裏切りに続く裏切りで、全てを失った名家の次男。
彼は京の都でも知れた大盗賊・多襄丸の名と剣を継承し、しがらみを脱ぎ捨て愛と自由に生きることを誓います。
芥川龍之介の小説「藪の中」の登場人物が主人公、小栗旬主演の時代劇映画【TAJOMARU】の世界へとご案内いたします。
この記事で分かること
- 映画【TAJOMARU】あらすじ概要・出演キャスト
- 予告動画・DVDブルーレイ情報
【TAJOMARU】芥川小説をアレンジ
どんでん返しに次ぐどんでん返し!
…信じていた者からの裏切りほど、辛い事はないよな。
映画【TAJOMARU】は、芥川龍之介の短編小説『藪の中』が原作。
…というより、かなり大胆にアレンジしたオリジナル時代絵巻です。
- 監督は、MV・PVの映像監督として有名な中野裕之氏
- 主演は小栗旬氏、子役時代の北村匠海くんも出演
- その他キャストもかなり豪華
- 特に初の時代劇・初の悪役を演じた田中圭氏の演技力が見事
- 主題歌にB’zをお迎えし、最後まで見どころ満載
芥川龍之介の『藪の中』といえば、黒澤明監督の映画《羅生門》の原作小説。
ひと組の夫婦が盗賊に襲われて、主人が殺された事件の真相やいかに…というお話です。
目撃者や当事者の証言が完全に食い違い、果たして誰が主人を殺したのか。
真実が不明のままであることを「真相は藪の中」と言いますが、この芥川小説のタイトルが語源になっています。
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今でも数々の考察がなされ、それでも真相が分からない文学作品。その登場人物、盗賊の多襄丸が今作の主人公です。
ただし活用したのは名前や盗賊という立場だけ。
原作と異なる点が多いため、今作【TAJOMARU】の評価は賛否両論あります。
まず原作と言われる『藪の中』を読んだことがある方からすると、原作じゃなさ過ぎて低評価。
一方で、小栗旬氏や田中圭氏などキャストに興味がある方からすると、そこそこ高評価。
総合的な評価はというと、こんな感じ↓
- Filmarks : 2.7/5
- Amazon prime video : 3.8/5
- Yahoo : 3.5/5
あくまで二次創作の時代劇と割り切れば、ストーリーも演技も充分楽しめるかと思います。
何不自由ない家柄に生まれながら、盗賊となった男。
信頼と裏切りが交錯する、どんでん返しだらけの時代劇映画 が【TAJOMARU】です。
映画【TAJOMARU】基本情報
TAJOMARU | 2009年 日本映画 |
ジャンル | 時代劇 |
監督 | 中野裕之 |
上映時間 | 131分 |
出演 | 小栗旬、柴本幸、田中圭、松方弘樹・近藤正臣、萩原健一ほか |
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【TAJOMARU】名家の子息と賎民の子
時は室町、第8代征夷大将軍・足利義政の頃。
管領職にある名家・畠山家には、跡継ぎとなる2人の御子息がおりました。
- 管領とは、将軍を補佐して幕政を統轄する最高役職
- 室町幕府において、畠山家は将軍の次に権力を持つ家柄
- そんな名家の長男は信綱、次男は直光
- 大納言家の阿古姫とはよく一緒に遊ぶ仲
立派なお家柄の立派なお子様たちだ。
…見なりも振る舞いも、幼い頃から上品だな。
穏やかでおっとりした兄・信綱と、幼い頃から自分を律して常に兄を立てる聡明な弟・直光。
2人は家臣からも慕われるほど、本当にご立派な御子息です。
- 兄・信綱は、弟より劣っている自覚はある
- それでも妬んだり憎むことなく、兄弟仲はとても良い
- 2人に混ざる阿古姫は、直光のことが大好き
- 彼らが外遊びから帰ると、家臣が汚い小僧を取っ捕まえている場面に遭遇
- どうやら畠山の屋敷から芋1コ盗んだらしい
たった芋1コ?しかも盗んだの子供じゃん。
…歳のころは、信綱や直光と同じくらいかな。
ひどく汚れた小僧の腕を掴み、少々手荒なことをする家臣。
それを見た直光は、「くれてやれば良いであろう」と反論し、咎めぬよう進言します。
- 家臣曰く「芋ひとつがやがて馬一頭、ついには家屋敷まで盗むようになる」と
- いま咎めなければ、小僧の将来は盗っ人まっしぐら
- 直光は少し考え、それでも芋をくれてやった
- …だけでなく、自分の家臣として小僧を召し抱えると言い出した
直光さま、お優しい!
