世界をカオスに導いた、悪魔的な絶対的独裁者アドルフ・ヒトラー。
彼が現代に蘇り、まさかの芸人デビューで人気者に。
そんな荒唐無稽なコメディストーリーなのに、キャッチコピーは『笑うな危険』
…えっと、それってどういうこと?
現代社会の深い闇も込められ、世間を震撼させたコメディ映画【帰ってきたヒトラー】の世界へとご案内いたします。
この記事でわかること
- あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・動画配信サービス・DVD情報
【帰ってきたヒトラー】あの人物が…I’ll be back
昔も今もインフルエンサー!
…独裁者ヒトラーも、時代が変わればそうなるのか。
映画【帰ってきたヒトラー】は、悪名高きドイツの総統閣下・ヒトラーが主役のコメディ映画。
単語ひとつひとつが断定的な発音で、堅い印象があるドイツ語の作品です。
- ティムール・ヴェルメシュの風刺小説『帰ってきたヒトラー』が原作
- 世界史上、絶対悪の独裁者ヒトラーが主人公。しかもコメディタッチでイジってある
- …という原作小説は、絶賛と批判を浴びながらも200万部のベストセラーに
- 映画化するにあたり、リアリティを出すため俳優陣は無名で演技派な役者を起用
- 特にヒトラー役のオリヴァー・マスッチ氏は、本物のヒトラーに似すぎと話題に
ナチス時代にはなかった情報流通手段が、現代社会の闇を生んでいます。
それは、人と人とのコミュニケーションの危うさ。
そして、恐ろしい情報が恐ろしい速さで拡散すること。
すっかり変わった現代でも何一つ変わらないヒトラーは、そんな情報化社会の波に乗り、再び民衆のハートを鷲掴み。
洗脳したわけでも煽動したわけでもないけれど、現代らしい方法であっという間に台頭していっちゃう問題作が【帰ってきたヒトラー】 です。
映画【帰ってきたヒトラー】基本情報
帰ってきたヒトラー | 2015年 ドイツ映画 |
ジャンル | コメディ・ヒューマンドラマ |
監督 | ダーヴィド・ヴネント |
脚本 | ダーヴィド・ヴネント、ミッツィ・マイヤー |
原作 | ティムール・ヴェルメシュの小説『帰ってきたヒトラー』 |
上映時間 | 116分 |
出演 | オリヴァー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ、カッチャ・リーマン他 |
動画配信サービス | Amazonプライムビデオ(prime対象) |
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【帰ってきたヒトラー】どういうわけか現代に
物語の始まりは、かつてヒトラーの総統官邸があった跡地の様子から。
総統官邸の地下壕で自害…したはずのヒトラーは、落ち葉に埋もれ、土にまみれ、鳥のさえずりで目を覚まします。
- 目覚めた場所は、ベルリンに実在する総統地下壕の跡地に建つマンション敷地内
- ちょうどここで、しがないTVマンがドキュメンタリー番組を撮影中
- ヒトラー第一発見者は、このドキュメンタリー撮影に駆り出されたお子さま3人組
うぉー!ヒトラーじゃん!!
…という騒ぎにはならん。
ナチスの軍服・七三分けのツーブロックヘア・トレードマークの小さなチョビ髭。
このご時世に…というか、ドイツ国内でヒトラーの姿というのは、どう見てもヤバい人です。
- そもそもドイツには、ナチスをイジるのはご法度…という基本法(憲法)がある
- ヒトラーへの敬礼を思わせるので、腕を斜めにまっすぐ上げる行為は禁止
- ナチスを彷彿させるので、鉤十字をデザインとして用いることも厳罰の対象
民衆を煽動してホロコーストやらかしたから、何年経とうがナチスもヒトラーもご法度?
