持つ彼は、社会からのけものにされ、要領の悪さもあって常に何かに抑圧される日々。
ただ、音楽に対する愛は抑圧されることなく満ち溢れ、介護が必要な母への愛情にも満ちています。
貧困と差別格差のはびこるこの世の中で、優しさも愛も小さな幸せも感じながら、心の奥底に潜む何か強い感情を知ってしまったアーサー。
突然笑い出す症状のように、突然噴き出してしまった感情のその先に見えた彼の新しい世界、ジョーカー誕生の瞬間を描いた作品 です。
…ということで、おわかりいただけただろうか(笑)
映画【JOKRE】は、あんなジョーカーでもこんなジョーカーでもなく、独立した個人像 として描かれています。
もちろんコミックス版バットマンに登場するジョーカーも、TVシリーズに登場するジョーカーも、映画作品のジョーカーも『JOKER』には変わりありません。
が、時代の流れや風潮、制作監督の意図や演じる俳優のイメージによって、ジョーカー像はよりどりみどり。
特に過去作品との繋がりがないので、「他の作品のジョーカーを知らないと最新作も楽しめないんじゃ…」という心配はご無用です。
ホアキン・フェニックス主演の最新作【ジョーカー】を、心ゆくまでご堪能いただく参考になれば、恐悦至極にございます。
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