…少々甘ちゃんな気もするが。
戸惑う家臣の心配をよそに、小僧に「桜丸」という名まで与えた直光。
薄汚れた身なりは綺麗な着物へと変わり、桜丸は畠山の屋敷で信綱や直光と兄弟のように暮らし始めます。
- 4人で遊んでいたある日、畠山の屋敷に将軍が
- みなは「御所さま」と慕う将軍・足利義政にご挨拶へ
- 目の不自由な御所さまは、桜丸をいたく気に入った様子
- それから数年。4人は成人を迎え、大きな転機が訪れた
疫病で大納言家が壊滅!?
…阿古姫だけが、疫病を患わず無事だったそうだ。
その知らせが触れ回った頃、御所さま・義政が畠山の屋敷を訪問。
阿古姫と婚姻した者が大納言家の財産を相続し、管領職に就くよう命じてきたのです。
- 大納言家には莫大な隠し金塊の財産がある…という噂
- その在処を知るのは阿古姫だけらしい
- 畠山の次期管領が相続したとなれば、幕政に援助させられる
- つまりは御所さまの好きに使える財産も同然
- しかし次期管領は信綱の予定。阿古姫は直光の許嫁
これは寝耳に水な超パワハラ(笑)
…おかげで仲の良かった兄弟の絆に亀裂が入ったよ。
幼い頃から跡継ぎとして育ち、どうしても管領になりたい兄・信綱。
愛する阿古姫と生きること、ただそれだけを望む弟・直光。
2人は御所さまの無理難題の解決策として、阿古姫との婚姻は直光が、大納言家の財産と管領職は信綱が相続する案を講じます。
しかし怪しい動きを見せ始めた桜丸によって、全てを失うことになってしまう のです。
全てを捨てた直光=多襄丸
御所さま・義政のひとことで、兄弟仲に不和が生じた畠山家。
このままでは家督も財産も管領職も、弟に持っていかれてしまうと焦った信綱の元に、桜丸がやってきます。
- 桜丸は信綱をそそのかし、阿古姫を力ずくで襲わせた
- さらに桜丸は、その既成事実を直光に報告
- 兄の暴挙を知った直光は、阿古姫を奪い返して一緒に逃亡
- 付き従ったのは老臣・影時と数名の家臣、桜丸のみ
- 山中で一夜を明かすも、影時ら従臣が何者かに惨殺された
- ただひとり、桜丸の姿はそこになく
桜丸は無事なの?
…無事どころか、みなを殺したのは桜丸だからな。
盗っ人根性は簡単には治らない…。
そう呟きながら直光の近臣・影時らを斬り殺した桜丸は、その足で畠山の屋敷へ向かい信綱をも暗殺。
- 直光と阿古姫は、桜丸の裏切りとはつゆ知らず
- ただひたすら、飲まず食わずで山中を歩き進んだ
- 朽ちた大木のあたりまで来たところで、1人の男と遭遇
- 見るからに盗賊風情のその男は、阿古姫を寄越せと言って来た
姫をくれてやるわけなかろうに。
…くれてはやらんが、奪われた。
何があっても阿古を守る。
そう固く誓った直光は、多襄丸と名乗る大柄な男と対決。
しかしあっさりと敗北した上、気絶して縄で締め上げられてしまいます。
- ハッ!と気付くと、阿古姫のお召し物が乱れていた
- せせら笑う多襄丸に憤慨するも、直光は縛られて為す術もなく
- 阿古姫に話しかけても、茫然自失で無反応
- …かと思ったら、彼女がとんでもないことを口走った
あなたの妻になる。だからあの男を殺して。
…なんて言われたら、今度は直光が茫然自失になるよな。
なに……を言っているんだ、阿古。
目の前にいる愛する女性の言動が全く理解できず、信じることすら拒んでいる様子の直光。
そんな直光に同情したのか、多襄丸は慰めの言葉で優しく諭し始めます。
- 女は俺が大事にするから、とっとと忘れちまえ
- おまえも可哀想に…と自分で締め上げた縄まで解いた
- …と、その隙に阿古姫が一人で脱兎の如く逃亡
- 色々とテンパっていた直光は、思わず多襄丸の背中をプスり
- 瀕死の多襄丸は今際の際に「今日からお前が多襄丸だ」と
え。多襄丸って世襲制なの?
