童話ラプンツェルのお話は?本当はコワいグリム童話の初版ストーリー

雑学

グリム童話に収録されているお話のひとつ《ラプンツェル》

童話と言いつつ、元のお話は全くもってお子さま向きではありません。

ということで、REONさんの「本当はエログロいラプンツェル物語」をお届けします。

 

この記事でわかること

  • グリム童話ラプンツェルの初版ストーリー
  • 原型となった童話ペトロシネッラ物語

 

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童話ラプンツェルは改訂されまくったお話

ラプンツェル

グリム童話は1812年に初版が出版され、ヨーロッパ中の伝承民話をなるべく口承形式のまま紡いであるのが特徴的。

…なんですが、これにいろいろイチャモンがついて、かれこれ7回も改訂されました。

どんなイチャモンかというと、こんなイチャモン↓

  • 口承形式だから文章が拙い。っていうか雑
  • 飾り気もないし、面白みもない
  • しかも内容エグくて万人ウケせん

とまぁ、散々な評価で批判されまくり、風景描写や心理描写、分かりやすい会話文を追加。

さらにエグい内容から残酷描写・性描写などの過激な表現をばっさりカット。

そんなこんなで何度も書き換えられ続けたお話として、最も有名なのが《ラプンツェル》です。

どこがそんなにダメ出し喰らったのか。

初版の物語を語ってみました。

 

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童話ラプンツェルの初版はこんなお話

ラプンツェル

むかしむかしあるところに、なかなか子宝に恵まれなかった夫婦がおりました。

長年願った甲斐があったのか、やっと子を授かり、おかみさんがご懐妊。

お家で安静に過ごす中、ふとお隣さんの畑で青々と育った菜っ葉が食べたい衝動に駆られます。

おかみさん
おかみさん

あのみずみずしい菜っ葉、むっちゃ食べたい!今すぐに!

実はおかみさん、悪阻がひどくてあまりいろんな物が食べれないとゆー体質に。

おかげで日に日にやせ細り、顔色は青白く、今にも倒れそうな勢いです。

おかみさん
おかみさん

…っていうか、あれ食べないと死んじゃうかも!

そんな姿を見た旦那さん。愛する妻が心配でなりません。

しかしお隣の美味しそうな菜っ葉畑は、巷で恐れられている魔女の敷地内。

ホイホイお裾分けのお願いに行くなんて、ちょっとどころかかなり無理があります。

旦那さん
旦那さん

このままでは本当にぶっ倒れちゃう…。よし、ちょっくらコソっと頂戴してこよう。

なんと旦那さんは闇夜に紛れて塀を越え、ガッと菜っ葉をひと摑み。

身重の身体の妻のため、晴れて畑泥棒になりました。

旦那さん
旦那さん

あの菜っ葉取ってきたよ。さぁ、お食べ。

早速菜っ葉をサラダに変身させ、ムシャムシャばりばり喰い散らかしたおかみさん。

隣の畑から盗んだ菜っ葉・レタスのような、チシャともラプンツェルとも言われる野菜がすっかりお気に入りに。

おかみさん
おかみさん

あぁ、なんて美味しいの!明日も食べたい…明後日も。

なんなら毎晩。これナシでは夜も眠れない!

…と、この菜っ葉なしでは本当に眠れなくなってしまいます。

1度は盗みに入った魔女畑。

2度3度かっぱらったところで、すでに盗人であることに変わりありません。

ということで、妻もお腹の子も愛おしい旦那さんは、夜な夜な畑に忍び込むことに。

ところがある晩、畑泥棒が魔女にバレてしまいます。

魔女
魔女

だー💢。わざわざ塀を越えてワシの畑の野菜を盗むとは、いい度胸じゃの。

旦那さん
旦那さん

わーー!見つかった!ごめんなさい!!

魔女
魔女

そんな悪さしよって、善いことないぞ?

旦那さん
旦那さん

あ、いや、その…これには深ーーいワケがあるんです(汗)

怖い恐いと悪名高き魔女に遭遇してしまった旦那さん。

ウチのアレがコレでして…

と、かくかくしかじか、必死にアピールしまくります。

魔女
魔女

なんじゃ。そういう事情なら、たんと喰わせておやり。

旦那さん
旦那さん

わ♪ ありがとうござ……。

魔女
魔女

ただし、子供が産まれたらワシに寄越すのが条件じゃ。

旦那さん
旦那さん

………は? 子供を寄越せとな!?