…ドイツ国民にとって、決して消えない黒歴史だからな。
今でも支持することはもちろんのこと、おおっぴらに取り上げることもヨシとしない風潮が根強く残っています。
なのにヒョッコリ現れたのは、いかにもそのまんまなヒトラー総統閣下。
大人が見れば大騒ぎになりそうですが、発見したのは戦争を知らない10歳前後の少年たちです。
- 少年たちは、ヒトラーを見ても「胡散臭くて小汚い残念な大人」だと思ってる
- ヒトラーは、子供たちが総統閣下であるワシに逢えて感極まってると勘違い
- お互いなんか会話がかみ合わず、ヒトラーは配下の軍曹を探すことに
もしかして…まだナチスが台頭してる時代だと思ってる?
…あぁ、街の様子にも人の様子にも戸惑ってはいるが。
まさかタイムスリップしちゃってるとは、これっぽっちも思っていないヒトラー。
そんな出で立ちでベルリンを歩いたら袋叩きか即逮捕だろ…
という心配をよそに、ふつうにキオスクに辿り着いちゃいます。
- 街行く人は、眉をひそめる者もいれば、笑って呆れる者も
- キオスクのおっちゃんに至っては、狭い店内で休ませてあげる優しさが
- ドイツ国民のヒトラー反感は、時代の流れとともに変わってきてるらしい
- むしろ「その格好しちゃうなんて笑」と良い見世物
で? ヒトラーは今が自分の時代じゃないって気付いたの?
…なんせ行った先がキオスクだからな。
そう。キオスクには新聞・雑誌がよりどりみどり。
ヒトラーは、今が2014年であること・戦争は終わっていること・ナチスも崩壊していることを知ります。
そうしてなぜこの時代に来たのか…は深く考えず、新聞・雑誌を片っ端から読み漁ることに。
多くの情報を制する者が、時代の覇者となることを知っているから。
笑いごとでは済まない風潮
お人好しのおっちゃんのご厚意に甘え、キオスクに居座るヒトラー。
売り物の新聞・雑誌は読み放題、チョコバーの差し入れまでいただきます。
- ヒトラーは、初めてのチョコバー体験にご満悦
- こんな携行食があったら士気も高まっただろうに…と、つい戦争に結びつける悪い癖も
- そんな彼を探しに、キオスクを訪れる人物が
知り合いなんて、この時代に居ないよね。
…誰もが知ってる存在ではあるだろ?
軍服姿で七三分け。
しかもチョビ髭ついたヒトラー似の人物を探しに来たのは、気の弱そうな青年です。
- 青年の名はザヴァツキ。あの日あの場所でドキュメンタリーを撮影していたTVマン
- 実は自分の映像に「ヒトラーそっくりさん」が映っていたから探してた
- …というのも、あの映像はボツ。しかもクビに
- 「ヒトラーそっくりさん」を特ダネにして、クビ撤回を狙うつもり
え。ヒトラーが本物って気付いてるの!?
…いや、どこまで「そっくりさん」なのか見に来たってとこだ。
ザヴァツキは、はっきり言って仕事のセンスがありません。
それでもなぜダメなのか、どうしたら良くなるのか、視聴者が何を求めるのかをとことん分析する努力家ではあります。
- ザヴァツキは、映像のチョビ髭がヒトラーっぽかったから、何者か確認したかった
- あちこち聴き込みし、実際会って見たら「わしヒトラー」と言い張ってる
- ベルリンでヒトラーを自称するとは…なんたるツワモノ!という話題性が
- これはネタになる、とさっそく連れ去り局長に掛け合った
まさかのヒトラー、芸人デビュー笑。
…運良く新局長がお気に召したからだが。
実は人事整理も重なって、センスのないザヴァツキはリストラされる羽目に。
と同時に、昇進レースを争っていた2人のトップディレクターのうち、斬新さのある女史が新局長に就任しておりました。
- 昇進に敗れた副局長は、ヒトラーの姿に嫌悪感を抱き、TV出演に猛反対
- ところが新局長のベリーニ女史は、ヒトラーを一目見て「イケる」と判断