…先代を倒し、波切りの剣を手にした者が、新多襄丸となって継承するようだ。
今しがた自分が倒した男から、最期の言葉と剣を託された直光。
「今日からお前が多襄ま…ふじこフジコ」言われても、正直なんのこっちゃな話です。
- ただ、今の直光には阿古の裏切りによる絶望しかない
- 畠山の次男という身分も愛も捨て、この運命に従うことに
- 死んだ多襄丸から剣と毛皮も拝借し山中を彷徨った
- …と、美味しそうな匂いが漂う山小屋を発見
- 腹が減っていた直光=多襄丸は食べ物を頂いた
人様んちで勝手に食うのは盗っ人じゃ…。
…そもそもここは、盗賊のアジトだ。
香ばしく焼けた肉や魚に、無心でがっつく直光=多襄丸。
そこへ小屋の主である盗賊4人組が姿を現し、一触即発の事態となってしまいます。
- 名を名乗れ!と言われた直光は「多襄丸だ」と
- 盗賊曰く「え、あの多襄丸!?こんな品の良いわけがない」
- でも確かに持っている剣は多襄丸の証である波切りの剣
- 大盗賊の手下になれば俺たち名が上がる!と何故か仲良しに
皆さん、なんて気さくな(笑)
…直光改め多襄丸も、請われるまま盗賊の頭目になったよ。
もはや自分は畠山直光ではなく、大盗賊・多襄丸。
諦めにも似た思いで自ら転落の道を選びますが、人生捨てたもんじゃないようで。
道兼・猿・鉄・鷹と名乗る彼らと共に過ごすうち、盗賊も悪くないと思い始めたのです。
- 道兼らは確かに人から盗みもするし殺しもしてきた
- …が、多襄丸が頭目になって以来、殺さず脅して盗む作戦に変更
- ある時たまたま貧しい村人の諍いに遭遇
- 道兼らは仲介しただけでなく、盗んだ酒や食料を分け与えて意気投合
奪うばかりが盗賊じゃないってことだ。
…そう。裏表ない気安い仲間に囲まれて、直光の心も癒されていくんだ。
飲めや歌えや、どんちゃん騒ぎ。
久方ぶりに楽しく穏やかな時間を過ごし、笑顔まで見せた直光ですが、この晩のっぴきならない情報を耳にします。
それは畠山家の長男・信綱が急死し、弟の直光が家督を継いで管領職に就いたという話。
自分に成りすまし、誰かが畠山を乗っ取った…。
居ても立っても居られなくなった直光は、大盗賊・多襄丸の姿のまま馬を駆らせて畠山の屋敷へと急ぎます。
しかし顔を見知った家臣の手で投獄され、直光を語る者と対面することに。
その者とは、かつて自分が家臣に召し抱えた桜丸その人であり、彼の横には妻として阿古姫の姿が。
地位も名誉も財産も、果ては愛する女性をも裏切りで失った直光。
彼は多襄丸として裁きを受けるも、この絶望にはまだ続きがあり… というのが大まかなあらすじになります。
【TAJOMARU】騙し騙される登場人物たち
貧しい者には、貧しさゆえの苦悩あり。
恵まれた者もまた、恵まれているがゆえの苦悩あり。
誰もがみな、欲望の亡者となっている登場人物たちをご紹介いたしましょう。
畠山直光は、代々管領職にある畠山家の次男。
桜丸の裏切りによって、全てを失う主人公です。
聡明で心根も優しく、阿古姫さえいれば何も要らないと思っています。
ただそれは、裏を返せば愛に貪欲。直光もまた、欲望に固執している人物と言えます。
成人後の直光=多襄丸を演じたのは小栗旬氏、幼少期の直光役として北村匠海くんが登場するので、是非ご注目を。
阿古は、直光の許嫁である大納言家の一人娘。
たとえ裏切る形となっても、己を犠牲にしても直光を守ろうとする気概があります。
凛として美しい阿古姫を演じた柴本幸さんは、俳優・柴俊夫氏と女優・真野響子さんの娘さん。
お母様にお顔立ちがよく似ています。
大河ドラマ「風林火山」で由布姫を演じ、その後もドラマ《相棒season11》《Nのために》《コンフィデンスマンJP》など、数多くのドラマに出演。
2019年から拠点をロスに移し、女優・リコーダー奏者として活躍中です。
桜丸は、直光の近臣である青年。
信綱や直光と兄弟のように育ち、剣術の稽古では直光に引けを取らない腕前に。
元々は芋を盗むような賎民、盗っ人根性が抜けきれずに家督をも乗っ取ろうと画策します。