いやいやいや。

いくら魔女でも本気ではあるまい。

そんなことより今、この瞬間。

妻が死んじゃったら生きていけない旦那さんは、魔女の提案を真に受けず、後先考えずに快諾してしまいます。

そうして菜っ葉を毎日食いまくったおかげで、おかみさんは程なくして無事に女の子を出産。

魔女は約束通り、この夫婦から子を奪い「ラプンツェル」と名付けて育てることになりました。

完全引きこもり生活

ラプンツェル

魔女の手で育てられることになったラプンツェルは、それはそれは美しい少女へと成長していきます。

しかし魔女は、そのあまりの美しさを人目に晒すのがとても心配。

そこでラプンツェルが12歳になった頃、敷地内の森の奥に出口も入り口もない塔を建て、彼女を幽閉したのです。

ただしオババさま、魔女とはいえ飛べません。

なのに出入り口ナシの塔を建てるとか、ラプンツェルの父親並みに後先考えておりません。

じゃぁどうやって出入りすんのさ…というと、こんな手段を編み出します。

魔女
魔女

ラプンツェルや。お前の金糸のように美しく長い髪を垂らしておくれ。

生まれてこのかた一度も髪を切ることなく、伸びに伸びたラプンツェルの髪。

その長さはなんと4尺です。

…えぇ、4尺って言われてもピンときませんね。

だいたい12m、4階建のビルの高さに匹敵する長さです。

オババさまは、この長ーーーーーーいラプンツェルの髪をロープ代わりにガッと掴み、引き上げさせていたのです。

あぁ、なんて痛そうな仕組みなんでしょう。

オババさま、梯子くらい用意しろや。

…とはいえ、梯子を伝ってラプンツェルが逃亡を計ったら困ります。

ということで、ラプンツェルにとって髪をロープにするのは当たり前、お外に出られないのも当たり前。

そう教え込まれて世間知らずのまま、完全引きこもり生活を余儀なくされておりました。

ラプンツェル
ラプンツェル

あーー!暇、ひま、ヒマ。暇すぎるー!!

塔での引きこもり生活、はや数年。

ラプンツェルは窓からの景色を眺めるか、歌うことくらいしかすることがありません。

いつものように暇を持て余し、涼やかに歌っていたある日のこと。

たまたまこの国の王子様が、塔の近くを訪れます。

王子様
王子様

なんて綺麗な歌声なんだ。きっと美人に違いない!

…って、あれ?この塔、出入り口ないんかーい!

高い高い塔を見上げ、ひと目歌声の主を拝みたかった王子様。

塔に登れないことを知って一度は帰るものの、気になって仕方がありません。

そこで何日か、塔の周りをストーキングすることに。

すると魔女のオババさまが、塔に出入りしている様子を見かけます。

王子様
王子様

はは〜ん…あれが塔へ入る方法か。オババが居なくなったら真似しよーっと。

あたりが暗くなり、オババが帰ったことを確認した王子様。

ラプンツェルが髪を垂らすよう合言葉を叫び、まんまと塔への侵入に大成功するのです。

知ってしまった蜜の味

ラプンツェル

「ラプンツェルや。お前の髪を垂らしておくれ」

いつもオババさまが出入りするときの合言葉が聞こえたら、ほぼ条件反射的に髪を垂らしてしまうラプンツェル。

まさか王子様を引き上げることになろうとは、ゆめゆめ思っておりません。

ラプンツェル
ラプンツェル

オババさま、また来たの……って、え。なに、 誰だれ、なに(泣)

これまで殿方なる人種を見たことのないラプンツェル。

不意打ち過ぎる王子様の登場にテンパりまくりです。

そんな彼女を安心させようと、王子様は優しく話しかけ、こう囁きます。

王子様
王子様

ぜひ僕と結婚してください。

…おっと、いきなりそう来たか(笑)

王子様は、さっさとプロポーズ大作戦を展開します。

そして、これを聞いたラプンツェル。

ラプンツェル
ラプンツェル

 (…オババさまより若くて綺麗なこの人のほうが、私を可愛がってくれそう)