- 「ヒトラーそっくり芸人」として、ガンガン売り込みまくった
- …ら、あっという間にTVでもネットでもYouTubeでも話題に
- 不謹慎どころか「ヒトラーになりきり過ぎ・似過ぎ」と、視聴者にバカ受け
これはもしや…。
…あぁ。ザヴァツキの分析力の賜物だ。
まさかベルリンでヒトラーを自称するなんて。
しかも口調も思想もまるパクリだなんて。
ザヴァツキの読み通り、民衆はこれを面白がり、一躍時の人に。
ヒトラーは意図せずして、勝手に民衆の心を掴んだ人気者になってしまうのです。
ヒトラーは、ヒトラー本人だからありのままの思想をドヤ顔で。
視聴者は、それが面白くて「ヒトラーそっくり芸人」の話に耳を傾け。
こうしてヒトラーの人気はますますウナギ登り、ドキュメンタリー映画の話も持ち上がります。
ザヴァツキが制作主任としてヒトラーとドイツ行脚をすることになり、昔とひとつも変わらない、あのナチズム思想に共感する民衆が続出。
そっくり芸人として民意を集め始めたヒトラーは、とうとう政界にまで進出することに… というのが大まかなあらすじになります。
【帰ってきたヒトラー】似すぎてゾッとする登場人物たち
ヒトラーを主役にしたコメディ映画。
もうこれだけでも充分インパクト大ですが、もっと強烈なのが配役のビジュアル。
つい「激似ww」と言いたくなるヒトラーを始め、主要な登場人物たちをご紹介いたしましょう。
アドルフ・ヒトラーは、最期の地と言われる総統地下壕跡地に突如現れた主人公。
受け取る側の勝手な解釈で超有名インフルエンサーになり、現代社会の闇を風刺する人物像となっています。
演じたオリヴァー・マスッチ氏は、舞台や映像作品で脇役を演じることが多かった俳優さん。
キャスティングに悩んだ制作サイドが散々舞台などを観まくって探し回り、目に留まったことがきっかけでヒトラー役に大抜擢されました。
ちなみに元顔が似ているわけではありません。
チョビ髭ついでに鼻などイジり、特殊メイクに2時間かけてヒトラー顔を作ってます。
不謹慎なヒトラー姿で市街に赴いた撮影時には、罵詈雑言や襲撃されるかも…という怯えもあったようです。
…が、まるで映画のストーリーさながらに、民衆は好意的だったそうな。
今作がただの世迷い言ではない実態を目の当たりにし、驚いたという後日談があります。
ファビアン・ザヴァツキは、うだつの上がらないTVマン。
番組企画センスもなければ、映像センスもない青年です。
若干マザコンの毛があるんですが、ママの励ましのおかげで少年ドキュメンタリー映像からヒトラーを発掘。
なりきり芸人と思い込み、自身の解雇撤回をかけてヒトラーを売り込みます。
クビにならずに済んだけれど、ヒトラーが本物だと気付いた時にはすでに遅し。
残念な余生を送ることになる人物です。
カッチャ・ベリーニは、ヒトラーをそっくり芸人としてTV出演させることを決定した敏腕女性局長。
ヒトラーが本物かニセモノかというのはどうでもよく、話題性と視聴率に繋がれば多少のことは大目にみる性格です。
ヒトラーの野望と己の野心がぴったりマッチ。
WIN&WINの関係を築く強かさがあります。
フランツィスカ・クレマイヤーは、TV局の制作フロア受付嬢。
事務処理能力に長けていて、ザヴァツキの片思いの相手でもあり、ヒトラーのサポートもこなします。
黒いゴスパンファッションがお気に入り、ユダヤの血を引く女性でもあります。
…と、この他に、ヒトラーを最初に世話してくれるキオスクのおっちゃんや、TV局内で出世を目論み失墜するプロデューサーなどが登場。
さらに一般市民たちは、撮影現地にお住まいのドイツ国民の皆様によるエキストラ出演です。
ゆえに一部目隠しモザイクが入るなど、ドキュメンタリーっぽさを重視。面白い演出になっています。