そんな桜丸を演じたのは、初の時代劇で初の悪役をこなした田中圭氏。
自主特訓まで重ねて挑んだ殺陣シーンは、初挑戦とは思えないほど美しい立ち振る舞いです。
畠山信綱は、畠山家の管領職を継ぐ立場にある長男。
弟・直光より劣ることは重々承知、それでも偏屈にならず素直で真面目な人柄です。
家督を継いで官職に就く地位欲を捨てきれず、桜丸の策略にはまって弟を裏切ることに。
影時は、畠山家に長年仕える老臣。
直光と阿古姫の逃亡に同行し、桜丸の手で暗殺されてしまいます。
演じた近藤正臣氏は、昭和の頃から長年活躍する超ベテランな名俳優。
出番は多くありませんが、存在感は抜群です。
足利義政は、御所さまと呼ばれる室町幕府の将軍。
実在する歴史上の人物で、僧形の姿から見るに齢50を過ぎた晩年の頃かと。
銀閣寺を作り文化発展に貢献した人物ですが、今作では幕政と個人の思惑を公私混同している悪役として登場しています。
御所さま役の萩原健一氏の演技は、ちょっとトリハダもんです。
旧多襄丸は、京の都にも名を轟かす天下の大盗賊。
大柄でむさ苦しい見た目に反し、ノリが軽く人情味あふれる御仁です。
討った者が次の多襄丸…という世襲制のようで、直光に名と波切りの剣を託します。
意外といい人なので、背後から不意打ちかけた直光が卑怯に見えてくるかも(笑)
道兼は、4人で徒党を組む盗賊の頭。
多襄丸と組めば盗賊稼業も楽々安心♪…とばかりに、直光=多襄丸を新たな頭目に迎える人物です。
盗賊だけれど性根は腐っておらず、貧しい者や直光の裏事情も汲む賢さがあります。
《闇金ウシジマくん》シリーズでお馴染み、やべきょうすけ氏が演じています。
猿は、道兼率いる盗賊軍団の一員。
場の空気を読んで行動するスマートさがあり、細やかな気遣いの出来る人物です。
一を聞いて十を知る機知に富んだ性格で、直光=多襄丸を見て「上品すぎかっ!」とツッコむユルさも持ち合わせています。
黒髪ロン毛が似合いすぎ、時代劇に違和感なく溶け込んでいる綾野剛氏が演じています。
鉄は、道兼率いる盗賊の一員。
力自慢の荒くれ者、なかなか豪快な性格の人物です。
鷹は、道兼率いる盗賊の一員。
ちょっと出番は少ない&印象に残りにくいんですが、若さと勢いのある青年です。
…と、この他に、畠山家臣・貧しい村の人々などが登場。
時代にやや翻弄され、野心と金と愛の狭間で揺れ動く人間模様を描いた時代劇大作 となっております。
【TAJOMARU】感想まとめ
代々管領職を担う家柄の次男が、画策と裏切りによって盗賊に転落。
欲望に満ちた人の心の醜さと、醜いだけではない良心のカケラも描かれています。
- 室町時代、幕府の要職にある畠山家が舞台
- 家臣に召し抱えた芋泥棒が、お家乗っ取りを画策
- 何もかもを失った次男は、成り行きで大盗賊・多襄丸を継承
- 陥れた家臣への復讐・家督の放棄・愛する女性を取り戻す姿を描いた作品
いちおう原作は芥川龍之介の文学小説ですが、まぁお話が全然違います。
全然違いますが、脚本はよく出来ていてストーリーにブレがないのが良いところ。
衣装もなかなか凝っていて、身分ある者のお召し物は美しく煌びやか。一方で、賎民や盗賊のズタボロな服が本当に小汚い(笑)
着るものひとつで格差の対比が一目でわかる、というビジュアル面も注目ポイントです。
ちょっと勿体ないのが、今作の良さを伝えきれていない予告動画。
原作と違いすぎる前評判と相まって、面白くなさそうに見えちゃうんですよね。
ただ個人的には完成度が高く、スッキリ勧善懲悪を描いた良い時代劇だと思います。
映画【TAJOMARU】は、どん底に堕ちた男の生き様と反骨精神に潔さを感じる作品 でした。
最近めっきり少なくなった時代劇ですが、とっつきやすい映画をピックアップしてお届けしております。
映画【TAJOMARU】を観るならこちら
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