はてさて、プロポーズがなんなのかよくわかっていないラプンツェル。

それでも心の声に従い『はい』と即答してしまいます。

なんたる打算、なんたる計算高い小娘(笑)

こうして2人は初対面ながらも、結婚を誓いあうことに。

しかしこれだけでは済まないのが男女の仲。

なんとそのままニャホニャホに発展し、ラプンツェルはとんでもない快感を覚えてしまうのです。

ラプンツェル
ラプンツェル

…また明日も来てください、明後日も。なんなら毎晩❤️

大事なことなのでもう一度言いますが、2人はこの日が初対面。

なのにもうニャホりまくり、しかも毎晩これが続くという酒池肉林の愛欲に溺れていきました。

あゝ荒野

ラプンツェル

塔でのつまらない幽閉生活も、王子様の登場でガラリと変わったラプンツェル。

オババさまは日中にしか訪ねて来ないのをいいことに、長い髪で王子様を誘い込み、夜の営みにご満悦です。

ラプンツェル
ラプンツェル

ずっと王子様と一緒に居たいから、毎晩1本ずつ絹糸を持ってきて欲しいの。

王子様
王子様

…絹糸なんて、どうするの?

ラプンツェル
ラプンツェル

それを編んで梯子にするから、ここから私を連れ出して。

王子様
王子様

がってん承知!マイハニー❤️

…いや、王子様、梯子持って来なさいよ。

どうしてどいつもこいつも梯子を用意しないんでしょう。

「梯子」という概念があるなら、実物もあるはずだよね?

というクレームは置いといて、とにかくこうした口実をつけては逢瀬を重ねる2人。

ところがそんな2人の関係も、ラプンツェルの匂わせ発言でオババさまにバレてしまいます。

ラプンツェル
ラプンツェル

なんでオババさまのほうが、あの方を引き上げるより大変なのかしら。

最近お洋服もキツいし、ツラたんなんだけど。

さて、これを聞いてビビっと分かってしまったオババさま。

あの方って誰やねん。

っていうか服キツいってどないやねん。

魔女
魔女

お前ときたら……毎晩オトコを引き込んでたのかい!

しかも身籠ったな、この恩知らずめ!!

まさかの匂わせ自爆で、オババさまの地雷を踏んでしまったラプンツェル。

毎晩ニャホニャホしまくったせいで王子様の子を授かり、お腹が大きくなっていたのです。

そもそもオババさまがラプンツェルを塔に閉じ込めたのは、美しすぎて男どもに狙われる危険があったから。

誰よりも彼女を大切に、過保護に束縛していたのに、まんまと裏切られてしまったのです。

魔女
魔女

もうお前なんぞ、知ったこっちゃない。何処へでもお行き!

と、怒り心頭のオババさま。

ラプンツェルの長く美しかった金髪をバッサリ切り落とし、なんと荒野に捨て置きます。

ラプンツェル
ラプンツェル

いや、マジかー。ここ荒野だしー。

そしてそんな大変な事態になっているとはつゆ知らず。

この晩もノコノコと王子様が塔に現れます。

しかしいつものように垂らされたラプンツェルの長い髪を登ったら…

意外なお方とご対面することに。

魔女
魔女

よう来たの。オマエのかわい子ちゃんならもうおらん。二度と会えんようにしたった。

王子様
王子様

……!? そんなっ。

魔女
魔女

そんなもこんなもあるかい!うちのラプンツェルを…。天罰下っちまえ!

もうラプンツェルに逢えないなんて。

悲嘆に暮れた王子様は、悲しみのあまり塔から身投げすることに。

しかし幸か不幸か一命は取り止めるものの、荊が目にぶっ刺さり失明してしまいます。

ラプンツェルを失い視力を失い、生きる気力も失った王子様。

城へ帰るわけでもなく、ただあてもなくフラフラ彷徨い、数年が経過。

そうしてあるとき、聞き慣れた声を耳にします。

王子様
王子様

その声は……ラプンツェル!

ラプンツェル
ラプンツェル

あぁ、王子様!また逢えるなんて(泣)

いつしか彷徨い歩くうち、王子様はラプンツェルが捨て置かれた荒野に辿り着いていたのです。

あれから男女の双子を出産し、たくましく生きていたラプンツェル。

嬉し涙が王子様の瞼にひと雫落ち、荊でぶっ潰れた王子様の目は再び見えるように…という奇跡が起こります。

変わらぬ愛を確かめ合ったラプンツェルと王子様は、双子ちゃんも連れて城へ帰ることに。

そうしていつまでも幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし。

…あぁ、そうそう。

あの魔女のオババさまはどうなったかって?