扇動や洗脳などしなくても、民衆の心を掴んでいくヒトラーの姿に心がザワつく作品 となっております。
まとめと感想と考察と
現代に蘇ったヒトラーが、まさかのソックリ芸人さん扱い。
つい笑っちゃう設定だけど、笑ってる場合じゃない現代社会の闇の深さにゾワっとします。
- かつての総統地下壕跡地に突如ヒトラーが蘇った
- 「ソックリ芸人」としてTVやネットで拡散され、あっという間にインフルエンサーに
- 情報収集も伝達も素早く行える現代ネット社会は、ヒトラーにとって好都合
- ヒトラーは真実と思想を昔のまま語っているに過ぎないのに、周囲が都合よく勝手に解釈
- 昔と変わらぬヒトラーの思想はどんどん拡散され、ついに政界進出するまでに
今作【帰ってきたヒトラー】は、笑えるけど笑ったら危険というキャッチコピー。
見どころは、大きく正反対の2つに分かれます。
《笑える見どころはココ》
- ドイツでご法度とされるヒトラーが主役
- しかもイジって芸人扱い
- ヒトラーはヒトラー本人にも関わらず、誰も信じず「ソックリ芸人」と決めつけ人気者に
この奇想天外な設定は、素直に笑える面白ポイントです。
その一方で、もう一つ。この作品の裏に隠された見どころが。
《笑ったら危険の怖さはココ》
- TVやネットが普及し、溢れるのは一方通行の情報ばかり
- 会話のキャッチボールが失われつつある状態
- もちろん書き込み掲示板やツイッターなどで、意見交換することはある
- …が、発するほうは好き勝手なことを言い放ち、受け取るほうも都合よく解釈してる
- 正しいコミュニケーションが取れないまま、会話が噛み合わないままでも話は盛り上がる
現代社会は、この噛み合っていないコミュニケーションがいとも簡単に拡散増幅しています。
つまり、一方的な情報を垂れ流すだけで、誰もが簡単にあっという間に煽動者になってしまう恐れが。
それに気付かず笑っていることが危険、ということ。
主人公のヒトラーは、自分があのヒトラー本人である…と本当のことを言い続けています。
さらに今も昔も、何一つ変わっていないナチズム思想を言い続けています。
なのに誰も彼もが、彼の意見を「ヒトラーのソックリ芸人さんのネタ」と都合よく解釈して笑っています。
笑っていながら、次第に魅了されてしまいます。
なぜ魅了されてしまうのか。
ヒトラーのブレない態度に、民衆が求め続けている答えがあるから。
漠然とした不満・どう表現したらいいかわからない不安。
人は誰しも楽なほうに逃げます。
あとで文句をいうくせに、大事なことは人任せ。
生きやすい世界を実現し、しかもきっちり責任も負ってくれる指導者がいれば万々歳という本音があります。
ヒトラーは、民衆が共感しやすい言葉で不満や不安を代弁し、うまく言葉で表現できない危うさを補っているだけ。
洗脳しているわけでも、煽動しているわけでもありません。
現代社会で『いいね』が付くような共感を生み出し、大きな力に変えているだけです。
いま世間は、TVやネットの情報、インフルエンサーの言動で良くも悪くも振り回されています。
『正しいか正しくないか、情報を取捨選択出来るのに、一方的に受け取って鵜呑みにしている』
『お互いの勝手な解釈で、人とのコミュニケーションが崩壊しつつある』
そんな社会問題に対して、警鐘を鳴らしているお話なんだと感じました。
絶対的独裁者だったヒトラーを主役にする事で、TVやネット、インフルエンサーに振り回されている様を皮肉り、映画として観る上でビジュアル面の完成度も抜かりなく。
こんなすごい映画は、そうそうないかと思います。
映画【帰ってきたヒトラー】は、コメディの裏を深読みすると、これほど怖いお話はない…というメッセージ性の強い作品 でした。
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