そんなことは誰も知ったこっちゃないそうな。

おしまい

 

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元になった童話は『ペトロシネッラ』

さて、エロとグロが混じった童話ラプンツェル。

これじゃぁ…とてもお子さまに読み聞かせなんぞ出来やしません。

どの辺が?この辺が↓

  • まず子宝授かった夫婦が盗みを働くところ
  • そもそもおかみさんが我慢弱い
  • 魔女もオメデタを祝ってやればいいものを、赤児強奪
  • しかも塔に幽閉とか、立派な監禁
  • 王子様もストーキングして侵入してニャホるとか…いいのコレ
  • ラプンツェルも肉欲に目覚めて毎晩て
  • 罰として妊婦さんを荒野に捨て置くなんて、さすが魔女
  • 若い女子を孕ませたから目が潰れる罰とか…グロいでしょ

さぁどうですか。

ザックリ挙げただけで、このエログロさ。

でもこのグリム童話のラプンツェル、グリム兄弟が初めて物語にしたものではないんです。

原案はイタリア民話

ラプンツェルの原案となったのは、《ペトロシネッラ》というお話。

1634年に、ジャンバティスタ・バジーレという詩人の書いたイタリア民話です。

ラプンツェルちゃうやん…というと、ペトロシネッラはパセリを意味するイタリア語。

初めはレタスっぽいラプンツェルとかいう菜っ葉ではなく、パセリっ子のお話でした。

パセリはいわば、ハーブの1種。

中世ヨーロッパ民話では、魔女や妖精がハーブ類を畑で栽培という設定が数多くありました。

なぜなら妊娠して食の好みが変化した妊婦さんが、ご近所のハーブ畑から盗み食いをする事例が多かったから。

これを諌めるために、「盗み喰いは、魔女に赤児を奪われる天罰が下るぞ」という展開に。

そしてなぜパセリだったのかというと、パセリに含まれる成分アピオールが、当時は堕胎薬として使われていたから。

人さまの畑から盗んでまで菜っ葉を喰うやつは、産む資格なし。

こんなニュアンスも込めて、最初は菜っ葉がパセリだったのかと思うと、そりゃ恐ろしい物語ですね。

語り継がれるうちにマイルドに

そんなコワい物語も、手を替え品を替え少しずつ内容が変化していきました。

  • 1634年 ペトロシネッラ (イタリアの詩人ジャンバティスタ・バジーレ)
  • 1698年 ペルシネット (フランスの作家ド・ラ・フォルス)
  • 1790年 ラプンツェル (ドイツ作家フリードリッヒ・シュルツ)
  • 1812年 ラプンツェル(ドイツ文学者グリム兄弟)

…と、こんな感じで国境も越え、ドイツで民話化される際に菜っ葉の種類もレタスに似たラプンツェルに。

それでも野菜を変えたくらいじゃ、エロもグロも大差ありません。

グリム童話に初めて収録されたラプンツェルも、しっかりニャホニャホしまくった性描写や目が潰れるといった過激さが残っていました。

これでは童話に不向きということで、何度も書き換えざるを得なかった…というオチですね。

そうして今では、原型どこいった…というほど夢のある読み物になり、愛される物語になりました。

 

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まとめ

童話としては、完全にお子さまアウトな内容だった《ラプンツェル》

でも大人が初版を読めば、教訓がわんさかあります。

  • 盗っ人に身をやつすと、家族の幸せを失う
  • 辛抱せず、欲の赴くまま生きれば天罰が下る
  • 閉じ込める愛情は、ただの束縛でしかない
  • ストーキングに淫行に投身とか、その後の人生、生き地獄

…ということで、最後は独自に読み解いた教訓もあわせて、童話《ラプンツェル》をお届けしました。

ヨーロッパのコワい童話を知るキッカケになれば、恐悦至極にございます。

 

本当はコワいグリム童話、他にも《いばら姫》や《ヘンゼルとグレーテル》についてもお届けしております。

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